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真亭 甘

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SECOND STAGE 華凰

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土壁造りの家々が何件かある中の真ん中から美味しい匂いを漂わせる壁一面むき出しの建物にランは引き寄せられていった。かまど鍋から煮込まれた美味しいスープが人々の食欲をそそっていた。一つのかまどにスープ、もう一つのかまどから広い寸胴鍋にいくつものざるを重ねて、肉まんを蒸していた。店の前で立ち往生していると料理をだす中年女性から、手招きで誘われた。

「そんなところに突っ立って無いで、こっち来て食べなさい。お腹すいているだろ?」

誘わるがままに、店の中に入るが店内には昼間からお酒を飲んだくれるおっさんたちが、居座って店内は混雑していた。しかし女性は俺と年齢の近い店の外側で座っていた青年のテーブルと相席を進められた。青年も相席を難なく了承してくれた。了承してくれたのはいいことなのだが、青年と会話をすることが無かった。いや、会話できなかった。会話のネタもわからなければ、何を話したらいいのかもわからなかったのだ。何もせずにただ沈黙が時間とともに過ぎていく。肉まんとスープを渡されてもすぐに手を付けることができなかった。

知らない人や知らない場所に戸惑っていた時、青年から一言話しかけられた。

「食べればいいよ。お腹空いているのだろ?」

思わない青年の一言に驚き、後ろに引き下がる。テーブルは跳ね上がりスープから汁が少々溢れ出した。テーブルの大きな音に周りの客は静かになり、みんな自分を見つめる。驚きに悪化するごとに俺は獣と戦うように、体を少しずつ低くし身構える。それを見た青年が自分が驚かせてしまったことに、罪悪感を感じたかのように自分に背を向けてほかの客に謝り頭を下げた。

「みなさん、俺がいきなり語りかけてしまい、彼は驚いてあのようになっています。大変お騒がせしました。申し訳ございません。」

青年の一言に、ほかの客たちは何事もなかったかのように、席に着きさっきまでと変わらない光景に戻っていった。だんだんと落ち着いた雰囲気に戻ると、青年は頭を上げて俺に振り返り頭を下げた。

「ごめんな、驚かせて。怖がることはないぞ!さぁ席に戻ってご飯を・・・」

そう言いながら青年は俺に手を伸ばしてきた。その姿に俺は身構えていた姿を解き青年の手を気にせずに、肉まんを口にした。その姿を見た青年は、少し笑い席に戻った。
肉まん食べながら、落ち着いた雰囲気を堪能していく。お腹も満たされてさっきまでとはまるで違う気持ちに、店を後にしようとした瞬間。女性から呼び止められた。

「ちょっと治を置いていきなさい!」

治?わからない単語に戸惑う。戸惑う顔にため息をつきながら女性は小さな丸い物を突き出してきた。小さな丸い物を凝視しているとお金だとわかった。しかし、お金は島に連れて来られた時点で金銭は失っていた。あるはずが無いのにポケットを漁る。一生懸命漁っていると10円が入っていた。お金があったことに思わず差し出すが、女性は逆に大きく怒鳴り声をあげた。

「これは治では無い!ここは華凰の国!10の文字は刻まれているけど治では無い!むしろお金かも怪しい!」

治や華凰のお金やわからないこと怒鳴る女性に、俺は困惑した。金無し泥棒や無銭飲食などわけのわからないことを叫びながら店の奥から男性を呼び出した。呼び出された男性は俺の腕を掴みかかり、重罪、重罪と連呼し店の外へと連れ出された。道へと引きずられると食い逃げは重罪やと言いながら、男性は通りかかった騎馬に首を刎ねられた。
無銭飲食をした俺の腕を引っ張りながら店の男性は、道へ出た瞬間に通りかかった騎馬に首を刎ねられた。刎ねられ手の力を無くした男性から逃れると、アンタ、アンタと女性が叫びながら近寄ってくる。女性に気を取られて後から来た2人の騎馬に反応が遅れた。1人目の湾曲刀の刃が男性の腰を横一直線に切り裂きた刃が、俺の後ろ髪を数㎝切られた程度でかわし切れた。2人の騎馬が通り過ぎた瞬間、女性は足から引きずり込まれるように騎馬の後を女性がうつ伏せに引きずられていった。その姿はまるで、野生の猿が檻の中へ押し込まれ狂喜乱舞してるように高々しく生々しい叫び声だった。
一瞬の出来事に俺たちはただただその場に固まっていた。硬直を解き放ったのは、昼間からお酒を飲みだらだらとしているおっさんたちだった。盗賊や他国からの侵略やと騒ぎはやし、店の外へと逃げていく。散らばりながら逃げまどうが、突然降ってきた矢に何人か倒れていく。またその場で残っていた人達は固まった。すると騎馬が走ってきた方から数人の兵隊たちが剣を突き出して、兵隊に言われるがまま連行された。
兵隊に連れられると多くの人が中央に集められ、俺や青年もその中に押し込まれた。するとすぐさまに両手を縛っていた縄を一本のロープで他人の腰に巻かれた縄に結び付け二列の拘束された人は言われるままに歩き村を出し一行は村を後にした。夜が深くなると何もない草原の上で移動は止まった。すると急に前の人がしゃがみ込むと、その腰に縛り付けられたロープに引っ張られ俺は、バランスを崩し前かがみに倒れこんだ。それからはドミノ倒しのように青年が片膝つきその後ろは横転、そのまた後ろも横転と繰り返し一列全員倒れた。それを見た兵士たちは一斉に笑う、大笑い。横にいた一列は倒れないと、少しずつ何時間もかけて歩いてきて、疲労が蓄積している両足にさらに酷使しながらしゃがみ込む。

「今日もいい星空だ!」
と体を立て直していると、青年が星空を見上げながら言う。俺も星空を見ようと真似をするが、倒れたせいである男性が怒り喚き散らそうとしてきた。つかさず頭突きをお見舞いし、黙らせた。ただ連れられ歩かされた後に騒がれては迷惑だった。すると青年が口笛を吹いた。

「恐ろしい!小僧だ。血の気がおおいのか?俺はあいにくそのつもりはないからな!」
拘束され暗くなるこの状況で明るく振る舞う青年。青年に俺は振り返り見上げると、一人の兵士が湾曲刀を青年の首に突き付けてきた。

「そこ!私語を慎め!」

「あーあー、声の発生練習!」

青年はふざけると湾曲刀は横に薙ぎ払われた。青年の体は傷一つついていなかった。寸前でかわしたと思うとすぐさまに青年は「へたくそ」とボソッと呟く。ボソッに激怒した兵士 はすぐさまに湾曲刀を振り回した。振り回された刃は青年の体や衣服を傷つける一つ付けれなかった。それか青年の前後を繋いでいたロープが切れていた。

「さーてと、ふん!!!」

青年の動きが一瞬おとなしくなった途端に、空気が静まり返った。そう思うと青年の手首足首を固定されていたロープが粉々に粉砕された。

「えー!うそ?どうなっ!!!」

ロープが粉砕されたことに驚いた兵士は驚くと同時に、青年に殴られ地面にたたきつけられた。

「さぁ来いよ!情弱」

青年。名前も知らない青年。袖口を何度も折り曲げた白のYシャツに、紺色のズボンを履いただけしかわからない昼間に出会ったばっかの青年。それだけだった。が、ランはそれだけでも青年と同じようにしたかった。手首の拘束するロープに意識が集中した瞬間、青年と同じように粉砕した。

「・・・(笑)」

ランはロープが粉砕されるや、青年を見てすぐに笑顔に。そして、やることを見て欲しいみたいに両腕を上げた。驚き思考を始める青年と驚き恐れだす兵士。前者は冷静な反面。後者はもう襲い掛かるしかなかった。同じ生き物ではなく自分たちを捕食する怪物に向ける姿勢だった。付近にいた4人が自暴自棄に一斉に来るも青年は殴り飛ばした兵士から湾曲刀を奪い、横一線に振り回した。

「不思議な少年・・・」
4人を倒したて、ランを見ながら一言。すると兵士が叫び怒号を上げた。

「なんや貴様ら!人か?別種族やろ?でなきゃインチキや!」
批判発言が飛び出てくる。自分の常識の中で物事を判断することが多い。そのためよく人は(普通は)や(常識)などの発言が耳にすると思う。少し楽をしたい人が常識外のことを考えず枠に治めるように言葉がでる。この世界は変異前の人間社会から変わった。彼らの生活も変わったのに、考え方は変わらないまま。人間社会に取り残されていた結果からくる。批判だった。

「兵士みたな身なりやけど、まぁ賊やし。しょうがないけど・・・成長しろや、ヤンキー」
発言するや集団に攻めかかる。

「少年誌など敵は大まかな悪役やチンピラも一緒の括りか、不良少年はいません!なのに何でまだ存命中ですか?」
そう言っている間にも、10人位の賊のわき腹や腕・足・目などを斬りつけ、戦闘不能に・・・生活障害にしていく。

「ああああ、腕があああ!」「目がああああ!」「足があああ」「ううううん、うんうんんんん」「お、おおお、おい!貴様、ひひい、ひとか?」

「ええ、君たちと同じ人間です。」

「ならなぜこんな酷い仕打ちができる?」

「はぁ?君たち賊もこれまでに幾多の人たちを同じように攫っては、いたぶり。弄び。犯し。恥辱に落とし。殺し。人ではない扱いをしていたじゃないか。忘れた!?」

「そ、それは俺らを雇ったのに任されてやったまでで・・・少し分け前をいただいただけなんだよ!攻めるなら雇い主を攻めてくれ!俺たちは関係ない!」
賊は武器を地面に投げ捨てる。

「なら僕も関係無いですよ!」

「だって僕のやっていることは君たちに殺された死者の酷い代弁者なんですから、僕に言われてもしょうがないです。」

青年はさらに手ぶらな左手にも湾曲刀を持ち、賊に攻撃する。恐れ森の中へ逃げるもの、逆上して立ち向かってくるもの。賊は統制も効かず、烏合の衆へと化していた。青年は抗う者たちを、腕や足を狙わず急所や致死率の高いからだを切り裂く。顔や首を両断して倒していく。騎馬が2騎襲い掛かるが、騎馬の間に飛び掛かり、すれ違い様に騎乗の賊を斬る。賊はいなくなった。そして殺さずにした存命の者たちに、とどめを刺した。

「抗うものには、せめてもの最後を」
と手を合わせていると、最初に殴られた賊が起き上がった。歯が砕けてろくに会話できるようではなかった状態だが、青年は見逃し森に行かせた。するとそれを追うように無数の矢が賊に刺さった。飛んできた方を見ると甲冑を身にまとった本物の兵士が数え切れないほどいた。

「我が国の村を襲って安静が訪れると思うな!」
騎乗の兵士の奥からほかの兵士より装飾の多い老将が出てきた。

「兵似将軍」

「傭兵。リョウ!密偵の役目ご苦労!」


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