レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン

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第一章 拒絶と旅立ち

第15話 主人公の威厳を取り戻せ!①

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筋肉を乗り越え、低レベル帯に進むロックたち。

迂回したので、もう少しかかりそうだ。


「しかし、今のステータス差があると、レベル上げ難しいな。
 ティナに合わせると、ロックは攻撃が通らないし、接近戦だから危険だ。
 かといってロックに合わせるとティナがほとんどHP削っちまう。
 しばらくはロックが1人で戦うことになるかもな。」

「そうですね。
 ティナには申し訳ないけど…。」

「手伝ってあげたいけど、そうしたら逆に邪魔しちゃうもんね。
 しょうがないわ。」

「邪魔なんかじゃないよ!
 【慈愛の祈り】スキルでHP回復してもらえるし、いてくれるだけで嬉しい!」

「そう?うふふ。
 一緒に戦えるようになるの楽しみにしてるね。」

「仲いいな、お前ら。
 早く目的地に案内して、2人きりにしてやらねえとな。」

「なにいってるんですか!
 そういうんじゃないですよ!」

むっつりロックがテンパりながら、ティナからカイルに向き直る。


その時、視界の端になにかをとらえた。


木陰に身を潜め、こちらに手を向けているトカゲ!


「カイルさん!敵だ!!」


トカゲを指差しながら叫ぶロック。

カイルはトカゲを見た瞬間に指示を出す。


「伏せろ!」


ロックとティナはさっと地面に伏せた。


トカゲは…、なぜか動かない…。


「カイルさん!?
 どうすればいいですか!?」

「…ロック。
 急いであいつからスキル奪え!」


「は、はい!」

すくっと立ち上がり、トカゲに手を向けるロック。


「<スキルスナッチ>!」


『【麻痺針】スキルを奪いました。どのスキルと入れ替えますか?』


「【麻痺針】」?
 えーと、入れ替えは【誘惑】スキル!」


『【誘惑】スキルは完全に消滅しますが、よろしいですか?』


「いいよ!」


『【誘惑】スキルと【麻痺針】スキルを入れ替えました。』


「奪えました!」

「おし。」


そう言って、カイルは一瞬でトカゲとの間を詰め、強烈な一撃をくわらした。

トカゲはうずくまり、悶絶。

追撃で倒された。



「あのトカゲ、なんだったの?
 結局立ってただけのような…?」

「あいつは針トカゲってモンスターだ。
 けっこう珍しいやつだな。

 基本的にずっと物陰に隠れてて、不意打ちしてくるんだ。
 麻痺する細い針を飛ばしてくるんだが、その時しばらく動かなくなるんだよ。
 単体でいるから、こっちがグループだったら大した敵じゃない。

 今回は俺が麻痺したら、2人じゃ勝てなかったろうから、ちょっと焦ったぜ。」

「それがあいつのスキルだったんですね。」

「魔法じゃなさそうだから、スキルだと思ってな。
 どうだった?」

「見てみますね。」



++++++++++++

【麻痺針 ★★】・・10mの範囲内で麻痺の効果がある針を飛ばす。発射前後5秒間ずつは動けない。刺さった部位はしばらく痺れて動かなくなり、頭部に当たると全身が痺れる。魔力が3倍以上ある相手には効果がない。MPを15消費する。

++++++++++++



「説明長いな。
 えーと。」

「10m以内で発動して、全部で10秒間動けないのは致命的ね。」

「うん。
 でも、これは…。」

ロックは思いついたアイデアを2人に話した。

「ほう。
 試してみる価値はありそうだな。」





そして、目的地に到着。


カイルと別れ、【隠密】を使い単体でいる獲物を探し始めた。

成功するかドキドキのロック。


「いた…。」

見つけたのはイモリス。

一旦ティナの元へいき、段取りを決める。


「ティナは気付かれない場所に待機して、麻痺が失敗したら攻撃をお願いね。」


失敗したら、身動き取れないところをボコボコにされてしまう。

成功したら、ロック1人でも十分に倒せる。


「ロック…、気をつけてね。」


(優しいな~。たまにSなティナが出る時あるけど…。)


「うん。
 行ってくるね。

 <隠密>…。」


ロックは隠密を発動し、イモリスに近づく。

10mギリギリの距離をとる。



スキルを使うべきシチュエーション、タイミング、場所の選び方。

不安や恐怖、焦りを抑えて平常心になること。

スキルやレベルによるパワーアップだけでは培えないことがいっぱいある。

たくさんの壁を乗り越えて成長していかなければ、夢はきっと実現できない。



ロックは針を当てやすく、かつダメだった時の対応がすぐできる場所を選んだ。

そして、手のひらをヤモリスに向け、唱えた。


<麻痺針>


…身体が動かない。


これはもちろん想定内。

問題は、【隠密】が持続するかどうかだ。


スキルを発動した時点では、まだ効果が続いているようだ。


(…3、2、1、0!)


手のひらから目に見えないほど細い針が現れ、ヤモリスに向かって飛んでいった。


「…ッ!?」


ヤモリスはリスみたいな頭をしていて、頭部が大きい。

針は頭に刺さり、全身が動かなくなったようだ。


「よしっ!!」


ロックはすぐ飛び出して…


行こうと思ったら、身体が動かなかった!


(発射後も5秒動けなかったんだった…。)


長い5秒間。

これで敵が自由に動いていたらと思うと…、恐ろしい。


(…1、0!)


身体が自由になったと同時にイモリスへ攻撃をしかける。


「やっ!」

ザシュッ!

1撃…

2撃…

3撃目でイモリスは力尽きた。


(動いてないから、ほとんど急所攻撃にできた。
 【隠密】と【麻痺針】のコンボ、いけそうだ!)


「ロック!
 やったわね!!」

「うん!
 1段階目のテストは成功だ!」


問題は、次のテスト。

クリアできるのか。
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