レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン

文字の大きさ
上 下
4 / 283
第一章 拒絶と旅立ち

第4話 窮地からの脱出

しおりを挟む
目が覚めると、そこは知らない天井だった。

周りを見てみると、木でできた質素な家。

「痛っ!」

体を起こそうとしたが、痛みで起き上がれない。

「お~、目が覚めたか。」

白髪のおじいさんが隣の部屋から顔を出した。

「ここは…?」

「フォホホ。気がついてよかったわい。
 ここは名も無い村の、ワシの家じゃ。
 川沿いに倒れてたんで、運んできたんじゃよ。」

おじいさんは優しい笑顔でそう教えてくれた。

「あ、ありがとうございます…。」

「よいよい。丸1日寝込んでたんで心配してたんじゃよ。」

「助かったんだ…。」

「あんなところでなにをしてたんじゃ?
 見たところ、裕福そうな家柄のようじゃが?」

ボロボロではあるが、帝国の首都で何不自由ない暮らしをできる家で育ったロックの服装は、一目で高貴な家柄とわかるものだった。

剣技を習っており、剣も持っていたのだが、崖に落とされる前に両親に取り上げられてしまった。

「実は…。」

ロックはおじいさんに事情を説明した。

両親とスキル覚醒のために森に行き、両親の思惑によって崖の下に落ちてしまったこと。
そして、そこでモンスターに遭遇したがなんとか逃げて気を失ったこと。

おじいさんは神妙な顔つきで、話終わるまでじっと聞いていた。

「親が子供を殺そうとするとは…。なんて愚かなんじゃ…。
 スキルなんて、本当に大事なものに比べたらどうでもいいものじゃというのに。」

ロックもそう思いたいが、両親にとってはなによりスキルが大事だったのだろう…。

「みなしごの僕を引き取って育ててくれていたのですが、スキルが5つあったからだったのかもしれません…。」

「育ての親じゃったのか…。それにしても、信じられんことをしよる…。」

おじいさんは、会ったばかりのロックの事情を聞いて、本気で怒ってくれているように見える。

「何回もダメだと思いました。助けていただいて、本当にありがとうございます。」

「しかし、そんなことがあったのに、しっかりしとる子じゃの…。
 無理はせんでええんじゃよ。」

「両親は僕を大事に育ててはくれましたが、どこか壁のようなものは感じてました。
 もしかしたら、それもあって裏切られたという気持ちが思ったより湧いてこないのかもしれません。
 とはいえ、まさかこんな…。」

気丈に振る舞っていたロックだが、話しているうちに涙が溢れてきた。

「スキルのことも気になるが、まずはゆっくりお休み。
 もう少ししたら回復スキル持ちのカイルが戻ってくる。
 そうしたらその傷を診てもらおう。」

「ありがとうございます…。
 お言葉に甘えてもう少し休ませていただきます。」

ロックはお礼を言って、再び眠りについた。

おじいさんは静かに隣の部屋に戻っていった。

「それにしても、またこのような子が…。
 いったい何をしとるんじゃ…。」

そう、呟きながら…。









「おう!帰ったぞ~!」

遠くの方から声が聞こえて、ロックは目を覚ました。

「今回も大漁だな!」

「これだけあればしばらくは持つな。」

ガヤガヤと話している声がする。

「カイル、疲れてるとこすまんが、こっちにきてくれ。」

「なんだ、ヨムじいさん。急ぎか?
 解体があるんだが。」

「ちと怪我人がおっての。
 すまんが先に治療してやってくれ。」

おじいさんが、ごつい男の人を連れてやってきた。

「ぼうず、待たせたの。」

(この人がカイルさん?回復してくれるっていうから、もっと…)

想像よりかなりたくましい人だった。
どちらかというと、攻撃が得意そうな…。

「はじめまして。ロックといいます。
 お忙しいところすみません…。」

やりとりがうっすらとだが聞こえていたロックが申し訳なさそうにそう言った。

「ガハハハ!怪我人が細かいこと気にすんな!
 ちょっと待っとけよ。」

カイルは豪快に笑ってそう言うと、ロックの体に手をかざした。

「<ミドルヒール>…。」

カイルがそう唱えると、手が淡く光り、体が暖かくなってきた。
それと同時に、痛みが少しずつ治ってきた。

「ふうっ。」

「ありがとうございま…、いっ!」

起き上がってお礼を言おうとしたが、体のあちこちがまだ痛んで起き上がることができなかった。

「おいおい!無理すんな!【ミドルヒール】じゃ骨折までは治せないからな。」

それでも、さっきよりはだいぶ楽になった。

「ありがとうございます。だいぶ痛みがなくなりました。」

「骨折はすぐには治せねえが、治癒を早めることはできる。
 安静にしながらなら、2~3日で治るだろう。
 大人しくしとけよ。」

【ミドルヒール】はたしか、中級回復魔法。

★3のスキルだ。

★3のスキルはスキル全体の大体2割くらい。

そのスキル1つだけでも冒険者としても中堅レベルまでいけるくらいに強力だ。

(こんなにいいスキルを持ってるのに、どうしてこんな山奥に…。)

「じゃあ俺は解体に戻るからな!また明日な!」

「すまんな。よろしく頼んだぞ。」

おじいさんはそう言って慌ただしく出ていくカイルを見送った。

「おじいさん、ありがとうございます。」

「お前さん、ロックという名なんじゃな。
 さっきは名前を聞くのを忘れとったわい。
 わしはヨム。ヨムじいさんと呼んでくれ。」

「わかりました!」

ぐ~~~。

「あ…。」

お腹の音がなってしまったロックは、恥ずかしそうにお腹を押さえた。

「フォホホ。
 ちょうどいい時間じゃから、ご飯にするかの。」

「すみません…。」

「いっぱい食べて早く治すんじゃぞ。」

「はい!食事はご自分で作られるんですか?」

「いや、前にお主と同じように助けた子がおっての。
 その子が作ってくれておる。」



ギィ。

家の扉が静かに開く音がした。

「ちょうど来たの。ティナー!
 坊主の分も頼むぞ~。」

「…はい。わかりました。」

ギリギリ聞こえる大きさの女の子の声で返事が返ってきた。

「ティナさんという女の子も、倒れてたんですか?」

「倒れてはおらんかったが、狩りの時に岩陰に隠れていたのを保護したのじゃ。
 怪我はなかったが、衰弱しておっての。まあ今ではすっかりよくなっておるよ。」

「カイルさんの回復魔法、すごいですもんね。」

中級の回復魔法の使い手がいれば、何かあった時にとても心強いだろう。

「うむ。優秀なスキルで助かっておる。
 ただ、ティナもスキルに問題があってのう…。
 いや、これは聞かんかったことにしてくれ。
 ところで、ロックはどんなスキルなんじゃ?」

スキルのことを思い出すと胸が痛み、話すことが躊躇われたが、ここまで親切にしてもらったヨムじいさんに聞かれたのだから、話すべきだろう。

「僕のスキルは…、」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...