上 下
145 / 153

葵ちゃんと買い物

しおりを挟む
 数分後、柚奈が頬を叩き話した。

「よし、落ち込んでいても仕方ないです。バスを降りてから道が悪いからこんな時間が掛かるんです。私たちには能力があります。使って一瞬で行きましょう」
「んで? 誰の能力で行くんだよ」
「俺の能力は無理そう。柚奈ちゃんは一回使ったら次に代償が来るから無理、麦ちゃんは?」
「すす、すみません。私は自分強化型なので」
「てことは……」

 怜、柚奈、麦はじっと旭の顔を見た。旭は汗を垂らし、腕を組んだ。

「だーっ。仕方ないな。いいよ分かったよ! 私がやるよ」
「さすがです旭ちゃん」
「旭さんさすがです」
「よっ! 我らのエース」
「煽てても何もでねぇよ。さっさと行く準備すんぞ」
「では、ここからは歩きで帰りましょう」

 四人は本部を後にすると徒歩で中央区の駅を目指した。帰り道、柚奈が話した。

「皆さんはこれから何をするんですか?」
「私は寝るー」
「わわ、私は小道具の整理を」
「俺もこれといったものはないな」
「そうなんですね」

 午後二時を回り、四人は駅に着いた。すると柚奈が怜を止めた。

「先輩、ちょっとショッピングに付き合ってくれません?」
「あ、あぁまぁべ、別にいいよ」

 怜は柚奈と二人きりで買い物だと思うとデートというワードが頭から離れず恥ずかしがっていた。

「すみません、私と先輩は寄るところがあるのでお二人は先に」
「お、おう分かった」
「わ、分かりました」
(ちっ、柚奈め。怜を独り占めしやがって。まぁいい、私も今度、怜に何か付き合ってもらおうっと)

 旭は少し嫉妬したが、手を振り、駅に向かった。柚奈と怜は駅の階段を登り、駅の上にある大きなショッピングモールに入った。

「ところで柚奈ちゃん、何を買うの?」
「ナイフです」
「そ、それは人を殺める様なやつでは……」
「嘘です。ただのお買い物です。服とかアクセサリーとか。任務に行く前に気分転換したいなと思いまして」

 柚奈はニコッと笑い、買い物の意図を説明した。怜はその柚奈の子供っぽい笑顔に顔を赤くした。

「そ、そうなんだ。確かに、俺も任務の事ばっかり考えてたからなぁ」
「もうすぐ夏ですし、水着とかいいですね」
(み、水着!?)

 そう水着とは女性のボディラインがはっきりと出る衣服。軍に所属していて怜は夏イベントを忘れていたのだ。怜は柚奈の水着姿を想像し、鼻血が出そうだった。

「先輩! 変な事考えないでくださいね。顔、赤いです」
「は!? そ、そんな考えてないよ」

 柚奈は怜の顔を見かねてツッコミを入れた。二人は歩き、エスカレーターに乗ると水着を売っているお店に着いた。そこは女性物しか置いてなかった。

「なんだ女かぁ、俺は外で待ってるから選んできていいよ」
「せ、先輩も選んでください」
「へ? お、俺が!?」
「あんまり私も詳しくないので」
(言うて俺も詳しくないし、夏とか思い出ないし、どうしよう! こう言う場合って断っちゃダメなつ? まぁ選ぶだけだし、決めるのは本人だからいいか)

 怜は了承し、二人は中へ入っていった。中には女性物の色んな種類の水着があり、露出度が高いものから子供用の物もあった。怜は手探りで柚奈に合いそうなものを探した。

(うーん、柚奈ちゃんだろ? 露出度高くても旭ちゃんじゃないし、逆効果で本人を傷つけかねない。危ない橋を渡るのやめて安定のスポーティな水着もかっこいいな。でも柚奈ちゃんぽくないな。これは麦ちゃんに合いそうだな)

 怜の中では柚奈に合わせる水着選びで葛藤が起こっていた。すると怜の背中を柚奈が叩き話した。

「せ、先輩。これはどうでしょうか?」
「うん? はっ!」

 柚奈が持っている水着は真っ赤なビキニだった。怜の中ではその水着の色同様の赤信号が点滅した。

(こ、これは止めなけらば! なんか分かんないけど、俺の中の赤信号が叫んでいる。止めろと)

 柚奈は顔を赤くし、怜から目を逸らしながら話した。

「せ、先輩。し、試着した方が」
「いやいや、柚奈ちゃん! 俺はこっちの方が似やってると思うぜ」

 怜は咄嗟に近くにあった水着を取り、柚奈の目の前に出した。その水着は水色を基調としており、スクール水着の真ん中がないバージョンで、下に少し長めの白のスカートが付いていた。咄嗟にしては案外良い水着を出したなと怜はホッとした。
 その水着を見た柚奈は目を輝かせて受け取った。

「先輩が選んでくれた水着、とっても良いです。今から試着してきます」
「お、おう」

 柚奈は嬉しそうに水着を抱きしめ、試着室に向かった。怜も試着室の前で待った。
 数分後柚奈が試着室から顔だけ出し、話した。

「い、一応、着替え終わりました」
「お、じゃ見せてくれよ」

 柚奈は顔を赤くしながら試着室を開けた。その水着は柚奈の体とバッチリ合っており、胸の寂しさも感じさせない、とても良い水着だった。怜は笑顔で答えた。

「柚奈ちゃん、とっても似やってるよ」

 そう怜に言われた柚奈は恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にさせ、試着室を締める前に一言話した。

「変態」
(えぇ!? まさかの変態!? 俺、まずい事言ったかなぁ。顔真っ赤だったし、でも、無事に普通の水着を選んでくれて良かった)

 怜は水着選びで一安心したので合った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...