守護霊になった葵ちゃんと一緒に悪霊退治を始めることになった

葵ちゃんと復活

　旭は周りを歩く、提灯を咥えた狐に攻撃を仕掛けた。

「どけ！」

　旭は右足に朝顔の蔓を纏わせ、狐にめがけ、蹴りを放った。霊力は少ない旭だが、渾身の一撃を狐に直撃させた。しかし、ダメージを受けたのは旭だった。狐を蹴りで、吹っ飛ばすことができたが、それと同時に旭は左腕に激痛が走った。まるで、数千本の針に刺されたような痛みだった。

「ゔぅ……、なんだよこの痛み。なぜいきなり」

　するとオブリドはニコッと笑って話し始めた。

「それはね、あなたの一部を七つに分けた狐だからだよ。頭、右腕左腕、右足左足、腹部、そして最後の一匹が心臓だよ。ぜーんぶ倒さないとそこから出られないからね」
（クソ、なんでこんな技しかあいつは持ってないんだ！　この狐一匹が私の一部なのか）
「旭ちゃん！　柚奈ちゃんの霊力の減りが早くなっていったよ。早く、早く助けないと」

　朝顔が柚奈の体力を知らせると旭は、冷や汗を垂らし、拳を力強く握り、狐を殴っていった。そして旭は二匹同時に殴り飛ばした。
　その瞬間、旭の右足と頭に激痛が走った。旭は痛みに叫び、頭を押さえて座り込んだ。頭からは痛みで血が流れ、立てる状態ではなかった。

（あ、頭がぼんやりする。さっきの痛みが嘘のようだ。激しい眠気が、ここで眠れば楽に、楽になるんだろうな……ダメだ！　ここで寝たら全員死ぬ。私が踏ん張らないと）

　旭は痛みから震える右手を力強く握り、右足を引きずりながら自分の体を無理やり起こした。そして立ち上がり、また拳を構えた。
　心配そうな声で朝顔が声をかけた。

「あ、旭ちゃん？」
「あ、朝顔か。柚奈の心拍はどうだ？」
「危ない状態だけど、柚奈ちゃん自身が頑張っていきを続けてるよ」
「分かった。早く治療してあげないとな」

　すると旭は決心を固め、残り四匹の狐全てを一気に拳で粉砕した。狐はすぐに煤となり消え去っていった。そして旭にさっきの倍以上、右腕、左足、腹部、心臓へ激痛が走った。
　旭は上を向き、これ以上ない叫びをあげた。そしてうつ伏せに倒れた。
　オブリドはニヤリと笑い、棒状の鈴を左右に揺らし、鳴らした。すると倒れていた旭が起き上がった。不気味な立ち方で操り人形のようだった。
　その様子を見た朝顔が叫んだ。

「旭ちゃん！　旭ちゃん起きて！」

　朝顔の呼び掛けに応じず旭は黙って立ち上がり、歩き出した。そして旭は柚奈とレオの前に移動した。拳を握りしめ、二人の方に拳を構えた。
　そう旭はオブリドに操られていた。
　旭はそのまま、柚奈に近づき、拳を構えた。オブリドは、また鈴を鳴らすと旭は朝顔の蔓を拳に纏わせた。

「え！？　他人の霊力を勝手に使うんなんて。ダメだよ旭ちゃん！　その子は大切な人でしょ！」

　必死な呼び掛けはやはり通じず、旭は柚奈の心臓狙い、構えた。そして旭はそのまま勢いよく柚奈に拳を放った。旭の拳が柚奈に直撃する瞬間、誰かの手に阻まれた。

「ごめんな旭ちゃん遅くなって。無理させちまったな、ここからは俺が頑張る番だな」

　その手は病院服を着た怜で、久しぶりに聞く怜の言葉に旭は右目から涙を流し、怜の方に倒れた。怜は旭を抱えると、ゆっくり柚奈の横に寝かせた。そして、オブリドの方を睨んだ。
　オブリドは舌打ちをし、話した。

「なんだよ。『神楽鈴かぐらすず』を解除するなんて、お前、記憶が少し戻って何かを手に入れたな」
「黙れよ。よくも俺の友達にこんな酷いことをしてくれたな。覚悟しろ」
「まぁいい、お前は雑魚だからすぐに終わらせてやるよ。『稲荷門いなりもん・閉門おわり』」

　オブリドが神楽鈴を上から下に振ると稲荷門が閉まり始め、オブリドは門を潜った。そして稲荷門は下に沈んでいくと下の服装に戻っていた。刀を構え、走り出した。
　怜は葵を手袋に武器化させ、右手にはめた。怜は右手の平をオブリドの方に向け、技を出した。

「いくぞ、葵ちゃん。『戦闘開始ゲームスタート・勝負世界RPGワールド』」

　怜がそう言い放つと服がいつもの学生服になり、周りの屋上が一瞬でゲームの世界のような場所に変わった。周りは屋上だが、色合いがはっきり分かり、壁やガラス、ドアなどの表示された。そして怜目線、オブリドや柚奈、みんなの体力ゲージ、霊力ゲージが現れた。しかし、オブリドの体力、霊力ゲージは怜目線、最悪なことに無限と表示されていた。

（た、体力、霊力無限ってもうチートじゃん！　だが、俺には秘策がある）

　オブリドは怜に近づくと刀に狐火を纏わせ、青い炎の刀で怜に斬りかかってきた。怜は咄嗟に右手をだし、技を放った。

「防御アイテム発動『雪の堂夢スノードーム』」

　怜が技を放つと右手の平にスノードームが出現し、それと同時に激しい雪がオブリドの刀に纏わりつき、威力を減らした。しかし、威力を減らせれたとはいえ、すぐにスノードームは斬られてしまった。
　怜は後ろにジャンプし、空中に足場を用意した。

（何！？　空中で足場。私はあいつの能力が分からない。こんなふざけた場所にして。どうする気だ）

　次に怜はマスケット銃を出し、オブリド目掛けて構えた。