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葵ちゃんと怜の一撃

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 オブリドは刀を構えて、怜の方に飛んだ。

「怜、今だ! 撃てるよ」
「オーケー葵ちゃん」

 怜はマスケット銃の引き金を引いた。銃声音とともにオブリドに銃弾がまっすぐ飛んできた。銃弾の速さなど高が知れているオブリドは容易く刀で払おうとしたその時、刀が氷の結晶のように割れ、バラバラになって消えていった。オブリドは驚き、すぐに鎌を出した。

(なぜ私の刀が、あいつなんかの銃弾で、しかも足が重い!?)

 オブリドは視線を鎌に移すと鎌の横に何かが見えた。そう武器のゲージだ。ゲージがゼロになると破壊される仕組みだ。鎌のゲージはマックスの緑色だった。そしてオブリドはもう一つ足に違和感を持っていた。
 オブリドは自分の体力ゲージを見るとその横に雪の結晶マークがついていた。また足を見ると足は凍っていた。

(ちっ、凍結ってことか。厄介だな、早くこいつを仕留めるか)

 オブリドは鎌を振りかぶり、怜に近づくと首を狙って鎌で斬りかかった。
 怜は慌てて空中の足場からオブリドから距離を取るようにジャンプし、降りた。
 オブリドの鎌は空中に設置してある足場を斬り、消し去った。

「ピンチだからって逃げるなよ~。鬼ごっこは好きだけど、早く終わらせちゃうタイプだからさ、無駄な足掻きはやめな? よし、武器を変えよう」
「逃げているように見えるならお前はまだまだだな。武器を変えようと関係ないぜ」
「ふん、減らず口を叩いて。来い私の愛刀『妖刀稲荷ようとういなり』」

 オブリドの手元には金色に輝く刀が生まれた。金色の鞘を抜くと刀は薄い桃色に輝いた。そして鞘を投げ捨てると、刀で自分の両足の氷を斬った。

「あいつ自分の足ごと!」
「ふん、私の愛刀は主人を分かっている。主人ごと斬る刀など、信じられない。この子は私と一心同体みたいな物だからね」

 そう話すとオブリドは足に纏わり付いていた氷を斬った。オブリドは氷を斬ると狐火を二つ出し、怜に放ち、走り出した。
 怜は迫り来る狐火を狙撃しようと引き金を引き、狐火を狙った。怜の撃った銃弾は狐火に直撃すると思いきや貫通し、外れた。

「な、何!? 銃弾が」
「怜、危ない! 来てるよ」

 狐火に夢中になっていた怜だが、オブリドの尋常じゃない速さで、怜の目の前に刀を構えて急接近した。怜は慌ててマスケット銃で刀に応戦しようと防御するが容易くマスケット銃は斬られてしまった。

「あぁ! 俺の銃が」
「怜、早く避けて!」

 怜はマスケット銃を盾にし、なんとかオブリドの刀を避けることができたが、その次に二つの狐火が怜を襲った。
 狐火は容赦無く怜に向かってきた。
 オブリドの刀を避けた後なので怜は狐火を避けることができず、直撃してしまった。

「あっつ……」

 怜は狐火を受けた勢いで、屋上の隅まで吹き飛ばされた。怜はギリギリ屋上に設置してあった鉄格子で落ちずに済んだ。怜はふと自分の体力ゲージを見るとマックスの緑から半分以上削られ、黄色状態だった。怜は病み上がりに加え、傷だらけの体を無理やり起こし、立ち上がった。
 対するオブリドは狐火をさっきの倍以上、数十個くらいを放出した。

「クソ、次から次へと」

 怜は、狭い屋上の建物や空中足場を作り出し、避けた。しかし、武器を生成する霊力が少なく、怜は武器を生成しなかった。しかし、怜は武器を生成しない代わりに足場や地面に霊力を流していった。
 オブリドは次々に狐火を放ちながら怜に向かって走った。
 そしてオブリドが怜の仕掛けた地面に立つと、足元に赤い魔法陣が出現した。その瞬間、オブリドの周りと頭上を赤いレーザーで囲まれた。
 その隙に怜は柚奈たちに近づいた。怜はレオがいるにも関わらず、両手を向け回復を施した。

「ちっ、こいつがいるのは腹立たしいが、俺や仲間を救ってくれたはずだ。回復の能力を『自動回復付与』。これで保てればいいが」
「怜! あいつが来るよ」
「な、何!? 周りはレーザーだぞ? 化け物か」

 怜は振り向くとそこにはオブリドがレーザーの傷跡をつけて向かってきた。
 怜は拳を力強く握り、決心を決め、拳を構えた。

「葵ちゃん、俺はこの技に賭ける。あいつは今、あのレーザーのダメージを負いながらきた。残り体力ゲージは無限となっているが、少し離れた俺の前に相手の体力を固定するトラップがある。だから俺はここであいつを仕留める」
「うん。葵は全力でサポートするよ」

 怜は両手を地面につけクラウチングスタートの姿勢になった。そして体には青い雷がジリジリと怜に纏い始めた。
 そして怜の予想通り何も知らないオブリドがトラップを踏んだ。さっきと同じで赤い魔法陣が現れたが、さっきとは違い、オブリドの右腕にミサンガが強制的に装備された。ミサンガは水色で、オブリドに痛みはなく、ふとゲージを見ると百に固定されていた。ちなみに百は怜の体力のマックスである。
 怜はトラップにはまったオブリドを確認すると思いっきり地面を蹴り飛ばし、凄まじい速さで雷を纏い、走った。
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