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葵ちゃんと盗人確保

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 旭は怜を引っ張り、財布を盗まれたお婆ちゃんに声をかけた。

「あのー、財布盗まれてますよ。今、私たちの仲間が追いかけているので、あの電柱の下で待っていてください」
「あら! 本当だわ。ありがとうね、軍人さん」

 旭はお婆ちゃんを目印に電柱の下へ案内すると怜を引っ張り、走り出した。

「おいおい、旭ちゃん。引っ張られると走りずらいよ」
「あ、すまん。じゃ、置いてかれるなよ!」

 すると旭は怜の手を離した瞬間、目にも止まらぬ速さで、大勢の人を避けながら走った。怜もなんとか旭を見失わないように走った。そして路地の入り口に辿り着いた。旭は真剣な眼差しで路地を見ていた。旭に対し、怜は息をあげながらやっと追いついた。

「あ、旭ちゃん。早いよ」
「黙れ。もうすぐで来る」
「はぁ?」
「あいつのことだったらもうすぐここに追い込んでくれるんだよ」

 旭は柚奈を信じ、別の路地裏の入り口で待った。
 一方柚奈と麦はすぐに後ろを追うと、さすがの盗人も取った後も周りを見ていたので、気づき、走り出した。

「麦ちゃんは下から、私は上から追いかけます」
「はい!」

 柚奈が麦に指示を出すと、部屋で会ったおどおどした感じとは真逆で、真剣な眼差しで返事をし、走った。柚奈は上に飛び、建物の壁から壁を足で蹴り、盗人を追いかけた。
 盗人は後ろを見ながら汗を垂らし、心の中で愚痴った。

(何だよ! こういう時に軍人が来やがった。だが、追いかけてきたのは一人のお嬢ちゃん。ワンチャン、やるか? いやいやダメだ。兄貴に言われたじゃないか! 焦らず安定を取れって)

 盗人は路地をうまい具合に利用し、ゴミや瓦礫などを倒しながら走った。しかし、首席卒業生である麦はいとも簡単に避けながら盗人を追いかけた。

(この人、路地の道を正確に覚えている。ここらへんを拠点にしているか、常習犯。許せません。ですが、この先の左に追い込めば旭さんが待機しているとのこと。どうするのでしょうか柚奈さん)

 柚奈は上から壁をジャンプし、余裕そうな表情で盗人を見ていた。

(楽勝ですね。この先で私が右の路地に飛び降りれば、王手といったところでしょうか)

 そのまま柚奈と麦は追いかけ、いよいよ二手に分かれる路地に入ろうとしていた。柚奈は右の路地に先回りし、壁から飛び降り、犯人を待った。すると予定通り犯人が柚奈に向かってきた。しかし、犯人は予想外のことに白い羽を投げてきた。

「どうなっても知らねぇぞ! 喰らえ!」
「の、能力者!?」

 白い羽は天使のように神々しく輝き、投げられた瞬間、羽は複数の弓になり柚奈めがけ飛んできた。柚奈は咄嗟に上に飛んで避けた。柚奈に怪我は無かったものの、盗人に右側の路地へ入られてしまった。

「逃さない!」

 しかし、柚奈の下を通ったのはもう一人いた。麦だった。麦は部屋で出した時と同じ槍を出し、盗人の倍の速さで追いかけた。
 数秒のうちに盗人の前に来ると盗人は驚き、来た道を逆走した。上にいる柚奈はわざと下に降りず、盗人を行かせた。麦はその行動に納得できず、話しかけた。

「柚奈さん、どうして逃がしたんですか!?」
「大丈夫ですよ。あそこには、旭ちゃんがいるので……って、麦ちゃんなんですか? その姿」
「あぁこれは」

 麦は盗人をおいかける時に能力を使っていたのだ。その能力は動物型で、麦の頭には水色の猫耳、尻尾が生えていた。麦は能力を消すと二人は盗人が向かった方へ行った。
 そして旭は耳で誰かの足音を感じ取った。

(誰か来る。走っている。息も荒い、これはビンゴだ)

 旭はニヤリと笑い、蹴りの態勢に入った。その姿に怜は今から何が起こるのかとドキドキしていた。そして盗人が丁度、旭の蹴りの範囲に入ると、旭は思いっきり盗人に蹴りをかまし、盗人を気絶させた。

「よっしゃ! 当たりだ」
「す、すげぇ」

 旭は盗人が持っていた財布を取ると柚奈と麦も到着した。麦は盗人が気絶しているのを見て驚いた。

「すすす、すごいです」
「だろー、まぁ慣れたもんだぜ」
「では、早く持ち主に返してあげましょう。私は警察を呼んでここで待ちます」

 旭と麦、怜は財布を持ってさっきのお婆ちゃんの元へ届けた。

「あら! あなた達ありがとう。本当に感謝だわ。な、何かお礼をしないと」
「いいよいいよ。これが私達の仕事だからな!」
「あら! さすが軍人さんね。これからも応援してるわよ」

 お婆ちゃんと分かれるとそこに柚奈が来て話した。

「こちらも警察に引き渡せました。それでは、早くご飯に行きましょう」
「そうだなぁ。俺も腹ペコだよ」
「葵も腹ペコー」
「おいいつの間に出てきてんだ! 隠れろ!」
「まぁいいんじゃね? こんなところで守護霊に気づく奴はいないっしょ」
「いえ、後で話しますが、葵ちゃんは隠れていた方が良さそうです」
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