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少女の願い

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 少女は最後の力を振り絞り、話し出した。

「お、お姉ちゃん達が、わ、私を助けてくれたの?」

 その少女の声に応えるように柚奈は涙を堪え、少女に答えた。

「はい、そうです。私達はあなたの味方です。あなたは私が救います」
「あぁそうだ、私と柚奈が必ず、お前を救ってみせる」

 その二人の言葉に少女は喜び、ニコッと笑ったが、悲しげな表情になった。

「ありがとうお姉ちゃん達、でもね……私は助からないよ。もう、霊力もないし、この実験で全部なくなっちゃった」

 すると少女の体は、だんだん煤となっていった。
 旭と柚奈は必死に涙を零し、声を掛けた。

「ダメだ、諦めるな! なんとかする、なんとか。おい、柚奈、どうにかならないのか」
(れ、霊力の供給を……だ、ダメだ。私にそんな霊力、あるはずがない。そしたら旭ちゃん。無理だ、こんなにボロボロだ。どうすれば)

 必死になる二人に少女は、最後の力を振り絞り、微かな声で話し出した。

「ねぇ、お姉ちゃん。お願いがあるんだけど……」
「なんですか! 私たちにできることがあればなんでもします」
「お、お兄ちゃんをた、助けてあげて」
「分かりました。助けます! なのであなたも頑張ってください」
「そうだ、私たちに任せろ、だから頑張れ」
「ありがと……」

 少女は二人の言葉を聞くと安心したのか、ニコッと笑い、煤となって消えていった。そして、少女が消え去ったのち、そこに一つの石が残った。
 二人は溢れる涙を手で払い、少女の死を惜しんだ。
 柚奈は石を見つけると、ゆっくり手に取った。石はどこにでもあるような灰色一色に染まっていた。石には何かが刻まれてあったが、それが何かは全く分からなかった。

「これはなんでしょう」
「あの子の石のようだな、しかし、半分欠けてるよな?」

 二人は石の妙な形に気づくと、数分間、もう一つの石を必死に探した。

「おーい、柚奈。こっちにはないぞ」
「分かりました。これだけ広い体育館ですが、見つからないということは、別の人が持っている可能性があります」
「確かに! お兄ちゃんだっけ? そんなことも言ってたもんな」

 二人は探すのをやめ、柚奈が石を持つことになった。柚奈は石を大切にポケットの中にしまった。その後二人は、外に出ようとドアの方に向かった。
 その時、プカプカ浮いていた豊姫の人魂が豊姫の姿に戻った。

「ふわ~、あれ? ここは。は! そうだ、柚ちゃん大丈夫!?」
「おはようございます豊ちゃん。私はこの通り元気です」
「感謝しろよ豊姫、私のお陰だぞ!」

 豊姫は柚奈の身に何も無かったことが嬉しく、安堵した。旭の言葉を聞くが、信じがたい豊姫は半信半疑の表情で旭の顔を睨んだ。

「おい、なんだよその顔は! せっかく切札まで使ったのに」
「え!?」

 唖然とする豊姫と柚奈の前に朝顔が目を覚まし、現れた。そして豊姫同様眠そうに話し出した。

「みなさん、お疲れ様です。ふはー、さっきの話は少し聞こえてました。そうです、旭ちゃんが切札を使いました」
「そ、それは本当ですか? 旭ちゃん」
「あぁだからもうほとんど霊力は無い。とりあえず、師匠を探すぞ」
(すごい旭ちゃん、まさか切札まで使えるとは……私も戦いの中で、成長していかないと)

 まだ切札を使えない柚奈は旭に先を越されてしまったと焦った。
 すると悲しげな表情で、二人に話しかけた。

「そういえば、中にいた子はどうなったの?」
「やはり豊ちゃん、気づいていたんですね」
「あぁあの女の子か?」

 少し空気がピリついた。柚奈はなぜ、豊姫があの少女のことを黙っていたのか、分からなかったのだ。

「豊ちゃん、隠さないでください。なぜ私が気が付いた時に教えてくれなかったのですか? まだ救えた可能性があります」
「ご、ごめんよ柚ちゃん。黙ったのはわざとじゃ無いんだ。中にいた女の子の気配は知ってたし、そのまま二人に話すこともできた。しかし、それを伝えて二人はどういう行動に出ると思う?」
「ですから、助ける方法を」
「そうなるよね? その体力で助ける方法を考えながら戦えた? しかも柚ちゃんは代償が来ていたのに。しかも女の子は最初から助からなかったよ」

 豊姫の冷たい現実を聞いた二人は下を向き、何も言い返せなかった。豊姫は話を続けた。

「あれを作り出した奴は相当頭が狂ってる。いくつかの命や魂を無理やり組み合わせ、それが保たれるよう生命核を準備する。その核に選ばれたのが、あの女の子だ。私も一瞬だが、混合生命体の霊力の流れが見えた時、吐きそうになった」
「豊ちゃん、一体どんな動きを……」
「あの女の子から全ての霊力を吸い取って、身体中に巡らせていたんだ。痛みとしては全身を紐でキツく縛られているようなものだ。可哀想に」

 二人は口を押さえ、悲しい現実を受け入れきれなかった。豊姫は真剣な眼差しで、二人に話した。

「二人に忠告する。この学校、いやこの施設から襲いかかる悪霊使い、悪霊に関しては、何の姿であろう容赦はするな。私たちの目的は葵ちゃん奪還一本だ。無駄なことは考えない方がいい」
「わ、分かりました。心に留めておきます」
「あぁ先ずは葵ちゃん優先だな。まぁ師匠もいるし、大丈夫だろう」

 二人は重いドアを開け、外に出た。
 するといきなり、真っ赤に染まった炎の玉が、二人目掛け飛んできた。
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