上 下
11 / 153

葵真実を知る

しおりを挟む
3人は翔子の部屋2207号室に着いた。
 怜は失神していたため、翔子が引きずり、葵ちゃんは柚奈が手を引き中に入った。
 翔子は一人暮らしをしているので、部屋には誰もいなかった。

「おっかえり~。あれ? なんで怜くんは失神してるの?」
「わしを侮辱したからじゃ」

 翔子の部屋で留守番をしていた豊姫が出迎えてくれた。しかし、怜は白目を向いて床で寝ていた。
 葵ちゃんはプカプカ浮きながら、リビングで寝た。お腹を空かせた柚奈が話した。

「師匠。お腹が空きました。いつもの下さい」
「良かろう」

 翔子はいつも通りやかんで湯を沸かし、カップ麺を取り出した。翔子はカップ麺を手に取り柚奈に質問した。

「柚奈よ。お主は今日は何味にするのじゃ? わしは抹茶味にするかの」
「私はいつもの醤油で大丈夫です」

 翔子は独特な物を選んだが、こういうのが好みらしい。
 対する柚奈はいつも通りの味が好きらしい。お湯を注ぎ、スマホでタイマーを設定すると椅子に座り待った。柚奈が質問した。

「師匠。奴らの動きはどうですか?」
「残念じゃが、尻尾すら捕まえらないの……せめてあの蛇さえ捕獲できてれば」

 ピピピッと翔子のスマホのタイマーが鳴った。翔子はタイマーを止め、カップ麺を取りに行った。
 タイマーの音でやっと怜と葵が目を覚ました。二人とも辺りを見回した。怜は翔子と目があった。

「怜よ。起きたのか。さっきのは許してやるが、次また同じことをぬかすと……カラスの餌じゃ」
「あぁー、すまなかった。それよりお腹が空いたな。何か飯を分けてくれ~」
「葵もお腹減った~怜! キャンディーは~?」

 反省した怜はお腹をならせ、座り込んだ。同じく葵も浮かびながら駄々をこねた。
 怜はビショビショの制服を着ていたので、またクシャミを連発した。
 見かねた翔子は怜に、客間にあるバスローブを取ってきて、渡した。
 怜はキラキラした目で感謝し、別室で着替えた。着替え終わり、リビングに戻ってくると柚奈がカップ麺を用意してくれた。

「先輩どうぞ。イチゴ味のカップ麺です」
「ほれ! 葵。お主にはイチゴ味のペロペロキャンディーじゃ」

 二人ともイチゴ味の食べ物に飛びついた。二人とも無我夢中で食べ続けた。しかし、怜は食べたことのないカップ麺に文句を言い始めた。

「うえ~。なんだよこれ! 全然美味しくないぞロリ忍者。お前いつもこんなの食ってのか? 腹壊すぞ!? もう俺はいらん。トイレはどこだ! マジでリバースしそう……」
「なんじゃと!? 人がせっかく用意した食べ物を粗末にするなど言語道断じゃ。完食するまでトイレには行かせんのじゃ」

 翔子は嫌がる怜に無理やりイチゴ味のカップ麺を口の中に入れた。怜は抵抗するが、全く敵わず全て食べ尽くした。そして泣きながらトイレに向かった。葵は満足そうにキャンディーをなめた。怜はトイレでマーライオンのようにリバースしていた。

(ふざけんなよ。あのロリ忍者! あんな泥みたいなもん食わせやがって、絶対あいつの食生活ぶっ壊れてるわ。もうアイツと関わると不幸が飛びかかってくるわ。話聞いたらさっさと帰ろう)

 数分後。怜はトイレから出てくると二人はコーヒーを飲んで待っていた。柚奈の隣にコーヒーが一つ置いてあった。

「先輩。リバースは終わりましたか? 早く座ってください。大事な話があります」
「お、おう。分かった」

 怜は柚奈の隣に座り、コーヒーを飲んだ。もちろん翔子のコーヒーは牛乳たっぷりのコーヒー牛乳だった。葵は怜の後ろで浮きながら話を聞いた。そして翔子が口を開いた。

「まず、大事な話は2つある。1つ目はお主の守護霊、葵についてじゃ。葵には足があるんじゃが、守護霊の中では貴重なものじゃ、生き物の守護霊は普通亡くなってから、誰かに付くんじゃ。しかし、葵の場合は足がある。それを意味するのは、葵はまだ死んでないんじゃ」
「!? 葵ちゃんが死んでない? 一体どういうことなんだ」

 怜は驚きのあまり立ち上がり、質問した。葵自身も何を言っているのかわからず、困惑した。
 翔子は話を続けた。

「落ち着くんじゃ怜。恐らく葵はどこかの病院で植物状態か仮死状態、もしくわ魂を誰かに奪われたかのどれかじゃ」
「魂を奪うだと!? 誰が? 何の為にそんなことを……」

 怜は座り、考え込んだ。
 柚奈は衝撃な事実に口を抑えて聞いた。

「何より葵を助けることができるのじゃ、怜よ葵と出会ってしまった以上、お主の責任じゃ。助けるのじゃ」
「お、俺が葵ちゃんを助ける!? 敵も病院も分からない。何より命の重みが……」

 突きつけられた現実に怜は耐えられなかったのか、頭を抱えた。葵は何も思い出せず、涙が溢れてきた。不安がる怜に柚奈は手を握り、話した。

「できます! 先輩。あなたならできます。私、信じているんで。きっと葵ちゃんを助けてハッピーエンドで終わりましょう。葵ちゃんも泣かないで! 葵ちゃんもきっと思い出せます」

 怜は手を握る柚奈の顔を見た。しかし、まだ決心が付かなかった。

「やっぱり無理だよ。俺には重すぎる」
「怜! 葵頑張る! 頑張って色々思い出すから、諦めないで。みんな怜の味方だから」

 葵も涙を流しながら怜の手を握り、勇気付けた。怜は決心を固め、自分の頬を叩いた。

「あぁ! やってやるよ。葵ちゃんを助けて俺は、お前のヒーローになってやるぜ!」
「怜よ。決心を固めたようじゃな」

 柚奈と葵は喜び、涙を流しながら怜に抱きついた。

「おいおい! お前ら苦しいぞ。分かったから離せ離せ」
「先輩! ようやく男になりましたね」
「うえーん。葵、嬉しいよぉ」

 抱きつかれて苦しい怜だが、半面喜ぶ怜であった。いやらしい気持ちに二人が気づくと、二人で怜を突き飛ばした。突き飛ばされた怜は頭を床に強打し、失神した。二人ともやばいと思ったが、口笛を吹いて誤魔化した。
 数分後怜が目を覚ますと鬼の形相で文句を言った。

「おい! 貴様ら。せっかく俺が決心を固めたのになんだこの仕打ちは! 殺すぞ」
「先輩が悪いんですよ。いやらしい顔してたんで」
「そうだそうだ! 葵も鳥肌立つくらい気持ち悪かったよ」

 2対1の戦いが始まってしまったが、翔子が強くテーブルを叩いた。驚いた3人は口を閉じ、翔子の顔を見た。

「お主ら。わしの話の途中じゃ。最後まで聞くのじゃ。2つ目は敵についてじゃ」

また場の空気に緊張感が漂った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣
恋愛
社会人の鳳健吾(おおとりけんご)と高校生の鮫島凛香(さめじまりんか)はアパートのお隣同士だった。 兄貴気質であるケンゴはシングルマザーで常に働きに出ているリンカの母親に代わってよく彼女の面倒を見ていた。 リンカが中学生になった頃、ケンゴは海外に転勤してしまい、三年の月日が流れる。 三年ぶりに日本のアパートに戻って来たケンゴに対してリンカは、 「なんだ。帰ってきたんだ」 と、嫌悪な様子で接するのだった。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます(Ver.02)

京衛武百十
ファンタジー
俺の名は錬是(れんぜ)。開拓や開発に適した惑星を探す惑星ハンターだ。 だが、宇宙船の故障である未開の惑星に不時着。宇宙船の頭脳体でもあるメイトギアのエレクシアYM10と共にサバイバル生活をすることになった。 と言っても、メイトギアのエレクシアYM10がいれば身の回りの世話は完璧にしてくれるし食料だってエレクシアが確保してくれるしで、存外、快適な生活をしてる。 しかもこの惑星、どうやらかつて人間がいたらしく、その成れの果てなのか何なのか、やけに人間っぽいクリーチャーが多数生息してたんだ。 地球人以外の知的生命体、しかも人類らしいものがいた惑星となれば歴史に残る大発見なんだが、いかんせん帰る当てもない俺は、そこのクリーチャー達と仲良くなることで残りの人生を楽しむことにしたのだった。     筆者より。 なろうで連載中の「未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます」に若干の手直しを加えたVer.02として連載します。 なお、連載も長くなりましたが、第五章の「幸せ」までで錬是を主人公とした物語自体はいったん完結しています。それ以降は<錬是視点の別の物語>と捉えていただいても間違いではないでしょう。

処理中です...