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葵ちゃんと修行のお知らせ

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 豊姫はなんだかお年玉を貰えて喜ぶ子供のように、嬉しそうな表情を浮かべて、怜と柚奈の元に行った。
 リビングに向かうと丁度2人が皿洗いを終えた後だった。そこに葵もいた。
 豊姫がニコニコしながら話しかけた。

「ねぇねぇ。2人とも。大ニュースだよ!」
「大ニュース?」

 2人はニコニコと笑みを浮かべながら話す豊姫にちょっと怪しがりながら、目を細くし、聞き返した。

「そうそう。明日はなんと2人とも学校を休んでもらいます」
「えぇ!? 学校休まなきゃいけないのー?」
「それは困りますね。そんな大事なニュースなんですか」

 怜は単位を気にして、あんまり学校を休むのが気になった。もちろん柚奈も単位のことを気にしたが、自分の守護霊が大ニュースまで言うのであったら、何かあると思い、考えた。
 そんな2人の気も知らずに豊姫は次の瞬間、何をするのかを発表した。

「そ・れ・わなんと! 2人には明日、朝から翔子さんの修行を受けてもらいまーす」
「え!? なに!? 修行だと。うーん。もちろん修行は嬉しいけどさ~、休んでまでやることか」
「私も先輩と同じ意見です。そんなこと休みにでもやれば……は!? ま、まさかそういうことですか」

 修行と聞いて怜は何も事情を知らない怜はあまり乗り気ではなかったが、対する柚奈は何かを察した。柚奈が察したことに豊姫も喜んだが、状況的には悪い方に進んでいるのだ。

「おいおい柚奈ちゃん。そのそういうことってなんのことなんだ? 俺はさっぱりわからんよ」
「先輩には師匠からと月影さんから言われていた組織がありますよね」
「あぁGCRだっけ? まさかそいつらがもう襲ってくるのか」
「まぁそれに近いと思いますが、リリィがきた時点んで先手は取られていたんですよ。そこで私たちの足取りも捕まるのが時間次第なので、今のうちに鍛えるってことですね。しかし、そんなところまで来ているんですね」

 柚奈はもうそこまで、GCRの影が来ていると思い、不安になった。柚奈の話を聞いた怜は緊張し、拳を強く握りしめた。
 葵はなんの話かわからず、ぼーっと話を聞いていた。
 静けさが漂う空気にカチカチと時計の針が動く、音が鳴り響いた。そこに豊姫が優しい声で話しかけた。

「柚ちゃん。焦らなくていいんだよって言ったら、そんな無責任なって思うけど、今は月影や翔子ちゃんが頑張って私たちの姿を消してくれているんだ。焦りは最大の罠ともいうし、一歩一歩頑張って鍛えよう」
「と、豊ちゃん。ありがとうございます。こうなったら師匠達の頑張りを無駄にするわけには行きません。とりあえず今は私たちのレベルや経験値をなるべく稼ぎましょう」
「って言っても学校休むのはなぁ。せめてなんか裏技見たなもん使えないのー?」

 柚奈の気が晴れたことで、怜や柚奈のやる気は上がったが、やはり怜は学校を休むのが苦らしい。そこで学校が苦手な怜はなんとかズル休みできるか豊姫に頼み込んだ。
 豊姫は腕を腰にあて、偉そうに話した。

「ふん! 任せなさい。学校問題は月影に頼んでいるのだよ」
「お! さっすが守護神だぜ。んで、どんな裏技んだ」
「聞いて驚け、柚ちゃんと怜くんには明日学校は、公欠扱いされるのだ。その理由は地域のボランティアなのだ。もちろん本当だから頑張ってね」
「はぁ!? 面倒臭いゴミ拾いしなきゃいけねーのかよ」
「仕方ないですね。それで学校を半日休めるので、やるしかないですね」
「まぁまぁしかも怜くんや柚ちゃんには敵の居場所を探ってもらうからよろしく。でもいないと思うけど。どこか怪しい場所とかあったら教えてねー」

 怜は地域のゴミ拾いに強制参加させられ、学校を休めるのがラッキーなのかわからなくなった。気を落とす怜に対し、柚奈は目を燃やしやる気がガンガン燃え上がってきた。
 葵は明日自分が修行することも知らずにチャンネルをまわし、可愛い動物の番組を見た。
 そこへ翔子と月影がリビングに入ってきた。

「柚奈さん怜さん。豊姫さんから内容は聞いたようですね。明日は私も先生として同行するのでよろしくお願いします。明日は制服で朝7時に学校の隣にある公民館に集合してください。だいたい時間としては3時間を目安にしているらしいので、よろしくお願いします」
「はぁ!? 3時間も地域の掃除すんのー!?」
「怜よ日頃お世話になっているこの地に感謝して恩返しする番じゃ。バチは当たらんし、これも修行だと思ってやるのじゃ」
「よーし! こうなったら意地でも怪しい場所見つけてやるからな。あぁそれと葵ちゃんも参加だからな」

 ふと怜は動物番組を見て癒されて、油断している葵に言葉を突き刺すようにボランティアへの強制参加を命じた。
 葵は油断も何も自分には関係ない話だろうと思っていたので、体がビクッと驚き、反応した。
 すると柚奈も悪知恵を働かせ、その場を抜け出そうとした豊姫に向かって話した。

「そうですね。もちろん豊ちゃんにも参加してもらいますよ」
「えへ、いいよ柚ちゃん私は忙しいからさー」
「参加しなかったら豊ちゃんの昼ごはん抜きですからね」
「えぇ!? 柚ちゃん厳しいよー」

 話は進み、2人の守護霊も参加することになった。豊姫は怜同様に面倒臭がっていたが、地域の掃除について何も知らない葵は明日何をするか、遠足にいく子供のように楽しみにしていた。
 ふとテレビに猫が映ると、翔子の体は反射的にテレビの前に移動し、猫に釘付けだった。
 眠くなった月影はあくびを手で隠し、目をこすった。

「翔子様。申し訳ありませんが、私はここまでが限界です。ではまた失礼します」
「ほほー。やはり猫は可愛いのぉ。この番組は欠かさず録画してるからまた見るとするかの」

 テレビの中の猫に釘付けの翔子はもう誰の言葉も耳に入ってこないのだ。
 それを見た怜は、少し引き、異常なほどの猫好きだという印象が頭にインプットされた。
 話が終わると柚奈はお風呂へと向かった。ドアを開ける時、怜の顔を睨み、警告した。

「先輩。わかってますよね? 今回は許しませんからね。一応釘を刺しときますからね」
「それは柚ちゃんフリってことかな?」

 冗談で言う怜に対し、柚奈は鬼の形相で怜を再度睨み、拳を構えた。

「いえいえとんでもない柚奈ちゃんいや、柚奈様。絶対に気をつけます」

 怜は全力で謝ると柚奈はドアを開け、お風呂場へと向かった。
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