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葵ちゃんとあの少女の能力

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豊姫は戦いながら狐の面を被った少女について考えたことを怜に話した。

「実は私戦いながら変な気分だったんだよね~、こうどこかであの狐とあったかあってないかぁみたいな雰囲気で初めて戦う相手じゃないと思ったんだよね」
「あぁそういえばあの女の子またかよみたいなこと言ってなかった?」
「えぇー、言ってたかなぁだとしたら何よ。人違い? それともどこかで会った感じ?」
「うーん」

 二人はそれぞれ思うことを言い、相手について考えた。しかし、考えれば考えるほど謎は深まっていくばかりだった。

「そういえば、面は関係ないけど、人の技をパクるやついたよね!」
「あぁ確かに柚奈ちゃんや師匠に化けるやるもいたなぁ。それに今回は音符を使ってきた!」
「音符といえば音楽室の女の子!」
「わかったぞあいつは前に襲ってきたやつだ。あ、待てよでもあの女の子鬼火使ってきてたよな? そうすると人をパクる定義には反するし、そもそも武器自体もバイオリンだったよな? 音楽室の子は指揮棒だし、なんか違ってきたような」
「そう言われれば、確かにそうだよ。音符もしっかり霊力が伝わってきたから私の刀でも斬るのに時間がかかったわね。そしたらパクるやつは違うってことなのね。あぁそうしたら一体誰なのよー」

 思っていた人物と違い、ガクッと二人は落ち込んだ。だが、二人は諦めず考えていった。

「じゃ俺たちにとっては初対面なだけあって、むこうは何かで監視してたりして。リリィをこっちに行かせた奴があの少女だとしたら辻褄は合うな」
「なるほどー、いいね怜くん。他には~」
「お前も少しは考えてくれよな。あ、でも豊姫がいう戦ったことがあるってのはどこか引っかかるな」
「そうなんだよ~監視だったらむこうのまたかよはわかるけど、私のどこかでは辻褄が合わなくなってくるんだよね。リリィ戦以外にそんな大ごともなかったし、こうなったら記憶が消されているくらいしか辻褄が合わなくなっちゃうよ!」
「記憶……」

 怜は顎を右手に乗せ、記憶について考え始めた。急に黙り込む怜に対し豊姫は少し、期待を持ち、口を開けるのを待った。

(記憶かぁ、でも記憶でならあっちは覚えていて、豊姫の戦闘感覚だけ残っているのは不思議でないし、辻褄があう。それにこの街は名前がない。奴の能力が人の脳をいじるとか消すとかならありうるが、そんな記憶をいじるくらいの能力を持っているやつを相手にするのはやばいし、勝ち目が薄い。しかもあの少女がこの街を仕切ってた場合、翔子をあそこまで一瞬で苦しめるくらいだ。これは相当な敵だな)

 数分間、豊姫は怜を見つめて待つが、そんなことは無視し、怜は自分の脳内であの少女について整理していた。等々待ちきれなくなった豊姫は話し出した。

「ねぇ! 怜くん、それでどうなったの!? わかったの? わかったら私にも話してよぉ、一人だけずるいよ~」
「うん!? あぁごめんごめん。つい集中しすぎると周りが見えなくなってな。すまんすまん」

 豊姫は腕を組み、大声で怜に声をかけた。怜は豊姫を置いてけぼりにしてしまい、豊姫の存在を忘れるくらい考えてしまった。豊姫は拗ねながら怜に聞いた。

「それでー、わかったなら教えてよぉ」
「そうだな、俺が思うにあの狐の少女は記憶をいじることができると俺は考えた」
「記憶?」
「そう、記憶だ。記憶一つでもし、あいつが柚奈ちゃんとか俺たちで戦ったとしよう。そして、戦っていくうちにあっちがピンチになると俺たちの記憶を消して逃げたっていう線が濃厚かと思う。それならあっちがだるそうにまたかよっていうのも分かるし、豊姫の言い分も分かる。どうだ? 聞いた感じあってそうか」
「でもさ~、もしそれが本当だったら相手強すぎない? 街の名前までみんなの脳から消し去ってんだよ? チートすぎるでしょう」
(いやぁ守護神であるお前も十分チートだと俺は思うがな)

 怜は守護神が相手をチートという光景に心の中でつい突っ込んでしまった。しかし、記憶を司る能力の持ち主と戦うことを仮定すると仲間や作戦が必要だ。怜はまた黙り込み、記憶を消す能力についての対策を考え始めた。怜が黙り込むと豊姫はまた怜に聞くのが面倒になり、プカプカと頭から沈み、お風呂場から消えていった。
 豊姫がいなくなったことも気づかずに怜は記憶について考えた。

(記憶にもどうダメージを与えてくるかわからないとこっちも手の出しようがない。記憶を消すことや忘れさせる、新しい記憶を入れ込む、あるいは記憶を食べるかぁ。しかし、記憶を消す以外でもし残っていたとしたら自力で思い出せるものなのか。俺は最近葵ちゃんと守護霊として契約したばっかりだから、俺はあの少女と会ってないような気がするなぁ。こうなったら記憶が残ってるにかけるなら柚奈ちゃんしかいないな。出たら聞いてみるかー)

 怜はお風呂から出て、支度を済ますとリビングに向かい、柚奈に話しかけた。

「なぁ柚奈ちゃん。俺なりにあの狐の女の子について考えてみたんだけどさー」
「あぁそれでしたら豊ちゃんから聞きましたよ。お風呂が長いと思ったらそういうことでしたか」

 怜は豊姫を睨んだ。豊姫は知らんふりをして口笛を吹いた。

「まぁいいか。それで記憶についてだが、豊姫の言い分では一回あいつと一戦交えたみたいなこと言ってるけど、柚奈ちゃんはどうなの?」
「うーん、難しいですね。もし、そこの記憶をいじるとしたら私は直で食らってると思うので何か、思い出すきっかけがないと無理そうですね」
「そうかー、そうだよなぁもし、直で食らってるなら柚奈ちゃんの方が多く脳内にダメージを食らってるもんな~」
「とりあえず考えてみます」

 そういうと柚奈は落ち着くお風呂へと向かった。怜は何かヒントがないかテレビをつけて考えた。テレビでは動物の番組がやっていた。その日は狐特集で可愛い狐の映像から赤ちゃんの時までやっており、怜は狐の面を被った少女を思い浮かべながら何か関係があるか興味深く視聴した。
 狐を抱っこするなり有名人の人が次々に感想を言った。怜はどうでもいいと思いながらも狐についての情報に耳を傾けた。
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