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葵ちゃんとゴミ拾いスタート

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 春ではあるが、朝の寒い気温に怜はジャンバーを着て、寒さを耐えていた。そう怜は暑がりで、寒がりの引きこもり系の肌だった。
 寒がる怜に葵は疑問に思い、声をかけた。

「ねぇねぇ、なんで怜はそんな寒がってるの? 今の季節は春でしょ? 柚奈ちゃんはそんな厚着してないよー」
「うるせぇな。お前ら幽霊はいいよな。寒さとか暑さとかに困らなくていいしね。柚奈ちゃんは俺とは違ってガッチリしてるからなぁ」
「先輩。ガッチリとはどうゆう意味ですか? 答えようによっては先輩は今から海に溺れますからね」

 柚奈は怜に言われた人ことに頭にカチンと来て、振り向き、ニヤリを笑いっていた。しかし、その笑顔に裏には禍々しいオーラを感じた。
 怜はこんな寒いの柚奈の技をくらうわけにもいかないと思い。全力で謝った。

「いやいやごめんな柚奈ちゃんそんな女性としてガッチリというか。守護霊使いとしてここまでやってきたからこそ、寒さにも負けずって感じの意味なんだ。勘違いさせてすまないな」
「それならいいですよ。先輩」

 柚奈の怒りは収まり、一瞬凍りついた空気だったが、怜が謝ることによって、普通に戻った。
 歩くこと十分。
 怜たちは学校の隣の公民館にやっと辿り着いた。そこには怜たちと同じ年代の人達の姿はなく、怜たち以外はお年寄りが気合を入れて準備をしていた。
 月影は老人たちにゴミ袋や軍手を配っていた。
 怜たちは月影を見つけると、月影の元にいった。

「なぁ月……じゃなくて先生。学生は俺たちだけですか?」
「あ、おはようございます。怜くん。そうだね、学生の参加枠は怜くんと柚奈さんだけですね」

 柚奈は怜に近づき、耳元で声をかけた。

「だって先輩。学校休めるのはメリットとしていいですが、授業を無駄にしてもここに来る生徒はいないですよ。多分先生は参加する生徒がいなかったから私たちを誘ったんですよ」
「はぁ!? なんだよそれ!? ただの人数確保じゃねぇか」

 怜たちはまんまと月影の罠にはまってしまったが、これも修行のためと自分に言い聞かせて、ゴミ拾いの準備を始めた。
 葵と豊姫はくるりんと一回転し、ゴミ拾いをする格好に一瞬で着替えた。
 葵はゴミ拾いの内容がわからなかったため。異様に張り切っていた。

「よーし。葵頑張るぞ」
「へいへい。精々俺の分もよろしく」
「先輩。サボりはダメですよ」
「お、おう」

 葵に任せようとする怜に対し、柚奈は腰に手を当て、口を膨らませて怜を注意した。
 ついその表情が可愛いと思った怜は、少し顔を赤くし、照れた。
 準備を始めて数分後、月影がマイクを持ってみんなの前に立った。

「えー、皆様おはようございます。今回は皆様のご参加とても感謝しております。ここの地域ではポイ捨てなどが多く、近年悩み続けてきた問題です。毎年ではありますが、皆様のお力をお借りして、今回もこの一ヶ月を使ってこの街を綺麗にしていきましょう」
「おー!」

 月影が前に出て、話し始め、意気込みをいうと、お年寄りたちは腕をあげ、張り切っていた。

「では、先に渡していました、紙をご覧いただき、皆様それぞれ担当のところの掃除をよろしくお願いします。ではこれで、話を終わりにします。皆様くれぐれもお体に気をつけてください」

 月影の話が終わると、みんな動き出し、それぞれ担当の地域に向かった。
 怜たちも月影から渡されていた紙を見た。

「えーと。俺たちは廃校があるところだな」
「廃墟って?」

 葵が不思議そうに首を傾げ、怜に聞いた。

「俺らが行く学校は何年か前にスーパーの近くにも学校があって、そこと合併することになってあそこが廃校になったんだよ。要するに、生徒の人数が少ないから合併して、こっちの学校には誰もいないし、使わないからそのまま古くなったって感じ。管理してる人もいないとは聞いたけど、中々解体工事が始まらないなぁって見てたぜ」
「ほうほう。なるほど。じゃそこに幽霊が出たりとかは?」
「あぁトイレの花子さんとか夜な夜な動く人体模型とかな。懐かしいな、小学生のとき本で読んだことがあるわ。でも、こんなに霊感がある俺ですら見なかったんだ。幽霊がいずらい場所だったのかもな」

 葵の率直な疑問に怜は懐かしいと思い、幽霊に出くわす体験がなかったので、その廃校には悪霊はいないと怜は断言した。
 葵と話していると、柚奈が準備が終わり、声を掛けてきた。

「先輩。行きますよ。目的地まで五分くらいでしょうか。かかるので早く行きましょう」
「お、おう。あ、ちょっと待って、今からゴミ袋もらってくるから」

 怜は月影の元に行き、ゴミ袋をもらいにいった。

「先生。俺にもゴミ袋くれ」

 月影は怜をひき、耳元で囁いた。

「怜くん。くれぐれも無茶はなさらないでください。何か異変を感じましたらまた夜。お聞かせください」
「わ、わかりました」

 急に引っ張れた怜は驚いたが、月影から香る甘いアロマの匂いがすうっと鼻に入ると、少し興奮した。
 月影は先生の声ではなく月影の声で怜に注意した。

「んじゃ。先生いってくるわ」
「いってらっしゃーい」

 手を振る怜に対し、月影はどこか心配をしていた。
 怜はゴミ袋をもらうと柚奈たちのところに戻り、早速、目的地に向かった。目的地には怜と柚奈の他にお年寄りのお婆ちゃん二人とお爺ちゃん二人、計六人のグループで目的地に向かった。
 お年寄りの歩くペースは遅く、平日の青々しい空の下でお年寄りたちは世間話などをして歩いていた。
 怜や柚奈はお年寄りに気を使い、歩くペースに合わせ、ゆっくり歩いた。
 お年寄りの話題は怜と柚奈のことになった。

「あなた達は学生さんかい?」
「はい、そうです」
「えらいねぇ~。学生さんなのにこんな早くからねぇ。私たち年寄りじゃいつまでも終わらないから、若い者がいてくれると助かるね」
「そうですか! 俺、頑張ります」

 怜はお婆ちゃんに対し、笑顔で接し、ゴミ拾いのモチベーションが上がってきた。
 だが話題は思わぬ方向へいった。

「そういえば、学生さんはお二人だけなんじゃよな? そしたら恋人同士かね」

 思わぬ質問に怜と柚奈は固まってしまった。怜はどう返したらいいいのか頭をフル回転させて考えた。対する柚奈は顔を真っ赤にし、頭の中は真っ白になった。

「い、嫌。俺たち恋人同士ではないんですよーあはは」
「そうなのか? でもお二人さんとてもお似合いじゃな」
「一層の事、付き合ってみればよかろう」
「んだんだ。早く結婚して子供産んで、この街の活性化させて欲しいの」

 お年寄りによる、二人の結婚や子供に期待を持ち、会話はとても盛り上がった。
 怜と柚奈はお年寄りからの言葉の圧力に負け、どうしていいかわからなかった。正確にはもう何をいってもダメだと思ったのだった。
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