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葵ちゃんと時雨の揶揄い癖

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 食事を終えた柚奈は箸を置き、時雨に翔子とレオのことについて尋ねた。

「時雨さん。師匠とレオさんの状況はどうでしょうか?」
「うん。翔子ちゃんは死ぬ間際に自分を羽に封印してくれてたから命には別状は無いなの~。でも、男の子の方は驚いたの」
「どうしてでしょうか」

 時雨の言葉に柚奈は焦り、息を飲んだ。しかし、怜はまだレオのことを許しておらず、どうでもいいと思っていた。

(はぁ、レオのことか。あいつとは一旦共闘したが、やっぱりあいつの性格は嫌いだし、もう顔だって合わせたくないくらいだ。ん? 待てよ、男の子。時雨さんはレオのことを知らなかった。つまり、俺らのチームの一員じゃない。それじゃ、あいつは目を覚ました時どうなるんだ!?)

 怜は時雨の話し方からレオが知っている人ではないと知り、レオが施術後どうなるか想像がつかなかった。もちろんその場で聞いたら早いが、怜にはそんな勇気はなかった。
 そして時雨が話を続けた。

「あの子の心臓は何らかの力によって保たれてるなの。普通だったらなくなってるはずなのに、そのおかげで息をしてないけど、命を保ってるなの」
「そ、それは助かる状態なのでしょうか?」
「時雨の施術を受けたから後、数日で目を覚ますかもなのー」
「よ、よかった」
「それじゃ、あいつと師匠が目覚めたら見舞いにも行くか!」

 深刻そうな話だったが、二人の無事を聞くことができ、安心する柚奈だった。そして旭は箸を握りしめ、喜んでいた。
 夕食が終わるとお盆を持って三人は外に出た。怜も追うようについていった。すると三人は食堂室の外にある巨大な配膳台に置いた。配膳台は十以上の段になっておりみんな食堂室以外で食べる人たちはここに置きにくるルールらしい。怜も三人に続き、置いた。
 すると葵がお腹を鳴らして出てきた。

「怜~、お腹すいた」
「そっか、船に乗ってから葵ちゃん何も食べてなかったよな。てか、二人の守護霊は何も食べてないけど大丈夫なのか?」

 柚奈と旭は顔を見合わせて不思議そうな顔で話した。

「いや、先輩。普通、守護霊は主人の霊力を吸い取ったり、睡眠でお腹いっぱいにするんですよ? もちろん、食べ物を与えても霊力は回復しますが」
「はぁ!? だって柚奈ちゃんたちあの暮らしでは普通に食べさせてたじゃん。旭ちゃんも」
「はぁ? 私、そんな朝顔に食べ物与えてないぞ?」
「豊ちゃんもそこまで食べていませんけど、葵ちゃんは珍しいですね。食べ物で霊力を回復したがるのは」
「だって怜の霊力、不味いんだもん」
「なんだとー!」

 葵にまずいと言われ、なんとなくショックを受ける怜であった。四人は部屋に戻るが、葵のお腹は満たされておらず、ずっとお腹を鳴らしては、怜に文句を言っていた。

「お腹すいたお腹すいたお腹すいた!」
「うるさいな! あんな質素な生活なんだぞ! この船にお菓子なんかある訳ないだろ。我慢して寝るか俺の霊力を食え!」
「やだやだやだ」

 柚奈と旭は二人の会話を無視し、テレビを見ていた。

「柚奈~そろそろ風呂行かない?」
「そうですね。行きましょうか」

 二人は怜を置いて大浴場に向かった。取り残された怜は葵と喧嘩をしているのであった。柚奈と旭がお風呂にいって数分後、部屋のインターホンが鳴った。

(あれ? 誰だろう。柚奈ちゃんと旭ちゃんは今、お風呂だし、一体何の用だ?)

 怜は疑問に思いながらドアを開けるとそこにはキャンディーを持った時雨がいた。

「葵ちゃんキャンディーなの~」
「やった~ありがとうー」

 葵は飛んで喜び、すぐに時雨が持っていたキャンディーを受け取ると食べ始めた。時雨は部屋に柚奈と旭がいないことを確認すると怜に近寄り、ドアを閉めた。

「ねぇ冬風隊員。二人はどこにいるなの?」
「お、お風呂です。てか、時雨さん近いです。何のようなんですか?」

 怜は時雨が近づくと後ろに下がり、両手の平を時雨に向けた。時雨はニコッと笑い、怜に近づいた。

「えぇ、用がないときちゃダメなの~?」
「はぁ? だ、ダメっていうか……時雨さんも忙しいと思いますし。仕事の邪魔しちゃうなぁとか」

 怜が言い訳の限界がきたその時、部屋のドアが開き、ジャージ姿の柚奈と旭が風呂から上がり、タオルで髪を拭きながら戻ってきた。柚奈は時雨を見ると、眉間にしわを寄せ、近づいた。

「どうして時雨さんがここにいるのでしょうか! 早く自分の部屋に戻ってください」
「えぇだって、冬風隊員に呼び出されたからなのー」

 その言葉を聞き、柚奈はさらに怖い表情になり、怜に近づいた。

「先輩、どういうことですか」
「はぁ!? いやいや、飴持って時雨さんが来たんだよ。きっと葵ちゃんがお腹すいたーって言ったから気を使ってくれたんだよ。てか、俺、時雨さんの部屋の番号知らないし」
「うーん、そうですね。時雨さんの性格上、揶揄われてますね」

 ふと、二人は時雨の方を向くと、もうそこには時雨の姿はなかった。後ろで旭は牛乳を飲んで「プハー」と言っているのであった。
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