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葵ちゃんとバイクの女性

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二人はゆっくりコーヒー屋さんで寛いでいると時間はあっという間に十七時を回った。柚奈はスマホの時計を見ると、話した。

「辺りは明るいですが、もう五時ですね」
「マジか、この街の明かりのせいで、まだ昼くらいだと思ってたよ」
「では、そろそろ帰りましょうか」
「だな」

 怜と柚奈は席を立つと、ゴミ箱に飲み終えたプラスチックのコップを捨て、一階に降りた。するとその瞬間、怜の耳に耳鳴りのような音が響いた。普通じゃない耳鳴りに怜は何か違和感を感じた。

(今の耳鳴りは何だ!?)
「先輩?」

 怜は立ち止まり、違和感を探ろうとしたその瞬間、どこかで爆発が起き、辺りは激しく揺れた。お店の置物やコップが落下し、ガラスなども次々の割れていった。

「一体なんだ!?」
「ば、爆発です!」
「キャァァ!」

 揺れは収まったものの、辺りはパニック状態になり、人が安全なところを目指して走り出した。近くにいた警察や軍人が迅速に対応し、案内するが、人の流れはそれを逆らい、中々パニックは収まらなかった。
 一方、怜と柚奈は人混みを避け、建物の上にジャンプし、移動した。駅に付いていたコーヒー屋さんの上から、爆発現場を探した。

「柚奈ちゃん、あそこから煙が」
「とりあえず急行しましょう」

 二人は走り、建物の上から上へと飛び移り、爆発した場所を目指した。建物がビルのみになると二人は建物から降り、走った。駅から離れると爆発のせいで人は全くおらず、二人はスムーズに移動できた。

「日本で爆発ってアメリカみたいだな」
「そうでしょうか、今では、よく居るじゃないですか。銃を発砲したり、小型爆弾を仕込んでみたりと、変な人は時代が変わっても消えません」
「もうすぐ爆弾のところだ」
「先輩、隠れてください」

 柚奈は人の気配を察知し、爆弾の場所の近くで、物陰に隠れながら移動した。怜は小声で話した。

「隠れろって誰かいるのか?」
「はい、人の気配を感じます。しかも……少なくとも、人の領域を終えてます」
「それって」
「しっ!」

 柚奈は人差し指を口元で立て、静かにするよう合図した。二人は物陰で隠れていると話し声が聞こえてきた。

「あっちゃ~、あーあ。どんな威力か確かめたけど、これほどだったとはねぇ。マジうける。早く帰ろーと」

 話していた正体は女性だった。女性は金髪ロングで真っ赤な瞳を光らせていた。そしてバッチリ化粧が施されており、肌は真っ白で唇は赤で、ネイルもしてあった。それに加え耳や口、鼻に多数のピヤスが開けてあった。服装は真っ黒なバイクスーツを着用しており、女性から少し離れたところに黒を基調とした近未来的なメタリックなバイクが止めてあった。
 どうやら女性は独り言を話していたのだ。柚奈は立ち上がり、刀を構えた。

「先輩、私があいつの不意をつきます。援護をお願いします」
「お、おう。てか、いつの間に武器化を」

 柚奈は刀に海水を纏わせ、女性に向かって走った。怜も葵に呼びかけた。

「葵ちゃん、武器化いけるか」
「行けるかって、葵は怜の守護霊なんだから自分で葵を使いこなしなよ。まぁ今度、葵にもあま~いフラペチーノご馳走してよね」
「しゃーない、行くぞ」

 怜は葵をマスケット銃に武器化させると柚奈に続き、走った。柚奈は刀を振りかぶり、女性の背後を取った。

(行ける。一気に殺さずに致命傷をおわす)

 柚奈は刀を振り下ろした。しかし、その瞬間、物凄く強い風が柚奈の刀の進行方向を変え、女性を斬ることができなかった。刀は地面のアスファルトにあたり、金属音がした。柚奈は焦り、女性を見ると女性はニコッと笑っていた。その笑顔の奥には闇のようなオーラが見えた。

(まずい、外した!?)

 女性は左足で柚奈の横腹を蹴り飛ばした。柚奈はその勢いで瓦礫にぶつかった。怜はマスケット銃を構え、話した。

「動くな! 動いたら撃つぞ!」

 怜の言葉を聞いた女性は手を叩いて笑い出した。

「えぇマジ!? こんな可愛い女の子を撃つわけ? 今の男って暴力的だね」
「先輩、撃ってください」
「ちっ」

 女性は舌打ちをし、柚奈を睨んだ。怜は柚奈の指示に従い、銃を発砲した。銃弾は真っ直ぐ、女性の方に飛んだが、銃弾は女性の目の前で方向を変え、柚奈の方に飛んだ。怜は焦り、叫んだ。

「柚奈ちゃん!」

 これを読んでいたのか柚奈は刀で銃弾を跳ね返した。それを見た女性は口笛を吹き、賞賛した。

「ふーん、あの一回で私の能力を見切ったわけ? でも、私も褒めてね一回で貴方の守護霊が分かったんだから、神野ちゃん」
「なっ!? ゆ、柚奈ちゃんの名前を」
「先輩、珍しい話では無いです。ここの守護霊軍隊は十二の守護神グループで分けられています。これはこの界隈を知っている人達は有名です」
「そうよね、海水って言ったら神野ちゃんだもんね。一度、戦ってみたかったけどこんなお嬢ちゃんとは知らなかった。とりま、殺して良いっしょ」

 女性はバイクから黒を基調としメタリックな刀を取り出すと、柚奈に向かって走り出した。
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