聖女なのに王太子から婚約破棄の上、国外追放って言われたけど、どうしましょう?

もふっとしたクリームパン

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オマケ 王家のわちゃわちゃ<ほぼ会話文>

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「何て事を仕出かしてくれたのだ、この愚か者!」


 国王が怒りに顔を赤く染めながら、王太子を怒鳴りつける。


「これがこの国の為なのです! 去年も今年も、実り豊かで大豊作が続いています。予測では来年も豊作なのに、数年後に大干ばつによる大飢饉がくるとか…そんな世迷い事を宣う偽聖女をいつまでも信じていては国の権威に関わります!」


「だから愚か者だと言うのだ! 聖女に偽物などおらん! 聖女を騙るモノは全て主神ラブリア様の御使い様によって審判が下され、罪深き者と見なされれば滅される!」


「それは知っていますが、御使い様の姿は見た事がありませんし、肝心のあのアロエナがいるではありませんか」


「何てこと…アロエナ様は本物の聖女様なのです! 御使い様が審判に現れる訳がないでしょう…!!」


「母上、偽物に王家の者が敬称を付ける必要などないですよ」


「…兄上、本気で言っているんですね?」


「あぁ」


「兄上に確認しますが、聖女であるアロエナ様が兄上の好みでなかったから、適当に理由をでっち上げて婚約破棄をした訳ではないのですね?」


「そ、そんな訳ないだろう。王太子であるこのコランバインと結ばれ、王妃として相応しいのはあんな偽聖女のアロエナではない、このアネモネアで――」


「何を言っておるのだ…聖女は王妃にはならんし、王太子と結婚もせぬ。そう取り決められておると、教えたではないか」


「え?」


「…忘れおったのか、その結果がコレか…。大災厄からこの国が無事に女神様と聖女様の御力によって守られた後、聖女様は神の国へ還られるのだ。王家との婚約はそれまで聖女様の御身を、どんな危険からも王家が盾となって一心に護る為のモノ。お前と聖女様の婚約が決まった際に、確かに伝えたことだぞ!」


「え、え…そう言えば、言われたような…?」


「陛下、聖女様が!!」


「なっ! お待ちください、どうか…!!」


 虹色の光に包まれた聖女。その光は王城を突き抜け、空へと向かう。


「…な、なんだ、いまのは…」


「…今のを見たな、コランバイン。あの光は女神様の御力、聖女様が神の国へ還られたのだ。これで、我が国は滅ぶことが決まったも同然だ…」


「そんなバカな……い、いえ、まだ時間はあります。女神様に別の聖女様を寄越して貰えるよう神殿に祈らせれば」


「戯け!! 聖女様は、女神ラブリア様の分身体なのだぞ! 聖女様の身に起きたことは全て女神様の身に起きたことも同然! 聖女様を蔑ろにした国が滅びた逸話が幾つあると思っておるのだ!!」


「え……」


「陛下、国民には罪はありません。残された時間の間に、民だけでもこの国から逃れさせなければなりません」


「…そうだな、王妃よ。近衛、この愚か者と女をそれぞれ独房に入れておけ! 大臣、すぐに議会の者らを集めよ! これからの為の緊急会議を開くのだ」


「おい、止めろ離せ! 父上、待ってください!!」


「い、いや! わ、わたくしはコランバイン様に命じられただけですわ!!」


「アネモネア?! 愛していると言っていたではないか!」


「うるさいぞ、さっさと連れて行け!」


 鍛えられた騎士達に連れて行かれる王太子と女。国王は嘆息し、告げた。


「皆の者、この度の祝いの席において起きた出来事の責任は王家が負うことになろう。この場で解散し、犠牲を最小限にするために行動するように」


 こうして、王家も退出し主だった高位貴族らも続き……誰もいなくなったフロアは静けさだけが残された。



【完】
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