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月に照らされるその緑色の目は美しく輝いた
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柚奈は旭と戦っていくうちに旭の体に異変を感じた。それは時間が経つたびに、旭の動きが少し、遅くなっていった。両目には朝顔の蔓で、覆われていながらも、その身体能力は凄まじいものだったが、それもだんだん鈍くなっていったのだ。そのことに気づいた柚奈は少し安堵した。
(もう少しだ。もう少しで旭ちゃんにかかっている花言葉の効果も消えるはず……だから、ここは私が耐えなければ)
「油断しないでね柚ちゃん。後少しと思っているけど、まだ旭ちゃんの力は強い。食らうと相当な威力だ。無駄な霊力を抑えて戦うよ柚ちゃん」
「分かりました」
豊姫は柚奈に釘を刺した。まるで柚奈の考えていることが手に取るようにわかっているようだった。それもそうだ、二人は共に何年もの月日を過ごしてきたのだ。だから豊姫は柚奈の油断する癖を分かっていたのだ。
柚奈は大きく息を吸い、深呼吸をした。そして刀を構え、旭を警戒した。
旭は拳を構えると一瞬にして、姿を消した。だが、最初の一分間と比べて早さは遅くなっていたので、柚奈は目で追いながら、刀を構えた。
砂飛沫と共に旭が拳を飛ばしてくると柚奈は余裕を持って刀で防御することができた。
(やはり始めと比べて遅くなっている。これなら私でも反撃できる。しかし、ダメージを負わせて旭ちゃんの霊力を減らすのは効率が良くないでしょう。仕方ないです。このまま受け流しましょう)
どう立ち回るか悩む柚奈だったが、考える暇を与えるはずもない旭は次々に拳を連発してきた。早さは遅くなったものの、力はそこまで落ちてなかったので、このまま刀で受けとめていることは苦しかった。激しく、刀が殴られると金属音が大きく鳴り響いた。
霊力には余裕はあるものの今は普通の女子高生なので、体力の限界が近づいてきた。
柚奈は息を切らしながらも旭の姿を目で追いながらなんとか刀で身を守った。
(もう、あとどれくらい戦えば……ダメだ私。こんなんじゃ葵ちゃんどころか旭ちゃんですらも正気に戻してあげられない。先輩だって苦しいはずなんだ。ここはなんとか凌がないと)
「柚ちゃん危ない!」」
豊姫の声で柚奈はハッとしたが、もう遅かった。旭の凄まじい拳が刀を吹き飛ばした。刀は宙を舞い、グランドの土に突き刺さった。柚奈はなんとか刀を取りに行こうと走り出したが、旭の方が早く、一瞬で柚奈の目の前にきた。
そして旭は赤いオーラを放った拳を構えた。
柚奈はその気迫に押され、地面に座り込んだ。目を瞑り、旭の拳が自分の胸を貫通するのが目に見えた。
(あぁ守れなかった。私は何も、旭ちゃんを正気にも戻せなかった。なんて私は弱いんだ)
優しい夜風が柚奈の髪をなびかせると柚奈は異変を感じた。
(あれ? なんで殴らないの。いや、もう私は痛みを感じる暇もなく死んだってこと!?)
柚奈は恐る恐る目を開くとそこには自分の顔で寸止めされた旭の拳と目が合った。柚奈は恐る恐る優しく旭の拳を両手で握ると旭の目を覆っている蔓から涙が溢れおりてきた。旭の涙に柚奈は気づくと、立ち上がり、旭を力一杯抱きしめた。
「ごめんなさい! ごめんなさい旭ちゃん。私がこんなに弱いから!」
「いや……私が悪いんだ。あんな花言葉を使ってしまったからこんなに柚奈を傷つけてしまった。ごめんな柚奈」
「いいえ、悪いのは私の方です。私が弱いがために旭ちゃんの目を……」
「目!?」
柚奈は旭の両目が失明したと思っていたが、旭が目のことについて疑問に思うと、柚奈も不思議に思った。旭は両目を覆っている蔓を外していくと、旭は綺麗な緑色の瞳を輝かせた。その月に反射して輝く緑色の瞳を柚奈は見ると、旭の目が無事で自然と涙が零れた。涙を零す柚奈を見て旭も涙を零しながらプフッと笑った。
「おいなんだよ柚奈。泣いてんじゃん」
「旭ちゃんだって泣いてるではないですか。私は本当に旭ちゃんの目が無事でよかったです」
「べ、別に泣いてないし、ゴミが入っただけだし」
「でもどうして旭ちゃんの目は無事だったんですか?」
「うーん、最初はやべって思って本当に見えなかったけど、途中からあれ? これ見えるんじゃねって思って」
「そこで説明しましょう」
いきなり豊姫が二人の間に割り込んで出てきた。二人は驚きながらも疑問に思った。
「どうしてですか豊ちゃん。ぜひ教えてください」
「ごっほん。旭ちゃんは結衣の能力を食らって目が見えなくなったわけでしょ? だからその本人が消え去れば、効果が一緒に無くなって無事に目が治ったってことさ。でも、逆に結衣が生きている限りは旭ちゃんの目は失明したままだったよ」
「うはっ! マジかよ。助かったー」
「では、もし、私たちの記憶がアイツに取られていたとしたら……」
「そう! アイツを倒せば全員の取られた記憶が戻ってくるってわけさ、まぁこの私の記憶も最近蘇ったからなんだけどね」
二人は少し、希望が見えてくると喜びながら先に進もうとした。しかし、結衣と戦った疲れが溜まっており、二人とも中々進む気がしなかった。そこで二人は霊力を使ってあるものを出した。
「やはり疲れた時にはこれですね」
「あぁ、これでとりあえず霊力は持ちそうだな」
二人は一本の缶ジュースを取り出した。その缶ジュースは緑色で何も表記していなかった。そうこれは霊力や体力を回復してくれるアイテム『霊力ソーダ』なのだ。二人はゴクリゴクリと勢いよく飲むとあっという間に中身は空になった。中身が空になった缶は一瞬で消えてしまった。すると二人の体力と霊力は全回復までとはいかないが、回復した。そして二人は背伸びをして気合を入れた。
「かぁ! これで力が湧いてきたぜ。早く葵ちゃんを取り戻しに行こうぜ」
「そうですね。今日中には葵ちゃんと一緒に記憶も全て取り戻しましょう」
二人は意気込むと、廃校の玄関へと向かった。
(もう少しだ。もう少しで旭ちゃんにかかっている花言葉の効果も消えるはず……だから、ここは私が耐えなければ)
「油断しないでね柚ちゃん。後少しと思っているけど、まだ旭ちゃんの力は強い。食らうと相当な威力だ。無駄な霊力を抑えて戦うよ柚ちゃん」
「分かりました」
豊姫は柚奈に釘を刺した。まるで柚奈の考えていることが手に取るようにわかっているようだった。それもそうだ、二人は共に何年もの月日を過ごしてきたのだ。だから豊姫は柚奈の油断する癖を分かっていたのだ。
柚奈は大きく息を吸い、深呼吸をした。そして刀を構え、旭を警戒した。
旭は拳を構えると一瞬にして、姿を消した。だが、最初の一分間と比べて早さは遅くなっていたので、柚奈は目で追いながら、刀を構えた。
砂飛沫と共に旭が拳を飛ばしてくると柚奈は余裕を持って刀で防御することができた。
(やはり始めと比べて遅くなっている。これなら私でも反撃できる。しかし、ダメージを負わせて旭ちゃんの霊力を減らすのは効率が良くないでしょう。仕方ないです。このまま受け流しましょう)
どう立ち回るか悩む柚奈だったが、考える暇を与えるはずもない旭は次々に拳を連発してきた。早さは遅くなったものの、力はそこまで落ちてなかったので、このまま刀で受けとめていることは苦しかった。激しく、刀が殴られると金属音が大きく鳴り響いた。
霊力には余裕はあるものの今は普通の女子高生なので、体力の限界が近づいてきた。
柚奈は息を切らしながらも旭の姿を目で追いながらなんとか刀で身を守った。
(もう、あとどれくらい戦えば……ダメだ私。こんなんじゃ葵ちゃんどころか旭ちゃんですらも正気に戻してあげられない。先輩だって苦しいはずなんだ。ここはなんとか凌がないと)
「柚ちゃん危ない!」」
豊姫の声で柚奈はハッとしたが、もう遅かった。旭の凄まじい拳が刀を吹き飛ばした。刀は宙を舞い、グランドの土に突き刺さった。柚奈はなんとか刀を取りに行こうと走り出したが、旭の方が早く、一瞬で柚奈の目の前にきた。
そして旭は赤いオーラを放った拳を構えた。
柚奈はその気迫に押され、地面に座り込んだ。目を瞑り、旭の拳が自分の胸を貫通するのが目に見えた。
(あぁ守れなかった。私は何も、旭ちゃんを正気にも戻せなかった。なんて私は弱いんだ)
優しい夜風が柚奈の髪をなびかせると柚奈は異変を感じた。
(あれ? なんで殴らないの。いや、もう私は痛みを感じる暇もなく死んだってこと!?)
柚奈は恐る恐る目を開くとそこには自分の顔で寸止めされた旭の拳と目が合った。柚奈は恐る恐る優しく旭の拳を両手で握ると旭の目を覆っている蔓から涙が溢れおりてきた。旭の涙に柚奈は気づくと、立ち上がり、旭を力一杯抱きしめた。
「ごめんなさい! ごめんなさい旭ちゃん。私がこんなに弱いから!」
「いや……私が悪いんだ。あんな花言葉を使ってしまったからこんなに柚奈を傷つけてしまった。ごめんな柚奈」
「いいえ、悪いのは私の方です。私が弱いがために旭ちゃんの目を……」
「目!?」
柚奈は旭の両目が失明したと思っていたが、旭が目のことについて疑問に思うと、柚奈も不思議に思った。旭は両目を覆っている蔓を外していくと、旭は綺麗な緑色の瞳を輝かせた。その月に反射して輝く緑色の瞳を柚奈は見ると、旭の目が無事で自然と涙が零れた。涙を零す柚奈を見て旭も涙を零しながらプフッと笑った。
「おいなんだよ柚奈。泣いてんじゃん」
「旭ちゃんだって泣いてるではないですか。私は本当に旭ちゃんの目が無事でよかったです」
「べ、別に泣いてないし、ゴミが入っただけだし」
「でもどうして旭ちゃんの目は無事だったんですか?」
「うーん、最初はやべって思って本当に見えなかったけど、途中からあれ? これ見えるんじゃねって思って」
「そこで説明しましょう」
いきなり豊姫が二人の間に割り込んで出てきた。二人は驚きながらも疑問に思った。
「どうしてですか豊ちゃん。ぜひ教えてください」
「ごっほん。旭ちゃんは結衣の能力を食らって目が見えなくなったわけでしょ? だからその本人が消え去れば、効果が一緒に無くなって無事に目が治ったってことさ。でも、逆に結衣が生きている限りは旭ちゃんの目は失明したままだったよ」
「うはっ! マジかよ。助かったー」
「では、もし、私たちの記憶がアイツに取られていたとしたら……」
「そう! アイツを倒せば全員の取られた記憶が戻ってくるってわけさ、まぁこの私の記憶も最近蘇ったからなんだけどね」
二人は少し、希望が見えてくると喜びながら先に進もうとした。しかし、結衣と戦った疲れが溜まっており、二人とも中々進む気がしなかった。そこで二人は霊力を使ってあるものを出した。
「やはり疲れた時にはこれですね」
「あぁ、これでとりあえず霊力は持ちそうだな」
二人は一本の缶ジュースを取り出した。その缶ジュースは緑色で何も表記していなかった。そうこれは霊力や体力を回復してくれるアイテム『霊力ソーダ』なのだ。二人はゴクリゴクリと勢いよく飲むとあっという間に中身は空になった。中身が空になった缶は一瞬で消えてしまった。すると二人の体力と霊力は全回復までとはいかないが、回復した。そして二人は背伸びをして気合を入れた。
「かぁ! これで力が湧いてきたぜ。早く葵ちゃんを取り戻しに行こうぜ」
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