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学校ゲーム

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 リリィは白目を向いたまま、ピクリとも動く気配も無く倒れた。
 しかし、そこに禍々しいオーラが近付く気配を3人は察知した。リリィを倒し、安心したように思えたが、ピリついた空間の中3人は緊張とともに辺りを見張った。
 息を飲んだ瞬間。物凄い速さでそいつはリリィの目の前に立った。
 そこには少年がいた。少年は高校生くらいの見た目で、ドラゴンのような硬く真っ赤な鱗を纏わせた翼を広げていた。後ろの腰からは太く赤い尻尾を出し、垂らしていた。赤髪で短髪、そして目は赤く、左目の上から下にかけて大きな火傷があり、左目は眼帯をしていた。服装は高校のYシャツに黒いズボンで学生のような格好だった。
 少年はポケットに手を入れ、下を向き、リリィのやられた姿を見るとため息をついた。ため息をつくと少年の口からは炎がバチバチとでた。
 怜が銃を構え、声を荒げて質問した。

「おい! そこのお前。なぜ俺と一緒の高校の学生服を着てやがる。お前は敵なのか?」
「あぁん? お前にはようはねぇよ。俺はこいつの回収だ。ったく、あれだけの自信がこれとは笑わせてくれる。みっともねぇ姿だ」

 少年はリリィを死んだ虫を見るように見下し、右足でリリィの腹を踏み、揺さぶった。
 怜は頭に血が上り、少年に声を荒げた。

「おい! 足をどかせ! お前の仲間じゃないのか。どかさないと撃つぞ! それでもお前人間か」
「はぁ? だからさ、てめぇには関係ねぇだろ。こいつはお前たちを殺そうとしたんだぜ。ならお前からしたら俺がこいつをどうこうしようと勝手だろ? 早く失せろや」
「がはっ、ゔ……ゔぅ」

 少年が右足で荒く揺さぶるとリリィは両腕がなく致命傷だが、咳をし、まだ生きていた。

「なーんだ。まだ生きてんのかよ。死に損ないが、まぁ連れて帰るか」

 少年がポケットから右手を出し、リリィの胸ぐらを掴み、持ち上げた。
 怜は歯を食いしばり、早くあの少年の顔をぐちゃぐちゃにしたくなるような怒りがこみ上げ、限度を超えてしまった。怜は少年の頭を狙い、何もためらわず引き金を引き、発砲した。
 銃弾は怜の怒りを乗せ、少年の頭目掛け真っ直ぐ飛んでいった。しかし、銃弾は少年の真っ赤な翼で軽く払われてしまった。
 少年はガンつけるような鬼の形相で怜を睨んだ。

「なぁお前、命知らずにもほどがあるな。死にてぇのか。雑魚が! 今回は荷物があるから見逃してやるけどよ。次あったら瞬殺だから」

 少年はリリィをお姫様抱っこし、真っ赤な翼で空高く舞い上がっていった。
 3人は気が抜け、空を見上げて寝っ転がった。

「もう先輩は無茶なことをするんですから」
「だってあんなの、見て見ぬ振りできないんだよ」
「まぁそれも怜のいいところじゃな」

 3人は円になるように横になり、夕方の沈む太陽の色に染まる雲を見て楽しく話した。
 守護霊たちはそれぞれ元に戻り、人魂になって眠っていた。
 怜は大声で何かを思い出したように驚いた。

「あぁ! そういや俺たち昼飯食べてないじゃん!」
「そうじゃの。でも今からじゃと夜ご飯になるの~」
「ではそろそろ帰りますか」

 怜は後ろの方に投げ捨てられてあったスーパーの袋を持ちった。柚奈と翔子はそれぞれ人魂化した守護霊たちを抱きしめるように優しくもち、3人で仲良く家に向かった。
 途中怜が初めて見た翔子の守護霊について話を聞いた。

「そういや~ロリ忍者の守護霊初めて見たわ。結構可愛いかったな」
「よしておけ奴はカラスじゃぞ? 平日は人化して高校の先生をさせておるのじゃ。それと命を救ったのじゃ。そろそろそのロリ忍者はやめるのじゃ」
「えぇ! 呼び方変えなきゃいけないの。面倒くさいなぁ。なぁ柚奈ちゃんいいニックネームある?」

 怜は柚奈に助けを求めると柚奈は腕を組んで考えた。そして数分が経ち、柚奈が手をポンと叩き考えついた。

「お! 柚奈ちゃんいい名前考えたか?」
「はい、師匠にとっても似合う名前を考えました。その名は『ニャンコ師匠』です」

 柚奈が自信満々で指を立て答えた。名前の由来は翔子がネコ好きだかららしい。
 翔子もその名前が気に入り、にやけた。

「よし! わかった。これからはニャンコ師匠と呼ぼう。一応守護霊のことに関してはたくさん学ぶと思うからまぁ師匠くらいはつけるか」
「うむうむ。怜も一歩大人になっていったの」
「ニャンコ師匠の場合は身長は大人じゃないけどな」

 会話が和んできた時に怜は翔子へのツッコミでつい身長いじりをしてしまった。凍りついた空気が完成し、怜は冷凍庫の中にいるような気持ちだった、翔子は怜の顔をジロリと睨み、言った。

「柚奈よ。今日の怜の飯は抜きじゃ」
「そんなーニャンコ師匠! 勘弁してくれよ。もう絶対言わない! 誓います。神様仏様ニャンコ師匠様! お願いします」

 怜は夕飯がなくなるのを阻止すべく、翔子の前に瞬間移動し、光の速さで土下座をした。翔子は笑いながら許してくれたが、果たしてその目の奥は本当に笑っていたのかは、誰も知らなかった。
 家につくと、エレベーターの流れは誰も口を開けることなく終わり、中でも誰も口を開く者はいなかった。
 そして待ちに待った夕飯の時間がきた。柚奈はお昼に作れなかったオムライスをカレーと組み合わせオムライスカレーを作ることにした。
 柚奈と翔子は早速準備に取り掛かった。

「師匠。お湯をお願いします」
「わかったのじゃ」

 柚奈は黙々と野菜を切っていった。それはまるでホテルのシェフ以上の速さと美しさだった。切られた野菜たちは新鮮な光を輝かせていた。
 翔子は鍋にお湯を入れ、沸かし、フライパンの準備もした。
 柚奈の家庭力が神級だったのでオムライスカレーはあっという間にできた。
 全員守護霊たちも宝石を見るように目を輝かせてオムライスカレーを頬張った。

 同時刻、とある廃校ではゲームが始まろうとしていた。

「オブリド様。リリィの回収に成功した。状態は両腕破損、能力低下、意識あり、生存可能時間10分ってところだ。さぁどうする」
「わかった。とりあえず状態だな。どの程度によるな」

 オブリドは本の山からジャンプし、下に降りた。そして少年同様、見下すようにボロボロになったリリィを見た。そしてニヤリと笑い、何かを思いついたのか、手のひらをリリィに向け回復を施した。
 リリィは起き上がり、泣きながらオブリドの目を見て感謝した。

「あぁオブリド様。こんなゴミムシのようなリリィを助けていただき感謝いたします。この命尽きるまでこのリリィはオブリド様のために尽くします」

 リリィは感謝を終えると両腕をゾンビの力で蘇生させた。
 オブリドはリリィの手を優しく握り、こう言った。

「じゃリリィ。私のために……『学校ゲーム処刑からの脱出不可』をやってくれ」

 リリィの顔は一瞬で真っ青になり、叫んだ。

「いやぁー! ヤダヤダ! そんなオブリド様! リリィをリリィをこれからも愛してくださらないんですか? そんなリリィがあのゲームを……いやぁー」
「いやいや。私愛してるからこそリリィがゲームをやってる姿が見たいんだ。リリィ、さようなら」

 オブリドはリリィの手を逃さないように強く握りしめた。そしてオブリドは左手で何かのスイッチを押した。スイッチが押されると図書室のドアが開き、そこには人を握れるくらい大きな鉄の手が開いて待っていた。鉄の手は一瞬でリリィを捕まえ、どこかへと連れて行った。
 オブリドはジャンプしまた本の山に座った。本の山からリモコンを見つけ、ボタンを押した。すると本棚の上にあるテレビが映し出されそこにはリリィが写っていた。
 リリィはどこかの廊下を走っていた。必死に走り、右手に包丁を持つ人体模型から逃げていた。

(やだよやだよ。等々あのゲームが始まってしまった。この学校にあるものは全てオブリド様の物。だからリリィの攻撃程度では壊せないし、倒せない。でも、リリィはきっとゴールがあると信じる。愛するオブリド様のために)

 リリィは涙を拭きながら廊下を必死に走っていた。回復はしてもらったが、歩く程度が限界なくらいの回復だったので、傷も体力もなく、リリィは死にものぐるいでとにかく走った。廊下は永遠に続き逃げても逃げても人体模型は追ってきた。
 リリィは階段を登り2階に上がってきた。しかし、人体模型も追ってきた。息を切らしながら走る中2階の廊下は壁からナイフが数百本飛んできた。不意にリリィはくらいさらに傷を大きくした。

「はぁ……はぁ。足が痛い息がきつい、死にたくない死にたくない。あぁ! また階段だ。次は3階だ」

 リリィは希望を噛み締め階段を全力で走り上がった。まだ廊下は続いたが、諦めず進んだ。しかし、追いついた人体模型が包丁を刺してきた。左腕に刺され、リリィは痛みを堪え、人体模型を蹴飛ばして階段から突き落とした。すると2階からどんどん人体模型が上がってきた。ナイフを捨て、左腕を胃さえながら走った。

「あぁクソ! あんな数捕まったら命はないわね。次は4階絶対終わりのはず」

 リリィは血を垂らしながら走り続けた。3階の仕掛けは直進200メートルで、前からライフルが飛んできた。ライフルは10個あり、リリィの姿を感知すると自動で撃ってきた。リリィはボロボロの体だが、次の4階で終わりだと希望をもち、血に染まる覚悟をして走った。

「銃が何のことだ! リリィに銃弾何って聞かないんだよ」

 リリィは全速力で走るが、雨のように降り注ぐ銃弾は避けられず、リリィは体のいたるところに銃弾を食らった。
 しかし、ライフルの仕掛けの壁の横に何かを見つけた。リリィはあそこが4階への入り口だと確信し、笑顔で走り続けた。

「あった。あそこが4階。オブリド様に会える天国の階段だわ」

 銃弾をくらいリリィは階段へとやってきた。リリィは動こかなくてもおかしくない足を動かし、階段を上がった。後ろからする足音に焦りを感じていたが、リリィは扉を目指し上がった。

「あと4段あと3段あと2段あとラスト! これでリリィは救われ……」

 リリィは等々4階の扉に上がりついた。リリィは扉を引き、安堵した気持ちで開けた。
 扉の向こうにはオブリドの姿はなく、コンクリートで埋められ、行き止まりだった。
 絶望したリリィは叫びながら壁を叩いた。その後リリィは追ってきた数百体の人体模型に包丁でぐちゃぐちゃに惨殺された。
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