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葵ちゃんと朝顔紫の花言葉

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 試合が始まると旭はまず、両手を地面につき、目をつぶって霊力を土に送った。怜はチャンスだと思い、走って旭に接近した。

「旭ちゃん! 早速だが、一発食らってもらうぜ」
(ほう、怜はどうやら近距離型のようだな。ならこっちも様子を見るか)

 旭は接近してくる怜を目を見開いて確認すると両手を離し、立ち上がった。怜は警戒せずそのまま旭に近づいた。怜が後十メートルのところまで近づくと旭はニヤリと笑い、両手をクロスさせ、朝顔に話しかけた。

「朝顔! 今よ、あいつの足を引っ掛けて!」
「はいです」

 怜が走っていると急に足元に朝顔の蔓が出てくると思わず引っかかり、転んでしまった。

「うわぁ! まさかこれ、あの時の!」
「よし引っ掛かったな。朝顔! 次は鞭を武器化だ」

 怜はこの時旭と公園にあった時を思い出した。いきなり襲ってくる彼女から逃げる怜だったが、最後何かの蔓に引っかかり転んでしまったことを。
 怜が転ぶと旭は鞭を朝顔に武器化させた。しかし、武器化には少し時間がかかるため、すぐには武器化できなかった。そしてその命令とともに旭は走り出した。
 怜は起き上がろうとした時には旭が前にいて、足を構えていた。

(まずい、このままだと蹴りを入れられる!? とりあえず両手で防ごう)

 旭の蹴りを受けようと怜は両手で自分の顔を守るようにガードした。しかし、旭の蹴りは重く、怜は受け切れず、吹っ飛ばされた。
 また旭は怜との距離が開いてしまったが、丁度このタイミングで鞭の武器化が終わり、鞭を装備した。

(っく、蹴りは受けたものの距離はとれそうだ。とりあえず距離をとって立て直そう)
「そう簡単に逃がさないわよ!」

 距離をとって立て直そうと思った怜に対し、旭は鞭を打ち、怜の右足を捕らえた。もちろん怜は右足を鞭に奪われるとバランスを崩し、立ち上がることができなかった。先のことを考える旭はまた朝顔に指令を出した。それはまるで自衛隊の指揮官のようだった。

「朝顔、次は捕まえたやつに追撃よ。始めに仕込んだあれを使うわ」
「もうですか!?」
「タイミングを逃すわけにはいかないのよ! 様子を見て下がるんだったら、今このチャンスを掴みに行く! 『花言葉はなことば 冷静・平常むらさき』」
「何!? このタイミングで何を」

 旭の体が紫色のオーラに包まれた。それだけでなく、最初に土に霊力を流した正体が明らかになった。土からはメキメキと朝顔の蔓が出てきた。怜と旭を囲むように朝顔の蔓が出てくると葉は大きく開き、紫色の朝顔が周りに咲き始めた。
 怜は辺りを見渡し、朝顔で一杯の地面を見るとピンチだと思い、自分の近くの朝顔に霊力を込めてパンチをした。しかし、怜のパンチでは朝顔は消えず、何も起こらなかった。それも仕方がない、今の怜の体勢横になっているので、上手く殴ることができなかったのだ。

(クソ、どうすればいいんだ! 身動きが取れない今、俺は……足に力を入れるしかないな)
「じゃそろそろ終わらせましょう」

 旭は鞭を地面に埋め込み朝顔の蔓に絡め、走り出した。怜は一か八か右足に霊力をこめ、集中した。接近する旭に対し、怜は焦らず右足に力を入れた。そして次の瞬間、右足に力を入れると埋められた鞭は飛び出て怜の足は解放された。
 鞭は武器化が解かれ、朝顔は守護霊になった。
 旭は立ち上がる怜に対し、正確に攻撃を仕掛けた。

(あいつは今、右足に違和感を感じているはず、だから右足での攻撃はない。あり得るとすれば私の蹴りを警戒した防御。殴りがきたらきついが奴は右足の違和感から上手く殴れない、だから殴ってきたとしても勝てる。だから今は右足の蹴りが正解)

 旭は『花言葉 冷静・平常』の効果で脳が活発化し、怜の倒し方を数値化して攻撃を仕掛けた。もちろん怜は旭の考え通り、右足に力が入らず防御の姿勢に入っていた。
 旭は計算通りだとヒヤリと笑い、また力強く右足の蹴りを入れた。さっきとは違い、力の入れ方や体重移動が完璧で、さっきよりはるかに力強い蹴りが怜の両腕にヒットした。
 怜は歯をくいしばりながらも蹴りをなんとか受け止めた。そして怜は左手で反撃した。
 その反撃すらも予想の範囲にあった旭は避けて、右手で顔面を殴った。
 その様子を見ていた、柚奈と豊姫は驚いていた。

「旭ちゃんすごいね~、始めからあんなに飛ばしていくなんて! しかもあんなに霊力を消費したはずなのに息切れすらしてないんだよ」
「確かに、彼女には霊力が豊富なのでしょう。でも、私が驚いたのは武器の使いこなしです」
「武器?」
「えぇ、彼女くらいだったら鞭でももっと強いものに武器化させることができますが、彼女はわざと一番霊力を使わないレベルの低い鞭を使っていたのです。それでまだ霊力に余裕があるのでしょう。彼女はただならぬ守護霊使いでしょう」

 柚奈の言葉に豊姫は唖然として戦いを見ていた。
 怜は旭の攻撃から距離を取ることができず、攻撃を食らうか、防御するの二択になってしまっていた。それもそのはず、周りには怜を逃さないよう朝顔があり、旭の攻撃も霊力を上手く流し、安定した殴りと蹴りのコンビネーションである。怜の体力や体は限界を迎えようとしていた。
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