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真亭 甘

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FAST STAGE

84651

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天井から垂れ落ちる滴が、ランの瞼に目掛けて落ちた水滴は、ぴちゃんと静まり切った部屋を高い音が鳴り響いた。瞼に勢いよく落ちた水滴が痛かったのか、冷え切っていたのかわからないが、ランは飛び上がるように起きあがった。

「ここは・・・」

目を覚ますとそこは、薄暗くコンクリート壁と鉄の檻に囲まれた中だった。すぐさま起き上がり立ち上がった。

「やぁ目が覚めたようね!いきなり立つと良くないよ・・・。倒れちゃうよ」
檻の奥の方から、声が聞こえてきた。その方へ振り返ると暗い部屋の中でもハッキリとわかる白色の上着が目に入った。その瞬間、男が言ったとおりに、ランは視界がぼやけて姿勢を崩し片膝ついてこらえたが、横に倒れた。

「ほらね。立ち眩みと言って、血の流れの勢いが弱くなって、頭などに血が少なくなるのだよ。まあ君の場合は、長い間ずっと寝ていたから、血が少なかったのだろう。」

そう言って男は、檻の外に向かって「クライ」と、叫んだ。すると廊下の陰から黒スーツを着た人が現れた。顔は茶色の短髪に洋風の顔立ちの女性。

「ごめん。昏睡状態の子が起きたから、係の者に言ってご飯をもらってきてくれないか?」

クライは、何も言わずに廊下を進んでいった。

「あとで、ご飯を持ってくるはずだから、まあご飯と言っても乾パンと思うけど、ご飯をたべて、落ち着いたらってか休んだら、いつも通りに動けるようになるよ。あとちなみに僕はハクイ。医者さ、今は依頼を受けてこの選手の状態を診察しているところだよ。じゃあまたあとで、様子見に来るね。」

そう言うとハクイは笑顔で檻をでて、次の檻に入っていった。そうするとランは、力の無さかまた眠りについた。
それからすぐに、クライが優しく起こして、水を2~3杯飲ませた後に、細切れにした乾パンに水を染み込ませ食べた。

「急がずに食べなくて、いいぞ。これはおまえの分だ。誰も取ったりしないから、落ち着いて食え。ハクイが言っていたが、何日間も寝てばっかりのやつが、こんなぱさぱさの、食べれないから。」

そういっている間に、ランは乾パンを喉に詰まらせた。クライは慌てて、背中をさすった。

「だから、言わんこっちゃない!」

「やあ!今日も快勝快勝!それにしても、誰も勝ちっぷりに、欲しがらないし・・・ってかもう飽きたなぁ。おおお!クライじゃないか!今日も来てたのか?ってことは、何処かにハクイもいるんだな!」

汚れた色装束の和服を、帯も締めずにこの男は、檻の外や中を見回した。

「お、おう!だが、今は静かにしてくれ!寝起きがいるんだ!」

「お!寝込みも起きたんか?元気か?」

ランは遅れて、頷いた。

「無理に頷かなくていいぞ!カイは、デリカシーというものに、欠けているのだ!」


「な、何を失礼なことを言っているのだこいつは!この俺に向かって、デリカシーが欠けているだ!?」

カイと名乗る男は、クライの言葉に大声を上げた。それを見たクライは、手を顔に当てて顔を振る。その仕草はまるで、騒がしくはしゃいでいる子供を見て、恥ずかしい親を見ているようだ。

「そういうのが、デリカシーに欠けるというのだ!」

「あ、そうですか。そうですか。悪かったね~俺がデリカシーに欠けいてて」

「謝罪の言葉になっていないぞ」

カイは不機嫌になりながら、両手を頭の後ろに当てて奥へと進んでいった。クライは肩を落とすように、息を吐き落ち着いた。やっと落ち着きを取り戻したと思ったら、あの男が返ってきた。

「やぁ、クライ!彼の様子はどうだい?」

「おい!」

突然のハクイの登場に、クライは思わず突っ込んだ。

「回復したようだし私は戻るよ。ハクイ」

クライは食器などをもって立ち上がった。するとハクイは「そうだね」と声を聞くと、クライは暗い廊下を歩いて行った。

「じゃあ元気になったところで、今君が置かれている立場とこの場所についてのことを教えてあげるよ。ああただし、ここについてはあまり教えられないけど」

と言いながら、ハクイは個々の概要を話してしまった。ここは、旧中国領近海南シナ海にある旧中国軍の複数の人工島の一つであることが説明された。しかし、説明をしたランには理解をしていなかった。

「うん・・・、元々の知識での説明してみたが、わからない。まず・・・」

「おい!84651!目が覚めてから食事も済ましたな。なら始めるぞ!」

小さい板を何枚も繋ぎ合わせた鎧を着た男が檻の外から急かしてきた。

「えー、もう始めるんですか?まだ1時間もたっていないのに・・・」

「うるさい!おまえは治療をするだけ、治して出せばいいんだよ!」

ハクイの言葉に苛立ち、ハクイの胸倉を掴み持ち上げて、殴ろうとするが、腕をクライに掴まれ止まり。腕を後ろに組まれ拘束される。

「くぅ、女に守られやがって、この野郎」

「おまえは、まだ運がいい方だ!ハクイに何かあってみろ、お前を死よりも辛い目にあわせてやる」

「うああああ」

「あ、あ、クライ落ち着いて!もういいから、僕は何もされてないよ!」

ランやハクイも了解の返事を聞いて、男は通路を奥へと、クライに痛めつけられた腕を、抱かえて奥へと行った。

「クライあまり手を出してはいけないよ!何かあったら大変だ」

「そうだね。ランこれからこの施設で君がいる理由が始まる。元々この施設は旧中国軍の島だったが、異変後戦争にも使われたが、結局廃墟にそこを豪商にて12神獣の「文圍(ぶんい)」が買収し、表部分を修繕してそこに中国時代や華凰で成上がった富裕層を招き入れて、奴隷のデスゲームを行っている。ラン、君はゲームの駒なんだよ。ここに来る前は誰かに売られたんだろうけど」

「おい!ハクイ・・・」

ハクイとクライが話し合っているなか、ランはミツルに飛ばされた後を思い出していた。壁にぶつかって、意識がもうろうとしている最中に、赤黒いシャツを着た男が、ランの頭に手をのせて言う。「・・・、これからゲームが始まる。・・・」ランは、ふとハクイとクライに赤黒いシャツの男ことを話した。しかし、ハクイやクライにカイもその存在を知っているものはいなかった。

「おい!もういいか」

さっきの男が戻ってきて、ランを呼び出した。それからランは男に連れられ廊下を歩いて、行き先が真っ暗な別の通路の前で、男は止まりランを進ませた。暗くて平衡感覚も乏しい中ふと足元から風が吹きあがる。と思ったら今度は横風が流れる。バランスが崩れ落ちそうになるが、踏ん張り態勢を保った。そんな中を何とか歩き切り、噴き上げる風が無くなると、感覚的に足場がしっかりしていることを感じ取った。引きずり足で延ばすと、いくつもの安定した足場がある。すると天井照明が点灯した。暗い場所が明るくなり、目が光に追い付かなく、数秒間視界を失った。視界の無い感覚に悶えていると、突如スピーカーのような声が響き渡った。

「さぁお客様お待たせして申し訳ありません。今日の延長特別マッチ!カイとモブのメインマッチが終わり今日の試合も終わりかと思われたが、突如特別参加が決まり。お客様には予定などお忙しいところ恐縮ですが、特別マッチに待っていただきありがとうございます。」

「今回の4回戦で予定していた、シーシング選手vsモブツ選手の試合でしたが、試合前にモブツ選手の怪我が悪化し、そのまま回復も叶わず死去。お客様には残念な気持ちになりましたが、今回新選手ランが参戦を決め、今回のカードとなりました。紳士淑女の皆様どうぞお楽しみください。」

ランが牢を出て行った後、ハクイとクライは牢を後にし、カイも昼寝をした。落ち着いた牢にあの兵士が近寄って先ほどの仕返しをしようと、悪い顔をしている。しかし、仕返しをする相手はハクイとクライなのに、その二人はいないのに、仕返しをする気満々は、もはや仕返しではなく、自己満足の一方的な仕打ちである。兵士はビニールホースを引き寄せて、カイに向ける。自分の名前の山(ヤマ)がなんちゃら、恥がなんちゃらと長々ブツブツ小言を吐きまくって、最後に「あーー」と訳も分からなく叫びだした瞬間、真後ろからの手刀を受け気絶した。

「ラピットなげーよ、早くヤレ!」

「いやぁーすいません、頭(かしら)!なんか面白くてw」

笑いながらラピットは気絶した兵士ヤマの脇を漁っていると、鍵が無く頭を掻きながら探しなおそうとすると、カイが鍵は腰にぶら下がっているのを怒りながら教える。言われた通りにに腰を確認すると、複数の鍵がある。ヤマが面白すぎて間違えました~と謝罪しながらカイを牢から解放すると、ラピットを一発なぐろうとしたがすぐさま諦め、ふたりは走り去る。
それからオペラの劇場風なこのボックス席、元々あった島の岩石を削り出して造られた部屋。賭け事の景品として戦っている人を、見降ろすためにできた部屋だろう。現に忍び込んだボックス席にも、よくいる富豪のように扇子を顔の前に当てる中年女性と、護衛を控えて観戦している。「またっく侵入される気全然無いような、余裕なことだ!」護衛にはあっさりと死んでもらい、富豪のおばさんにはその辺に落ちていたボロ雑巾を口の中へ押し込むように当てて「ただ触りたくないから」、背中から心臓の辺りに剣をゆっくりと突き刺した。俺らのやる海賊は、自分の人生より明日を生きるので精一杯の金無し郎党人から出来ている。そのため権力や金を持つ者には、一生懸命に生きている痛みを覚えさせる。そのため権力者ほど、余裕を持って殺している。ちょうどのタイミングで、ランがシーシングを倒していた。そして今になった。(ちなみに、クライとハクイは元々と闘技場にいた)
その内容をアナウンサーが気付き、マイクで叫び出す。それに観客が呼応して自分が可愛すぎて、我が我がと脱出を逃げまどっている。その観客の後ろ姿に、向かって何度も爆発音が鳴り響いく。サブマシンガンを海賊が次々と観客や護衛を撃ち倒していくが、たまに屈強な護衛や兵士が2~3人返り討ちになるが、最終的に殲滅された。戦闘により施設が崩壊をはじめていた。すぐさまに脱出をはかるが、ランの耳には「誰か、誰か助けて」と呼ぶ声が聞こえた。声に釣られて声のする方向に向かうと、クライもハクイを連れて向かい、カイとラピットは立ち止まる。


「おい!お前ら!」


「ちょっ、あいつらどうすんだよ!頭、もう崩れてるし、行きます?」


「いや、それでは今まで殺してきた奴らと変わらん!」


「しかし・・・」


「えええい!俺があいつらを連れ戻す!お前らいつでも出港できる準備をせい!」


「頭!」


この男「シーシング」

ハスト村の後、島のモンスター一覧を埋め尽くし、港町ココトから旅立った。ちょうどその頃だろう、異変が起きたのは・・・。

東南アジア出身のシーシングは、津波や地震などで被災。出身の町は津波で半数が死者・行方不明者となり、その後に巨大生物の出現によりまた半数に。生き残るためにシーシングは走った。走り続けた。このまま町にいてもわからない。ただ巨大生物の餌になるくらいなら、食らう側へと。山々を越えていると、華凰の国境を知らず知らずのうちに入っていた。
華凰の村々や中国の町々が獣と瓦礫の上に草が覆う廃墟へと変貌し、栄えている町々は高層ビルではないが、建物や道路が綺麗に整備されていた。人々の移動は荷馬車などでいどうしている。そんな栄えた町をキョロキョロとしながら歩いていると、警備兵に連行されてしまった。
そしてあの二人にであった。木の机と二つの椅子に腰を下ろしている。濃い髭と角刈りが特徴のたばこを吸っている半興(はこう)と、半興よりも若く茶色の髪の下に布を両目の前に置いて、背もたれに体を倒し切っている蒜(ひる)のもとへ連れて来られた。
兵士が二人に住民権を持ってない罪人を連行してきましたのように伝えるが、二人は反応せずに蒜がアイマスク代わりの布をどかして、俺を見た。

「そんなの俺らに聞かずとも分かっているでしょ?即刻首を刎ねて来いよ!」

蒜は不機嫌そうに使っていた布を兵士に投げつけ、兵士に落ちた布を拾わせるととっさに兵士を蹴り付けた。床に這いつくばると何度も何度も踏みつけた。上司の判断にしか頼れないのがいけないのか、何度も踏みつけていると、半興は蒜を止めて別の処分方法を提案した。そしておれはここにいる!そうあの二人の小遣い稼ぎとしてここにいる。しかしその処分方法は悪くは無いものだった。100連勝を飾ったら、俺らの部下として上流階級の位と兵士としての一生の安泰を・・・。普通の人ならできないがおれはできる。変異後の過酷なサバイバルを生き抜いた俺ならな!さすがに最初は手こずったと思う、何頭もの獣や大量の虫なども相手としてきた。虫の毒や獣に食われる感覚もあったが、逆に食らった。

「そして今日おれは、88勝目を挙げる!わりーな新人?無理を捻り潰すように、プチ・プチっと死にな」

「・・・」

シーシングはランに急接近して殴る。吹き飛ばされるランの上にすぐさま現れ蹴り付ける。そして連打をたたきつける。連打し終わると距離を置いて勝利を確信したのか立ち去ろうとするが、何かを感じ立ち止まる。振り返ると殴られ吹きとばされた。

「っぺ。ふん、悪いな。しゃべりすぎいて勝利の余韻に浸ってたわ。だがもうそれも無い、これで終わらせるからよう!」

「功派・水撃!!」

ランに近づきランの拳を避けて懐に潜り込み、両手をランに向けると水が消火ホースから溢れ出るように、ランの体を押し流した。

「今度こそ俺の勝ちや!」

裏返りステージを後にするが、ランはまた立ち上がった!シーシングは顔が引きつるような怒り叫び、ランに突進し連打を何度も何度も繰り返し、両手を伸ばし水撃よりも量の多いまるで水道管から水が溢れ出ているように、大量の水がランを押し流す。

「はぁはぁ、これでもう場外には立っていられない、功派・大水撃」

力の消費が激しいのかシーシングは、両膝に手を置いて何分か息を整えていく。なぜかシーシングは、激しく笑い出した。張り合いのある相手にこれまでの相手が、人形や木の枝を相手しているようで、欲求不満な気分でいたか。普段よりレベルが高い相手に充実感を感じたのか、シーシングは笑った。笑い満たされ天井に向かって笑うと、顔を上げたな!と聞こえると、黒い影が迫り地面に引き込まれた。鈍い悲鳴と共にシーシングの動きは止まった。

「ラン!いい戦いだったぞ!」

「おめでとう!」

カイの一声に、続きハクイとクライは賛辞の言葉を贈った。
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