守護霊になった葵ちゃんと一緒に悪霊退治を始めることになった

メロンジャム

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怜VS旭

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 すると旭の守護霊が一歩前に出て、話し出した。

「あ、あのー、私たちどうやら敵同士ではなさそうですし、とりあえず自己紹介をしましょう」
「はぁ!? あんた何言ってんの? こんな状況で私はあいつらと仲良くできないから!」
「旭ちゃん。どう考えても土足で人のうちに上がって、いきなり手を出した旭ちゃんが百パーセント悪いんだよ。だから素直に謝って、みんなと仲良くしよう」
「もう! 知らない!」

 旭は守護霊に謝るよう促されると現実が受け止めきれず、走り出して、そのまま外に出て行ってしまった。守護霊は悲しそうな表情で、その場に残った。そして怜達の方を向き、頭を下げた。

「このたびは私の主人。旭ちゃんが迷惑なことをしてしまい、本当にすみません。困ったことがあったら私に言ってください。何でもしますので」
「いやぁ、君が謝る必要はないよ。いきなり来て暴れ出したのは旭ちゃんの方だし、そういえば君の名前は? ちなみに俺は冬風怜」
「私は神野柚奈です」
「葵だよー」
「豊姫でーす」

 怜達は旭の守護霊の優しさに心打たれ、なんとか仲良くしようと考えた。その行動に旭の守護霊は嬉しくなり、つい涙がこぼれた。

「みなさん、とても優しいんですね。私嬉しいです。私の名前は『朝顔アサガオ』です。名前の通り朝顔の守護霊です。よろしくお願いします」
「もう泣くなって~。朝顔かぁあの花俺も好きだなー」
「朝顔ですか。私も好きですよ。ところで旭ちゃんのことは追わないのですか?」

 柚奈がさっき突然出て行った旭を追わない朝顔に不思議に思った。朝顔はこぼれ落ちる涙を拭くと話し出した。

「旭ちゃんは毎回こうなんですよ。何か自分に嫌なことや都合が悪くなるとすぐに出て行ってしまうんです。小さい頃からそうです。でも、根はとっても寂しがりやで言葉の伝え方が不器用でいつも人と喧嘩しているので、中々友達がいないんですよ。でも旭ちゃんはとてもブランコが好きなので、今一人で公園のブランコに乗っているはずです」
「追わなくていいのか?」
「今は一人がいいと思います。一人で考える時間があるからこそ旭ちゃんは頭を冷ますことができるんです。そのうちお腹が減ったら戻ってきますよ」

 朝顔が笑顔で話すと怜と柚奈は腹が減ったら戻ってくるんかいと心の中で同時にツッコミを入れたのであった。怜は朝顔を見て、小さい割にしっかりしているなと思い、旭とは大違いだと感じた。
 怜と柚奈はお腹を鳴らし、お昼ご飯を食べようとした。しかし、怜のペペロンチーノはさっき旭に食べられてしまい、なかったのだ。仕方なく柚奈は自分の分を怜にあげ、カップ麺を作り始めた。
 その後四人は昼食を食べ終え、修行に行こうとした。その時、またドアが力強く開けられた。
 慌ててみんなが玄関に行くとそこには旭が息を切らしていた。きっと走って帰ってきたのだろう。そして旭は靴を脱ぎ、怜と柚奈の前に立ち話し出した。

「あ、えーと……わ、悪かったな」
「まぁ気に入りませんが、謝ってくれたのですから、これからもよろしくお願いします」
「何を偉そうに言ってんだよ、私は土足で家に上がったことに謝ったんだ。お前達には謝ってないんだからね」
(うわー面倒臭いツンデレキャラきたー。はぁ俺の右手よもうあいつの胸にだけは行くなよ)

 素直じゃない旭が謝ると柚奈は早速修行を始めるために巻物を用意した。巻物に食いつきそうな旭だったが、旭は当然のように一番に巻物の世界に朝顔を連れて飛び込んだ。あとを柚奈と怜が追った。
 巻物の世界に着くと旭は電子パネルをポチポチと慣れた手つきで打っていた。

「旭ちゃん、あなた巻物の世界には慣れてそうですが、以前旭ちゃんも持っていたのですか?」
「あぁ!? 私は師匠から特別もらって……あれ? 上手く思い出せない? うーん、おかしいなぁ」
「多分旭ちゃんも記憶を奪われてしまったようですね」
「は!?」

 旭は上手く翔子から受け取った巻物について記憶がなかった。柚奈に記憶を奪われたと聞くと、そんなはずないとじっくり考え込んだ。しかし、飽きっぽい性格の旭は思い出す集中力が無くなったようだ。

「あぁ! もういい! 忘れたならそれでいいし、今は修行だ! あ! 丁度いい、どっちか私と戦わないか?」
「え!? そんなことできんの?」
「そうですね。一応こちらの体は現実世界まで傷が残ることがないので、全然大丈夫ですよ」
「よし! じゃ俺が相手だ。さっきペペロンチーノを食べられておかいしと行こうか」
「ふん! 望むところよ。私も伊達に守護霊使いを長年やってきたんだから、あんたなんかに負けてたまるもんですか」

 二人は位置について、守護霊を武器化させた。怜は使い慣れたグローブで、準備体操をしていた。対する旭は武器を持たず、靴を脱いで裸足になった。そして電子版を触り、服を着替えた。服装はTシャツ短パンで、制服と比べて動きやすい服装になった。服装を着替えることに不思議になった怜は質問した。

「なぁ、なんで服を着替える必要があるんだ?」
「あなたね! 私は足も使うのよ!? 蹴りを入れて時にパンツなんか見られた日には私、恥ずかしくて死んだ方がマシになるくらいショックを受けるわよ」
(えぇ!? じゃ胸はセーフってこと? どんな基準してるんだこの女は)

 怜は旭の価値観についていけず、呆然としていた。お互い準備が終わると、二人の前に手のひらサイズのモニターが出てきた。そこにはルールが書いてあった。
 タイマンのルール
 1 相手の生命力かギブアップ、時間切れで終了(三十分間)。時間切れの場合は残った霊力の量で決着。
 2 武器の変更は不可。最初に所持してない人は変更可。
 3 外野への攻撃禁止
 以上3つを守ること。

 怜は2番の武器について柚奈に質問した。

「なぁ柚奈ちゃん最初に武器を持ってない人はなんで変更可能なんだ?」
「武器を変える時に時間を有するので、始めに武器を持っている人の方が有利になってしまうからです」
「なるほど~。まぁ俺たちは武器これだけだし、まぁいいか」
「よし! 葵頑張るぞ!」

 怜と葵が気合を入れると柚奈が試合の合図となる笛を鳴らした。笛の音が鳴り響き、試合が始まった。
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