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葵ちゃんと旭の怒り

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 神社が金色に光り出すと翔子が出した暗闇は金色の光とともに消えていった。そして元の世界に戻った。
 翔子は目を開けるとそこには柚奈とレオの回復をする旭がいた。

(あ、旭じゃ。二人の手当てをしてれたのか。しかし、じゃが。もう、わしには戦える霊力が残ってない)

 旭は黒い球状の中から出てきた翔子に驚いた。しかし、旭は翔子のことを信じ、二人の回復を続けた。
 翔子は殺気を感じ、前を見た。

「じゃあね。忍者さん」
「!?」

 翔子は痛みの衝撃とともに腹部を見ると札が貼られていた。札は茶色く、古そうな色で、中心に狐の絵が描かれていた。そしてオブリドが、急接近して翔子の腹部を思いっきり、蹴った。
 蹴り飛ばされた翔子は空中に飛ばされ、何かに張り付いた。翔子の後ろには赤い体サイズの魔法陣があった。腹部のお札が光り、翔子は空中で身を拘束された。
 オブリドは刀を出した。刀は黒を基調としており、刃先は血のように真っ赤だった。そしてオブリドは翔子めがけ、刀を構えて飛んだ。

「さぁ地獄に落ちろ! 『真剣・稲荷斬り』」
「う、動けぬ」

 旭は嫌な予感がし、回復をやめ、咄嗟に翔子の方を向いた。その光景は空中で拘束される翔子、そして今にもトドメを刺そうとするオブリドの姿が目に入った。動けそうにない翔子を見ると旭は、焦りながら巨大な朝顔の蔓を生成した。

「危ない! 師匠!」

 巨大な太い蔓はオブリド目掛け、凄まじい速さで上に上がっていった。そして蔓はオブリドに直撃した。

(よし、当たった! 今のうちに師匠をどうにか……)

 しかし、旭の生み出した蔓はオブリドに直撃していなかった。オブリドは蔓をすり抜け、翔子に斬りかかった。翔子は刀で、斜めに斬られ、大量の血を流した。そしてお札が炎を纏い出し、翔子は炎の中心となった。
 旭は今の状況が信じきれず、絶望とともに固まっていた。

「さーてと、忍者さんは終わりだね」

 オブリドが空中から地面に降りると炎は消え、空中から大量の黒い羽が舞い上がりながら降ってきた。オブリドは仮面を取りに歩き出した。
 旭は絶望から怒りに変わり、立ち上がり、声を荒げた。

「お、お前……絶対に許さねぇ!」

 旭は一瞬で『花言葉・儚い情熱的な愛』を使い、怒りに任せてオブリドに襲いかかった。怒りに任せているとはいえ、力もそれなりに強く前より遥かにパワーアップしていた。

「よ、よくも師匠を!」
「えぇ? また恨み買ったパターン?」

 オブリドはだるそうに刀で拳を受け、防御した。そして右足で力強く旭の腹部を蹴り、飛ばした。蹴り飛ばされた旭は、腹部を抑えながらも前を向き、オブリドを睨んでいた。

「あのさー、よくも〇〇をーとかいう人いるけどさ。最初にやってきたのはそっちでしょ? 戦うなら死を覚悟しているわけじゃん? ならどうせ死んだら自己責任なんだからそんな怒らなくて良くない? 私だって大事な友達やられてるわけだし」

 旭は怒りながらも涙を拭き、拳と蹴りで再度攻撃を仕掛けた。

「ねぇねぇ話の途中なんだけど? 話を最後まで聞けないタイプね。分かった分かった。すぐに忍者さんと合わせてあげるからね」
(ダメだダメだ! このままじゃ勝てない。どうにかして弱点を探さないと。それか時間稼ぎ? いや待て誰のための時間なんだ! 後ろの二人は中々、回復が進まない。こいつのせいだ。こいつを私が!)

 旭は一度距離を取るために思いっきり地面を蹴った。一瞬でオブリドから距離を取ることができたが、オブリドは刀を地面にさしていた。

(い、一体何をするつもりなんだ。だが、私が先にあいつをやれば関係ない。師匠のおかげで霊力や体力は削れているはずだ。ここで、ここで私が決めないといけないんだ!)

 旭はまた地面を思いっきり蹴り、一瞬でオブリドの前に移動した。そして拳を構えて叫んだ。

「ここで終わりだ! 『切札・樹林の一撃魂の一撃』」

 旭の渾身の一撃がオブリドの心臓に届こうとしていた。しかし、オブリドは目を瞑り、唱えた。

「『稲荷門いなりもん開門はじまり』」

 するとオブリドと旭の間に巨大な木材の門が出現した。旭の拳は惜しくもオブリドまで届かず、門に直撃した。しかし、門に直撃した旭の切札だが、門の防御力が高く、破ることができなかった。

「クソクソクソ! こんな木風情が!」

 稲荷門が勢いよく開くと旭はその勢いに飛ばされた。そして門の中からは提灯を加えた狐が七匹出てきた。狐は金色に光っており、神々しい毛並みをなびかせていた。
 そして、狐達は一瞬で旭の周りを囲み、周りを歩いて旭のことを見ていた。

(何なんだこの狐は!?)

 オブリドは門をくぐると服装が変わり、巫女さんの服になっていた。そして手には刀ではなく、棒状のものに鈴が五つついたものを持っていた。
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