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二人は似ている
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ちゅんちゅんと小鳥の囀りが聞こえ、朝の日差しが病室を照らすと柚奈は目を覚ました。少し眠たそうに目を擦りながらスマホを見ると時刻は六時を表示していた。
「疲れているはずなのにどうしてか、いつも通りこの時間に起きてしまうんですよね」
柚奈は独り言を小さく呟くとベットから降り、怜の様子を伺った。怜は天井の方を向いたまま、安らかに眠っていた。葵と強制的に離された影響で、怜はもう二、三日寝たきりだと柚奈は思った。柚奈は悔しさから拳を力強く握り、何もできなかった自分に苛立った。
(先輩、待っててくださいね。必ず私が葵ちゃんを取り戻してみせます。あの時私はリヴァイアサンの力を上手くコントロールできず、溺れかけましたが、今の私は違います。きっと次はうまくいきます)
「はぁ~柚ちゃんはいつも通り早いね。私は霊力が少ないから二度寝の気分だよ~」
柚奈が怜を見守っていると眠そうに豊姫が現れた。豊姫は昨日の戦闘のせいで霊力が少なく、寝たりなさそうな様子だった。柚奈は優しい表情で二コリと微笑み、挨拶をした。
「おはようございます豊ちゃん。昨日は無理させてしまい、すみません」
「もう! 本当だよ。昨日のせいで肩こりが酷いよ。まぁでも柚ちゃんがこうして元気だから私は全然平気さ」
「ありがとうございます。ところで奴らの気配は感じられましたか?」
「いや~私と朝顔が結界を上手く貼れてるおかげで、全然気配は感じなかったよ。はぁ~それより私は二度寝するね」
「分かりました。おやすみなさい」
豊姫は昨日の悪霊使いの気配のことを伝えるとあくびをしながらプカプカと人魂状態になり、眠ってしまった。柚奈は歯磨きや髪を整えるとベットの上で座禅を組んだ。
時刻は八時を回るとやっと旭が目を覚ました。旭は頭を掻きながら時間を確認した。そして辺りを見回すと病院に泊まっていたことを思い出した。柚奈の方を見ると座禅を組んでいたので驚いた。
「うわっ柚奈。お前朝っぱらから何してるんだよ」
「あ、おはようございます旭ちゃん。何って見た通り座禅を組んで、霊力の回復効率を上げていたんですよ。昨日は結構使ってしまったんでね」
「ふーん、そして相変わらず怜はまだ目覚めないんだなぁ」
二人が朝の何気ない会話をしていると病室のドアをノックし看護師が入ってきた。看護師は二人に挨拶をすると怜の検温と血圧を測ると部屋を後にした。柚奈は朝ごはんにしようと旭を誘った。
「そろそろ朝ごはんにでもしましょうか。ちょうど病院の中にコンビニがあります。一緒に買いに行きませんか?」
「あぁそうだな。私もお腹ペコペコだ。朝顔も目を覚まさないし、相当疲れているはずだ。私がいち早く元気にならなくては!」
二人も病室を後にして、一階にあるコンビニに向かった。
そして時を遡り、昨日の夜廃校では、結衣がオブリドの元に帰っていた。結衣は傷を負いながらも廃校に入り、図書室のドアを開けた。ドアを開けるとオブリドが本の山の頂上で、本を読んでいた。どうやら翔子とは戦っていない状態だった。結衣は恐る恐るオブリドに話しかけた。
「オブリド様。任務完了いたしました。あの幽霊の霊体がこのお札の中に封印されております。どうかご確認ください」
オブリドはパタンと本を閉じると狐の面を被ったまま、本の上から飛び、地面に着いた。そして結衣に近づいた。
「体がボロボロだね結衣ちゃん。あなたはいつからこんなに弱くなったのかな? まぁいいやとりあえずお札が先だ」
結衣はオブリドにお札を渡すとオブリドはお札を下から目を光らせて見た。そして満足したのかお札をポケットにしまうと結衣の顔をじっと見た。結衣は不安になり顔色が青くなった。
「結衣ちゃん。任務にはギリギリ合格だけどさ~このままだと君も学校ゲーム行きになるからね? うふふ。私は結衣ちゃんが頑張ってゲームをする姿も、見たいけど……次はねぇぞ?」
「は、はい! 精進してまいります」
「うんうん分かればいいんだよ。そしたら次は君が逃した二人の獲物の首を持って帰って来てね」
「はい! 承知しました。全てはオブリド様のために」
結衣はオブリドに頭を下げると逃げるように走って廃校を後にした。廃校を後にした結衣は息を切らしながら口を呟いた。
「なんだよもう、私は任務を遂行したのに、このままじゃ学校ゲームだ。早く奴らを殺さないと。にしてもあんなところ生きてる心地がしなかったわ。早く解放されるためにも頑張らないと」
結衣はフラフラしながらも真夜中の道を進み、自分の家へと帰っていった。
時を戻し、朝ごはんを買って来た二人は病室で食事をしていた。柚奈は野菜スムージーとヨーグルト旭はおにぎり二つを頬張り、お茶を飲んでいた。しかしどこか寂しく二人の会話は盛り上がることはなかった。
食事を済ますと二人はそれぞれ違う修行をした。柚奈は女子トイレに入り、巻物の世界で自分の技術を磨く練習を、旭は病院から出るとランニングをして体力の向上を目指した。
そして時間は過ぎ、昼も終わり、夜になった。怜の様子は昨日同様変化はなく、ずっと寝ている状態だった。健康には心配なく、点滴で栄養が補給された。二人も昨日と一緒で食事とシャワーを済ませるとベットの中に入った。昨日と違うところはここからだ。二人は会話もなく、すぐに寝てしまった。
時間は深夜の二時を回ると柚奈は目を覚ました。そしてベットから起き上がると出かける支度に取り掛かろうとした。しかし、起きた瞬間、隣を見ると起き上がる旭と目があった。二人は口をポカンと開けたのち笑い出した。
「あ! 柚奈もこっそり葵ちゃんを取り戻しに行くつもりだったのか~」
「旭ちゃんもですよね。では、二人で行きましょうか」
「おうよ」
二人は部屋着から動きやすい服に着替えると気を引き締め、廃校へと向かった。
「疲れているはずなのにどうしてか、いつも通りこの時間に起きてしまうんですよね」
柚奈は独り言を小さく呟くとベットから降り、怜の様子を伺った。怜は天井の方を向いたまま、安らかに眠っていた。葵と強制的に離された影響で、怜はもう二、三日寝たきりだと柚奈は思った。柚奈は悔しさから拳を力強く握り、何もできなかった自分に苛立った。
(先輩、待っててくださいね。必ず私が葵ちゃんを取り戻してみせます。あの時私はリヴァイアサンの力を上手くコントロールできず、溺れかけましたが、今の私は違います。きっと次はうまくいきます)
「はぁ~柚ちゃんはいつも通り早いね。私は霊力が少ないから二度寝の気分だよ~」
柚奈が怜を見守っていると眠そうに豊姫が現れた。豊姫は昨日の戦闘のせいで霊力が少なく、寝たりなさそうな様子だった。柚奈は優しい表情で二コリと微笑み、挨拶をした。
「おはようございます豊ちゃん。昨日は無理させてしまい、すみません」
「もう! 本当だよ。昨日のせいで肩こりが酷いよ。まぁでも柚ちゃんがこうして元気だから私は全然平気さ」
「ありがとうございます。ところで奴らの気配は感じられましたか?」
「いや~私と朝顔が結界を上手く貼れてるおかげで、全然気配は感じなかったよ。はぁ~それより私は二度寝するね」
「分かりました。おやすみなさい」
豊姫は昨日の悪霊使いの気配のことを伝えるとあくびをしながらプカプカと人魂状態になり、眠ってしまった。柚奈は歯磨きや髪を整えるとベットの上で座禅を組んだ。
時刻は八時を回るとやっと旭が目を覚ました。旭は頭を掻きながら時間を確認した。そして辺りを見回すと病院に泊まっていたことを思い出した。柚奈の方を見ると座禅を組んでいたので驚いた。
「うわっ柚奈。お前朝っぱらから何してるんだよ」
「あ、おはようございます旭ちゃん。何って見た通り座禅を組んで、霊力の回復効率を上げていたんですよ。昨日は結構使ってしまったんでね」
「ふーん、そして相変わらず怜はまだ目覚めないんだなぁ」
二人が朝の何気ない会話をしていると病室のドアをノックし看護師が入ってきた。看護師は二人に挨拶をすると怜の検温と血圧を測ると部屋を後にした。柚奈は朝ごはんにしようと旭を誘った。
「そろそろ朝ごはんにでもしましょうか。ちょうど病院の中にコンビニがあります。一緒に買いに行きませんか?」
「あぁそうだな。私もお腹ペコペコだ。朝顔も目を覚まさないし、相当疲れているはずだ。私がいち早く元気にならなくては!」
二人も病室を後にして、一階にあるコンビニに向かった。
そして時を遡り、昨日の夜廃校では、結衣がオブリドの元に帰っていた。結衣は傷を負いながらも廃校に入り、図書室のドアを開けた。ドアを開けるとオブリドが本の山の頂上で、本を読んでいた。どうやら翔子とは戦っていない状態だった。結衣は恐る恐るオブリドに話しかけた。
「オブリド様。任務完了いたしました。あの幽霊の霊体がこのお札の中に封印されております。どうかご確認ください」
オブリドはパタンと本を閉じると狐の面を被ったまま、本の上から飛び、地面に着いた。そして結衣に近づいた。
「体がボロボロだね結衣ちゃん。あなたはいつからこんなに弱くなったのかな? まぁいいやとりあえずお札が先だ」
結衣はオブリドにお札を渡すとオブリドはお札を下から目を光らせて見た。そして満足したのかお札をポケットにしまうと結衣の顔をじっと見た。結衣は不安になり顔色が青くなった。
「結衣ちゃん。任務にはギリギリ合格だけどさ~このままだと君も学校ゲーム行きになるからね? うふふ。私は結衣ちゃんが頑張ってゲームをする姿も、見たいけど……次はねぇぞ?」
「は、はい! 精進してまいります」
「うんうん分かればいいんだよ。そしたら次は君が逃した二人の獲物の首を持って帰って来てね」
「はい! 承知しました。全てはオブリド様のために」
結衣はオブリドに頭を下げると逃げるように走って廃校を後にした。廃校を後にした結衣は息を切らしながら口を呟いた。
「なんだよもう、私は任務を遂行したのに、このままじゃ学校ゲームだ。早く奴らを殺さないと。にしてもあんなところ生きてる心地がしなかったわ。早く解放されるためにも頑張らないと」
結衣はフラフラしながらも真夜中の道を進み、自分の家へと帰っていった。
時を戻し、朝ごはんを買って来た二人は病室で食事をしていた。柚奈は野菜スムージーとヨーグルト旭はおにぎり二つを頬張り、お茶を飲んでいた。しかしどこか寂しく二人の会話は盛り上がることはなかった。
食事を済ますと二人はそれぞれ違う修行をした。柚奈は女子トイレに入り、巻物の世界で自分の技術を磨く練習を、旭は病院から出るとランニングをして体力の向上を目指した。
そして時間は過ぎ、昼も終わり、夜になった。怜の様子は昨日同様変化はなく、ずっと寝ている状態だった。健康には心配なく、点滴で栄養が補給された。二人も昨日と一緒で食事とシャワーを済ませるとベットの中に入った。昨日と違うところはここからだ。二人は会話もなく、すぐに寝てしまった。
時間は深夜の二時を回ると柚奈は目を覚ました。そしてベットから起き上がると出かける支度に取り掛かろうとした。しかし、起きた瞬間、隣を見ると起き上がる旭と目があった。二人は口をポカンと開けたのち笑い出した。
「あ! 柚奈もこっそり葵ちゃんを取り戻しに行くつもりだったのか~」
「旭ちゃんもですよね。では、二人で行きましょうか」
「おうよ」
二人は部屋着から動きやすい服に着替えると気を引き締め、廃校へと向かった。
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