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葵ちゃんと男女差別に怜は怒る

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 柚奈が葵を隠すよう怜に話すと、怜は葵を自分の中に隠した。柚奈は眉間にしわを寄せ、何かを考えていた。その表情に怜は気になり、話しかけた。

「なぁ柚奈ちゃん、一体何を考えているんだ?」
「場所を変えましょう」
「お、おう」

 四人は人通りの少ない路地に入っていった。すると柚奈は腕を組み、息をついた。

「柚奈ちゃん、何を見たんだ?」
「そうですね。推測……いえ、確定でしょう。このエリアに私達の組織以外の守護霊使い、あるいわ悪霊使いがいます」
「!?」

 怜と旭は驚き、息を飲んだ。麦は路地で盗人が柚奈に攻撃をしている姿が見えたので、知っていた。

「おい、柚奈。それは本当なんだろうな。奴は何を使った」
「あいつは守護霊の能力なのか分かりませんが、一枚の羽を私に投げてきました。その羽が一瞬にして複数の矢と変わり、襲ってきました。幸い、麦ちゃんが盗人を追い込んでくれたので助かりました」
「あああ、ありがとうございます」
「何にせよ、これは連絡した方が良さそうだな」

 怜は柚奈達の会話についていくことができず、ただ立ち尽くしていた。そもそも怜は組織以外の人たちが霊の能力を使っても問題ないだろうと思っていた。
 この西暦三千年の世界では、霊の存在が理論的に確定された。しかし、その情報は一般には知られておらず、極秘なのだ。ある日能力に目覚めたならば、数日のうちに軍からの強制的な組織加入が求められる。ちなみに能力が目覚めやすいのは女子の割合が八割を占めている。
 怜は、この情報を知らないし、基本的なことすべてを忘れているので、存在感を消すことしかできないのであった。そんな怜に麦が話しかけた。

「あ、あの。冬風さんは何か分かりますか?」
「はい? あぁ、あいつのことね! そうだな……ごめん。みんな俺に分かりやすく説明してくれ」
「あわわ、私こそ記憶が無いのに、意見を求めてす、すみません」
「麦ちゃんが謝ることないよ。それに怜でいいぜ」
「はぁ、先輩。こういう時面倒なんですよね」
「面倒とは何だ! 柚奈ちゃん」
「お腹減った~柚奈早く飯!」
「はい、行きましょう」

 仲間外れにされた怜はそのまま、会話の置き去りにし、四人はお腹を満たしに店を探した。

「皆さんカレーはどうですか?」
「どこでもいい、早く行こ柚奈」
「俺もここで大丈夫だぜ」
「わ、私も」

 四人はぞろぞろとカレー屋さんに入っていった。店内は眩しく電気が光っており、提灯がぶら下がっていた。まるで中華のお店のようだった。

(何だここ!? 中華料理屋じゃあるまいし)

 怜は店の内装にツッコミを入れながら座席に座った。座席に座るなり、女子達はスマホを触り、メニューを一切見なかった。見兼ねた怜は驚き、話した。

「はぁお前ら嘘だろ!? 何でメニュー見て、食事を決めないんだ」
「何熱くなってんだよ。私なら決まってるぞ?」
「私もです」
「わわ、私もです」
「あ。す、すまない」

 怜は落ち着きとともに少し顔を赤くしながらメニューを開いた。するとメニューにはいろんな種類のカレーやセットメニューがあった。しかし、怜を驚かせる光景が広がっていた。

「はぁ! 単品のカレーが三千って値段設定バグってるだろ!?」
「先輩静かにしてください。周りのお客さんに迷惑です」
「はぁ!? だってカレーってこんな値段する? みんな何食べるんだよ」
「早くしろ。みんなレディースセットに決まってるだろ」
「レ、レディースだと!?」

 怜はメニューをめくっていき、最後のページにレディースセットと書かれたメニューがあり、値段が二千円と表示されていた。カレーに味噌汁とお新香が付くらしい。怜は辛うじてこれならいいと思い、店員を呼んだ。
 店員の女性が伝票を持ち、怜達の卓にやってきた。

「ご注文をどうぞ」
「私達三人はレディースセットで」
「あ、俺もそれで」

 怜が話した瞬間、店員と女子達はドン引きした。

「お、お客様? レディースセットは女性の方限定でして……」
「はぁ!? そんなの男性差別じゃんか! 酷いぞ」
「おい、怜! いい加減にしろ。お前は違うやつ頼めよ」
「すみません。この方には鬼カレーをお願いします」
「かしこまりました」

 店員は苦笑いをしながら怜達の前から離れていった。怜は怒りが収まらず、足を貧乏揺すりしていた。

「先輩、鬱陶しいです。やめてください」
「これが怒らないでいられるか。差別だぞ差別」
「どこの国の風習が先輩の頭の中に入ったかは知りませんが、この国は男性がお金を多く払って当然なんです。それは差別だという声は聞いてきましたが、男性の資金力はその人の力を表しているんです。この国はそういう国なんです。今の男性はそんなこと言う人はいませんよ」
「そ、そうなのか。いずれ俺がこの国を変える」
「なぁ怜、しかも男性と女性で料金が違うんだよ」
「はぁ!? 俺この店でる」
「先輩! 諦めてください。仕方ないです」
「男性料金カレー四千とか無理だからー!」

 その後怜は鬼カレーという激辛カレーを涙を零しながら味わったのであった。
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