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魔法少女リリィは不敵な笑みを浮かべる

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 会計が終わり、怜は溢れるほど入ったレジ袋を両手に持ち、ダルそうにスーパーを出た。柚奈はレシートとメモを照らし合わせ、確認していた。葵はイラつきながら仕方なく、10円ガムを噛んでいた。

「おーい! 柚奈。少しは荷物持ってくれよ。いくら俺が男でもこんな量は重すぎる」
「はぁー、本当は先輩。あまり筋肉が無かったんですね。いいですよ。持ちますよ。ただし軽い方を持ちますよ」

 柚奈は2つ持ってもらうのは悪いと思い、渋々袋を持とうとしたが、溢れる量の袋はかなり重かった。袋は下に落ち、重量挙げの様に柚奈は袋を両手で持ち上げようとした。段々顔は赤くなり、鼻息も荒くなって来たが、全然袋は持ち上がらなかった。頑張る柚奈に怜は煽る様に言った。

「あれれー? 筋肉がないんですねって言った割に自分は全然だなー。柚奈ちゃん実は筋肉すら無いのかな? ハハハハ」

 怜が柚奈を見下しながら話すと柚奈は言い返せず、持ち上げることに集中した。イラついていた葵は、怜が柚奈を煽っているところを見て、気に食わず柚奈に近づいた。

「柚ちゃん! 葵も手伝うから大丈夫だよ。一緒に頑張ろう」
「えぇ! 葵ちゃん手伝ってくれるんですか。ありがとうございます」

 2人は力を合わせ、今にも溢れそうな袋を持ち上げようとした。せーのという掛け声に合わせ一気に力を入れると、袋は軽く持ち上がった。持ち上がると2人は笑顔でハイタッチをした。その後ろで怜は悔しそうに爪を噛んでいた。

「あぁ! ずるいぞ。2人なんて」
「先輩。それでも男ですか? そんなことばかりしてるから彼女ができないんですよ」
「葵もそう思う」

 怜は言い返せず、女子の圧倒的な勢いに負けてしまった。一方葵と柚奈は笑顔で袋を持ち、他愛もない話をしながら家に向かった。そんな3人の前に赤いジャージを着た少女が近づいてきた。怜は一瞬で気付き、心の中で妄想を膨らませていた。

(ウヒョー! 可愛い。誰だろうアイドルかなそれともモデルかな。いや~なんとも言えないあのピンク髪のツインテールは俺の心を一瞬で虜にしてしまうなぁ。しかもジャージってのがいいね。アイドルのオフって感じでリアルだなー。目もキラキラしてるし、まるで宝石の様だ。すぐにそのキラキラした瞳の中に吸い込まれそうだ」

 怜が頭の中でくだらない妄想をしていると葵はその表情を見て、どうせ変な妄想でもしているんだろうなと思い、ゴキブリを見る様な目で怜を見ていた。この2人とは違い柚奈は前から来る少女に警戒をしていた。

(何でしょうかあの女の子。只者じゃなさそうですね。どこか胸騒ぎがします。特にあのハート形の目には何か禍々しいものを感じます。とりあえず豊ちゃんを呼ぶ準備をしておきましょう)

 少しずつ近付いてくる少女に柚奈は段々その隠しきれない殺気を感知した。少女は狂気的な笑みを浮かべながら視線はまっすぐ柚奈の隣に向いていた。柚奈は冷や汗をかき、少女の視線の先に目を向けた。

(!? まずいです。今葵ちゃんは霊感がある人なら誰でも見える様になっています。もう多分私たちが守護霊使いだとバレているはず、まずいです。あの隠しきれていない殺気は悪霊使い。ここで私が止めなくちゃ)

 次の瞬間少女はポケットから黒い拳銃を出し、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ構えた。構えられた3人は同様し、その場で立ち止まった。

(先をつかれた!? 撃たれるまでに豊ちゃんは呼べない。先輩を守らなくちゃ)
「あなたの心臓いただきますっ」

 少女が口を開いたと同時に銃は発砲し、まっすぐ怜の心臓を撃ち抜く様に飛んでいった。怜は一歩も動けず、ただ弾が怜の元にくるのを阻めなかった。グチャッと柚奈の右腕を弾は貫通した。

「ヴゥ……はぁ…はぁ…」

 柚奈は、銃が発砲した瞬間右腕をとっさにだし、怜を庇ったのだ。赤黒い血を垂らしながら柚奈は豊姫を呼び出した。怜は驚き、不敵な笑みを浮かべる少女を見て、怖がり腰を抜かした。

「はーい柚ちゃん。緊急事態のようね。とりあえずあいつ。やっちまうか」
「そうですね豊ちゃん。あいつ倒して早くお昼ご飯にしましょう」

 豊姫は柚奈が銃で撃たれてしまった姿を見て、柚奈に傷をつけさせてしまったことを悔やみ起こっていた。柚奈自身は左腕一本で戦う覚悟をしたが、利き腕じゃない為、少し不安だった。少女は豊姫が来たことに気付き、舌なめずりをした。

「えへへ。守護霊使いは2人もいたんだ。リリィとても嬉しいわ。でもカラスのやつがいないからまぁハズレか。でもいいやぁー、君たちの心臓はリリィが美味しくいただくからさ」
「そうはさせないです。豊ちゃんいきますよ。師匠も豊ちゃんがいなくなったことに気付きもう時期来ます。先輩は葵ちゃんを連れて逃げてください」
「逃げるってどこにだよ。とりあえず俺も戦う。なぁ葵ちゃん行くぞ」

 柚奈は怜の言葉を無視し、リリィに向かって走り出した。リリィは構えていた拳銃を連発した。何発も発砲する拳銃に柚奈は素早く避けた。まるでそれは弾が飛んできたときに海の波が渦を巻く様だった。弾が全然当たらないリリィはイラつき、後ろに下がりもう一丁拳銃を取り出した。

「1個がダメなら2個で貴方の心臓を貫きます。あぁ~、早く食べたい貴方の血に染まった美しい心臓を……」
「先輩以上の変態っぷりですね。豊ちゃんそろそろいきますよ」

 バンバン! と二丁の拳銃が発砲された。それぞれの弾は柚奈を捉え飛んでいった。確実に当たったと思ったリリィは不敵な笑みを浮かべ、アスファルトが血に染まるのを待った。しかし、次の瞬間弾は金属の様なものに当たり弾かれてしまった。リリィは柚奈の手元を見ると左手に数珠を巻き、青い刀を持っていた。その刀は海の様に鮮やかな青色で、太陽に照らされると宝石の様に青々しく輝いた。

「私の宝刀『絶海の刀アメジストソード』です。私はこの刀で貴方の悪霊を切ります」
「ふーん。バレているなら仕方ないわ。貴方がその気ならリリィも本気を出さないとね。来い。私の悪霊『魔法少女』」

 リリィが合図を出すと背後からピンクの魔法少女っぽい霊が現れた。霊の顔は黒くなっており、見えなかった。次の瞬間リリィは手を挙げ変身した。

「リリィ! 変身しまーす。悪い悪い貴方を退治に魔法少女に変身変身。悪い貴方の心臓がぶり。見る見るうちに周りは血の海~。パンパカパーン魔法少女リリィ登場ー」

 リリィが変身の歌を歌うと、リリィの姿はジャージから魔法少女っぽいピンクに包まれた姿になった。
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