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葵ちゃんと巻物の世界へご案内

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 怜がお弁当を食べ終わる頃、柚奈や葵、豊姫もシャワーを浴び終わった。
 柚奈は髪を乾かし、バスローブに着替えた。そしてお腹を空かせた柚奈はリビングにやってきた。

「あ、柚奈ちゃんお先ごちそうさま。じゃ次は俺が入るわ」
「えぇ、ですが、まさか守護霊も汗を掻くなんて思ってもいませんでした」
「そうなのか!? あいつらも汗掻いたんだな。まぁそれより俺も汗掻いてるから入ってくるわ」

 怜は食べ終わった弁当をゴミ箱に捨てると、シャワーを浴びに、お風呂場に向かった。
 柚奈はぐったりと椅子に座り、お弁当を食べ始めた。

「はぁー、今日は疲れました。お弁当が美味しいです。シャワーも気持ちよかったですが、なんであんなに守護霊は胸が大きいんですかね」
「なんじゃ柚奈一人か?」

 柚奈が独り言をぼそぼそ言っていると翔子がトイレから戻ってきた。
 柚奈はそれどころではなく、減った腹を満たすためにお弁当を食べていた。翔子に気づくともごもごしながら話し始めた。

「あ、師匠。怜なら今シャワーを浴びてますよ」
「ほぉそうかそうか。もう時期月影も戻ってくるじゃろ。それと怜から聞いたんじゃが、柚奈はどこか妙なところがあったんじゃな?」
「はい、廃校なんですが、多田さんというお爺ちゃんから聞いた情報なんですが……」

 柚奈は多田さんにしてもらった話を翔子に伝えた。
 翔子は腕を組み、考えた。

「うーん。なるほど。奇妙な出来事じゃな。よし良かろう。遠くて、あっちまで行くのは面倒だったのじゃが、今日は修行の後、深夜にみんなで行くとするかの」
「ありがとうございます。師匠」

 翔子は今夜廃校に行くことを伝えると丁度そこに怜がシャワーを浴び終え、リビングに戻ってきた。

「ふぅー。いやー気持ちよかった」
「先輩。今日修行が終わったらみんなで深夜廃校に行くことになりました。久しぶりの学校よかったですね」
「本当か!? いやー何年ぶりだろうか。中まで入れたらベストなんだけどな~。楽しみだな」
「おいおい。気を抜くでない。今からわしの修行じゃ。わしの修行を受けて、深夜まで元気でいれるかの。早速修行じゃ、二人はわしから道着を貸す、それに着替えてまたここにくるのじゃ」

 怜と柚奈はそれぞれ翔子から道着をもらうと自分の部屋に行き、着替えた。

「へー、意外と道着って着やすいし、動きやすいなぁ。なんていうか普段の服とかジャージに比べてさらに動きやすいし、着心地がいい。よし、行くか」

 怜は道着の紐をきつく締めると、気合を入れ、翔子の元に向かった。
 リビングには柚奈がもういた。怜は柚奈の道着姿を見て、興奮した。ちなみに柚奈も怜も同じ色で白の紐は黒だった。

「お、柚奈ちゃん似合ってるね」
「お世辞はいいです。早く修行をしに行きますよ」
「行くってどこに? この辺でやったら一般の人にも見られちゃうし、家の中は狭すぎだし、いったいどこまで行くんだ!?」
「ほほ。そのためにわしがお主らを修行の地へと連れて行こう。さぁ怜見るが良い」

 翔子は胸ポケットから何やら黒い巻物を取り出した。そして巻物を広げ、床に引いた。そして翔子が巻物に手を当て、霊力を送った。すると巻物は紫色に光だし、巻物の表面は水になった。

「準備完了じゃ。今からこの巻物の中に入ってもらうのじゃ。その後のことは秘密じゃ。とりあえず、その中に入ってみよ。まずは経験者である柚奈よ。入ってみよ」
「わかりました。豊ちゃん行きますよ」

 柚奈は豊姫を連れ、一緒に水の中にジャンプし、足からジャポンと水の中に入っていった。柚奈の姿は一瞬で見えなくなった。
 翔子は怜を見て声をかけた。

「こんな感じじゃ。水の中を普通に飛び込めばいいのじゃ。最初は柚奈も怖がってたけど、水の中に入ったらすぐに慣れたから大丈夫じゃ」
「お、おう。じゃ行くか。葵ちゃん、行くぞ」
「う、うん! 葵頑張る」

 葵は怜の腕に捕まり、一緒に水の中に飛び込んだ。
 ぶくぶくと怜は息ができないような気がしたが、勇気を振り絞り、目を開けるとそこは水の滑り台のようだった。周りは太陽の光で、草木が生えており、たくさんの島々が見えた。高速で水中を移動し、怜は手を広げると水は飛び、美しい水しぶきが上がった。
 感動して周りを見ているとあっという間に、とある島に着いた。
 怜は水の滑り台から降りると、島の草原で柚奈が準備体操をしていた。
 怜は近寄り、柚奈に話けけた。

「おーい、柚奈ちゃん。ここすげぇな。俺感動しちゃったよ」
「あ、先輩。周りの風景に感動するのはいいのですが、今のうちに準備体操をした方がいいですよ」

 柚奈の話を聞かずに怜は、草原を子供のように走り回っていた。
 柚奈は呆れ、後で辛い目にあっても知らないと思った。
 翔子も水の滑り台から降りてくると、首にぶら下がってる笛をピーと鳴らした。
 集合の合図に柚奈と怜が、翔子の元に駆け寄った。

「よし、今から修行を行う。その前に怜は初めてだから、この島というかこの世界の説明をしよう。ここはわしの『巻物の世界』じゃ。ここは好きに扱って良いのじゃ、技を使って島を丸ごと壊しても、海を枯らしてもこの世界は、時間が経てば治る謂わば、特訓をする世界じゃ。だから容赦なく使い込んでいいのじゃ」
「ほへ~この島丸ごととか、すごいなぁ」
「感心しとる場合はないぞ怜よ。早速じゃが一日目の課題を発表する。怜! 柚奈! お主らにはまず、守護霊なしでこの人形を倒してもらう」

 翔子は手元の電子版で何かを押すと、翔子の隣に木製の翔子に似た人形が現れた。
 怜はいきなり出てきた木製の人形に驚いた。
 柚奈は冷静にその人形を見た。

「これはわしの複製人形じゃ。わしほどの力は持ってないのじゃが、学習機能が搭載されているため。レベルが上がるたび、強くなるし、倒しづらくなる。お主らは協力してこの人形のレベル二十を倒すことじゃ。レベルは最大で三十じゃ。頑張るのじゃ。そして守護霊たちには座禅じゃ、怜たちが終わるまで水玉の上で座禅をし、集中力を高めるのじゃ」
「はい!」

 人間グループと守護霊グループに別れ、それぞれ、翔子の特訓が始まった。
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