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葵ちゃんとオブリドの死なない理由

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 旭を追う炎はドラゴンの様な形に変わり、口を大きく開け、旭に襲いかかってきた。炎に弱い朝顔を使う旭にとっては炎は天敵以外何者でもない。そのまま旭は炎が直撃し、屋上から落ちた。しかし、幸いなことに張り巡らせてあった朝顔の蔓のおかげで、落下は防げた。ふと下を見るとそこには怜が柚奈に回復を施している最中だった。

(まずい、このままじゃ奴に怜と柚奈の場所がバレちまう。こうなったら大火傷を負った右腕なんてもう知らない。私は私がやりたい様にする)

 旭は大火傷を負った右腕に朝顔の蔓を巻きつけ、上に上がった。
 上に上がるとオブリドは愛刀を槍の様に投げる準備をしていた。

「旭ちゃん。来るよ!」
(まさかあいつ登って来る私をあれで狙うつもりか!? いいだろうそれならこっちも全力を出して挑むとするか)

 オブリドは登ってジャンプした旭を狙い愛刀を旭の心臓を狙い投げた。その瞬間、旭はニヤリと笑い、自分の頬を両手で叩いた。

「よっしゃ行くぞ朝顔!」
「はい!」
「『一体化』!」
「ちっ、どいつもこいつも私が記憶を奪ったはずなのに『一体化』しやがって」

 旭の体は周りの朝顔の蔓が急激に伸び、旭を包んだ。そして刀は朝顔の蔓に跳ね返された。蔓は見る見るうちに朝顔の蕾に変わった。蕾の色は朝顔とは思えない青や赤、白、ピンク、紫の五色があった。蕾が開くとそこからは旭が姿を現した。
 旭の姿は朝顔の紫を基調とした上は着物で下は紫色を基調としたミニスカートに変わっていた。帯の部分は朝顔の蔓になっており、耳飾りには赤色の朝顔があった。足は素足になっており、右足にだけ朝顔の蔓が纏っていた。

「お前にはデバフがかかっているんだろう。なら、私一人で十分そうだな」
「調子に乗るな。たかが『一体化』できたくらいではしゃぐな」
「それじゃ行くぜ朝顔!」
「はい!」

 朝顔の生き生きとした返事とともに旭は走り出し、両手で指揮者の様に合図をした。すると地面から大量の蔓が貫通し、オブリドに巻きつく様に生えてきた。
 オブリドは炎を纏った刀を振り、周りの朝顔の蔓を燃やしていった。しかし、旭は霊力を地面に送らなくとも合図をすれば、強制的に朝顔の蔓は地面から生えてきた。

(燃やしても燃やしてもこれじゃキリがない。これがあいつの『一体化』の力というものか)

 オブリドが朝顔の蔓を相手にしてる間に旭はレオに蔓を巻き、流血を止めた。息を確かめるともうレオは息をしていなかった。旭は涙を堪え、歯を食いしばり、レオを蔓を使って下に下ろした。

「レオ、お前の願いは私が叶える。覚悟しろ! 『品種改良ひんしゅかいりょう花言葉はなことば超集中あかむらさき』『品種改良ひんしゅかいりょう花言葉はなことば次元を超えた力くれない』『花言葉はなことば短い愛あお』」
(一気に三つの花言葉だと!? 面白い、どこにそんな霊力が残っているんだ)

 旭の思考にはオブリドの命の火を消す手段が立てた。そして朝顔の蔓を勢いよく、オブリドの周りから大量の蔓を生成させた。朝顔は青色に咲き誇り蔓を伸ばしていった。
 オブリドは何十本も束なって来る蔓に対し、始めと同じ様に炎で焼き払おうとした。しかし、蔓は炎の中から貫通し、オブリドに向かってきた。

(この蔓!? 炎を克服したとでも言うのか)
「それだけじゃないぜ! こいつらは『花言葉・短い愛』のお陰で霊力の消費がゼロになり、無限に生えてお前を捕まえようとする!」

 オブリドは両刀で次々に蔓を斬っていったが、等々足に蔓が巻きついた。そして次々にオブリドの自由を奪っていった。最終的にオブリドは両腕と両足を縛られ、動けなくなった。
 それを見た旭は蔓を使って空高く飛び、右足を振り上げた。

「これで終わりだ! 『切札・樹林の一撃』」

 旭の右足に纏っていた蔓に光が集まり、オブリドの顔を目掛けて足を振り下ろした。旭の右足はオブリドの頭部に直撃し、オブリドはうつ伏せに倒れた。それと同時に刀は煤となって消えた。
 すぐに旭はオブリドの首を触り、生死を調べた。

「や、やったか? 脈なし、息なし。霊力も感じられない……か、勝ったのか!?」

 旭はゆっくり手を離すといきなり誰かに手を握られた。そうそれはオブリドの手だった。

「嘘だろ!? 脈なしに霊力の流れもなかったぞ! 何なんだよお前は!」
「旭ちゃん! 刀!」
「え!?」

 旭が動揺している隙にオブリドは愛刀を生成し、旭の腹部に刺した。旭は口から血を吐き、刀を抜こうとした。
 オブリドは怠そうな顔で立ち上がり話した。

「全く痛いなぁ。この頭を治すのに二年もかかったよ」
「ゔぅ、ぶはっ! に、二年がどうした」
「あぁだからこの頭だって。私はいつも死ぬとこうやって一秒と言う単位の中の別世界で一人ぼっちで自分の頭を治してたんだよ。二年も一人って孤独だよ? あ! つい話しちゃったよ。だって話し相手がいなかったから、こうやって話せるのは久々でね。じゃね。さようなら」
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