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守護神使いの代償

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 結衣は刀を構え、柚奈に向かって走った。柚奈は走ってくる結衣に対し刀を後ろに向けて握った。そして結衣は刀を突き出し、柚奈の腹を串刺しにするように攻撃した。柚奈は素早く反応し、壁を蹴り結衣の後ろから斬りかかった。
 予想外の動きに結衣は刀で柚奈の攻撃を受け止めるが、現状結衣は押されていた。

「なぜあなたは彼女たちを殺したのですか?」
「あいつらには天罰が下ったのよ」
「天罰ですか。ではそれはあなたにも私から下します。『嵐の夜あらしのよる』」
「は!?」

 柚奈は結衣から距離をとると、刀からは黒い海水が荒ぶりながら勢いよく流れ出てきた。海水は刀を包み、伸びていった。そしてその長さは刀の倍以上の長さになった。その様子を見た結衣は焦った。

(何よあの技!? 私の情報にないわ。でも、ここで私が負けたら今までの努力が無駄になるわ。こうなったら……三人目を)
「あなたの復讐はこれで終わりです」

 柚奈は走り、壁を伝って上から刀を振り下ろした。結衣は刀を捨てた。柚奈は諦めたのかと思い、とどめを刺そうと結衣の首を切り落とすように斬りかかった。すると結衣はにやけた。
 柚奈は何か嫌な予感がしたがもう遅かった。結衣は両手を前に突き出し、何かを叫んだ。

「私の復讐劇はここでは終わらせない! 『生き写しドッペルゲンガー花言葉はなことば 固い絆シロ』」

 結衣の前には人間サイズの白い朝顔が咲き、その周りには朝顔の蔓が結衣を守るように囲んだ。その技は以前、朝日が怜の技から身を守るために使った防御のわざと一緒だった。柚奈は朝顔に斬りかかり、荒ぶる海水の刀で攻撃をした。しかし、柚奈の攻撃は白い朝顔の前では通ることがなかった。刃が通らないと知った柚奈は攻撃をやめて下がった。

(朝顔……朝日ちゃんの技。朝日ちゃんのことも知っていたってこと!? しかし、状況は最悪ですね。朝日ちゃんの技まで使えるとは、私に残された時間は三十分。それを超えると私の寿命が)
「はぁはぁ……これであなたの技は凌げるわ。さぁあなたはこの世に二人はいらない。私は怜くんと一緒に天国に行くの!」

 結衣は朝顔の蔓を抜き取ると、そこからレイピアを生成した。レイピアは紫色を基調にしており、刃は細く、持ち手の上には紫色の朝顔が付いていた。レイピアを構えると結衣は走りだし、柚奈の喉を狙って斬りかかってきた。
 柚奈も刀で応戦するが、戦い慣れていない細いレイピアでは避けるので精一杯だった。そのまま時間が過ぎていき、柚奈の体に異変が起きた。
 柚奈が結衣から距離を取ると柚奈はいきなり心臓を右手で抑えた。そして口から血を吐いた。そう、二度目の守護霊の力を使った代償がきたのだ。

「柚ちゃん! もう時間だ。ここは引こうよ」
「いえ、まだです」

 血を吐きながらも柚奈は戦う意思を見せるが、結衣はチャンスだと喜び、レイピアを振るった。柚奈も心臓の痛みに耐えながら刀でレイピアを払い、耐えた。

(もう三十分ですか。早いですね。ここから十分ごとに寿命一年ですか。上等です)
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