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葵ちゃんど直球な質問をする

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 みんな夜ご飯を食べ終わり、腹を膨らませてソファや床で寝ていた。柚奈は1人で食器を洗っていながら、豚を見るような視線で話した。

「みなさん、食べた後にすぐ横になると豚になりますよ。師匠はこっち手伝ってください」
「柚奈よ。わしは疲れたのじゃ少しくらい休ませてくれ。怜よお前の出番じゃ」
「あぁ! なすりつけやがったこのニャンコ野郎! まぁ柚奈ちゃんに全部押し付けるのは良くないな。よし手伝うぞ」

 怜と柚奈は肩を並べ、一緒に食器を洗った。柚奈が食器を洗い、怜が食器を拭き、棚に戻した。
 その様子を見ていた豊姫はにやけながら言った。

「ねぇねぇ。なんか怜と柚奈肩並べて立ってるとカップルというか夫婦だな。いやー2人ともお似合いだよ」
「もう豊ちゃん。変なこと言わないでください。そうやって横になってると豚の幽霊になりますよ」
「ざんねーん。守護霊は豚にはなりませーん。豚のやつはいても私は豚になりませーん」

 柚奈と豊姫の言い争いが始まったが、これは日常茶飯事だった。なので周りは笑って流した。しかし、厄介なのは飛び火だ。関係ないとは言い切れないが、その会話に無理やり入らされることだ。
 柚奈は怜の方をじろっと見た。

「先輩も何か行ってください。先輩だって豊ちゃんに言われているんですからね」
「あ!? 俺? うーん。まぁ楽しい」
「え!?」

 周りは一瞬で静かになった。怜は間違った回答をしたのかと焦り、周りをキョロキョロした。
 楽しいと言われた柚奈はどういう感情か分からず、誤解し顔を赤くした。誤魔化すように食器を洗い始めた。
 葵が立ち上がり、怜に質問した。

「怜。それはどういう意味? 今の流れから楽しいは、葵分からない。でも怜が柚奈のことが好きなら辻褄があうね」

 葵はニコッと笑いながら話すと、さらに周りを静まり返した。怜は葵に言われ、顔を赤くし、何とか説明しようとした。

「ち、違うんだ葵ちゃん。お、俺はただこのやりとりとかこの雰囲気が楽しいから楽しいって言ったんだ。だ、だからつまりそこから俺が柚奈が好きとは繋がらないんだよ。ふー、これでわかってくれたかな」
「じゃ怜は柚奈のこと嫌いなの?」

 上手く説明はできたが、こうど直球に聞かれると怜と柚奈はさらに顔を赤くした。柚奈は心臓のドキドキが大きくなっていった。怜はまたプレッシャーがかかり、どう答えるか考えた。

(まずいまずい。葵ちゃん。お前は何でこう素直なんだ。素直すぎて可愛いが、そうくると俺はどう答えるかによっては責任重大なんだよな。:全否定して、柚奈のことを遠ざけると絶対あいつは拗ねるし、肯定というか好きって言葉を出すともちろんそういう雰囲気になっちゃうし、もうどうすればいいんだよぉ。柚奈を傷つけないようにそして好きとも言わない、この空気を乗り切るにはどうすれば。考えるんだ怜、お前にはできる。よし、やってやるぞ)

 怜は決心を固め、葵の方を向き、口を開け話し始めた。周りはシーンとしており、発表会のスピーチみたいだった。

「まぁ葵ちゃん。柚奈とは知り合ってそんなに経ってないし、今は友達同士なんだ。そんでもって友達として遊んだりこうやって話していくともちろん、楽しい雰囲気ができるわけだ。そこでさっきのやりとりで、友達とのやりとりが楽しいと思い、言ったんだ。好きとかそういう感情はなく、別の楽しいポカポカする気持ちがあったんだ。そうそれだけさ」
「へぇー、そうなんだ葵もうお腹いっぱいだし、今日は疲れたし先寝るねー」

 怜は勝ち誇った顔でガッツポーズを小さくした。言った張本人はどうでもいいと思い、寝てしまった。横で聞いていた柚奈はすっと緊張していたが、何だか馬鹿馬鹿しいと思い始め、食器を洗いながら、クスリと笑った。
 食器洗いが終わり、怜はソファに座り、今日のリリィのことについて翔子に質問した。

「なぁニャンコ師匠。今日のあいつリリィの事なんだけどさ。あいつってえーと……まぁ、とにかくあいつらの狙いは何だったんだ? 昨日言ってた復讐か」
「分からない。じゃがそれに繋がる行為はしに来てたじゃろ」
「繋がる行為?」

 怜は首を傾げ、リリィが何をしに来たのかを考えた。翔子は怜が自分で答えを見つけ出すことを信じて、お茶を飲んだ。

「あー、そういやリリィ。気色悪いやつだから聞かないようにしてたけどあいつ俺らの魂とか心臓とか何やら言ってたな」
「そうじゃ。奴らの狙いはわしらの魂じゃ。だが最終的にわしらが勝利に終わった。最後に来たやつも仲間の1人かもしれんが、仲間同士で競い合っているのか仲は良くなさそうじゃったな」
「あぁ、あの男だけは許せねぇ。リリィが俺らを殺しに来た敵なのかも知れねぇけどよ、仲間をあんな風に扱うやつはクズだ。次あったらぶっ飛ばす」

 怜はあのドラゴンの少年と会った時を思い出し、頭に血が伸びった。翔子も頷きながらまったりお茶を飲んだ。怜が戦った中で不思議なことについて質問した。

「なぁそれとリリィは魔法少女? だっけとか最後の方はゾンビの能力を使ってきたろ、それって現実に存在しないのに何で使えたんだ?」
「うーん。難しいの。奴らの存在を探るにも慎重すぎてなかなか足が掴めんのじゃ。わしの予測になってしまうが、もちろん魔法少女やゾンビはこの世に存在せず、幽霊の中にもいない。だからこそ誰かが作り出したとしか考えられないのじゃ」
「つ、作り出した!? 守護霊を作れるのか?」

 怜は両手をテーブルにつき、翔子に顔を近づけ、驚いた。怜の目はどこか期待をしていたのだ。いつか自分が最強の守護霊使いになれると思っていた。翔子は怜の顔を押し、椅子に座らせた。

「落ち着くのじゃ。作れると言っても、そんなのただの予想だし、わしにも作れない。ただ守護霊を作り出すなんて飛んだ罰当たりだとわしは思うね。怜には悪いが、魂が抜けて幽霊になってその清い魂が誰かを守りたいと守護霊になるんじゃ。それを人が汚い手で合体やら融合で作り出すなんて、その幽霊の魂が可愛いそうだよ」
「そ、そうだよな。守護霊を作り出すなんて、俺も反対だ」

 怜は期待を失い、少しショックだった。まだ翔子の話は終わらなかった。

「まぁあとこれからは用心するんじゃぞ。もう敵に見つかっておるんじゃ。ただでさえ、あの少年には見られたまま逃してしまった。奴らはしぶといと思う。だからくれぐれも無闇に外を出歩かないことじゃな」
「あぁわかった。気をつける」

 怜はリリィの守護霊のことについて不思議なことがたくさんあったが、少し解決できて、スッキリする怜で会った。
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