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2、王妃様の庭で面会です。

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 呼び出しの場として用意されていた場所は、王宮内にある王妃様が管理する美しい中庭でした。

 この中庭で咲き誇る花々に囲まれて催される王妃様のお茶会は、参加出来た貴族にとって自慢話の一つになるほど、大変名誉なことであるとされています。私も何度かお声掛けがあり参加させて頂きましたが、緊張したのは最初だけでそれはもう素敵な時間となりました。

 時間となり王宮に勤める近衛兵と王妃付きである女官に案内されたその中庭に、用意されたテーブルはただ一つだけ。その席には数日前から王宮に出向いていた私の両親の姿がありました。国王陛下と王妃様もすでに席に着いておられますが、王家を筆頭に赤髪か茶髪を持つ者が多いこの国において、髪色ですぐに両親が分かりますのは他国の血が流れる家の特権かもしれませんわね。お母様は金髪に明るい茶色の目をお持ちですが、お父様は黒髪と青空のような目をお持ちです。私はお母様から金の髪と、お父様からは青い目を受け継いでおりますの。


「ヴィオラ、いらっしゃい。挨拶はお互いに略しましょう。さぁさぁ、お座りなさい」

「…はい、ではそのようにさせて頂きます」


 カーテシーをする前に止められた私は、空けられていた両親の間の席にそっと座る。

 にこやかに笑うお母様と無表情のお父様。一見、仮面夫婦に見えるけれど、この二人が恋愛結婚であることは有名な話。娘の私から見れば、常に寄り添う両親をよく見ておりますので、どこが仮面夫婦に見えるのかと言いたいところですが。


「ヴィオラよ、良く来てくれた。本日の召喚に関しては、例の婚約についての正式な話となるのでな。少しでも気分が良くなるよう、王妃にこの中庭の提供を頼んだのだ」

「陛下のお心遣いに深く感謝致します」

「良い良い。最近ではこうして王妃共に、時間を作れなんだからな、余のためでもある」


 そう言って優しく微笑まれた国王陛下は現在、同盟国を挟んだ向かい側にあるアリエン帝国の怪しい動きに対応されており、側近も含めて多忙の身なのです。最近では国内のことは王妃様を筆頭に側妃様方が協力し合い、それぞれの得意分野を生かして取り計らっていらっしゃるぐらいですから、余程のことなのでしょう。

 そんな中でこのような面会の場を作って下さった国王陛下並びに王妃様のお心遣いには、感謝するしかありません。


「…さて、後はジオルドか…」

「えぇ、そうですわね。ヴィオラより先に来るよう呼び出したはずなのですけどね」


 穏やかだった国王夫妻の雰囲気が一瞬にして冷えた気がします。そこへ、一人の王妃付きの女官が王妃様の元へ進み出て、何かを伝えておりました。


「……そう。…ええ、そうね、そのようにしてちょうだい」

「…どうした」

「……この場に相応しくない者を連れてこようと画策していたようですわ。今からこちらに一人で来るよう取り計らいました」

「そうか」


 ますます冷えてきた気がします。それも、前方の国王夫妻…というよりも、両隣から冷気のようなものが湧き出して来ているような…。

 アンナとお茶を楽しんだおかげで私の身体は温まっておりますが、早くジオルド殿下には来て頂きたいものですね……と、思っていたのですが。


「父上。何故、第二王子である私の大事な話しを中庭とは言え、こんな野外でしなければならないのですか」


 遅れて来られたジオルド殿下の第一声が、コレでした。

 もはや冷気を通り越して、周囲が凍てついてゆくような気すら感じられます。…こんなに悪化させるくらいならば、いっそ来てほしくなかったかもしれません…。


「……ジオルド、遅れた詫びどころかまともな挨拶すら出来ぬのか」

「遅れたことに関しては明確な理由があります、私の」

「もう良い、とにかく話を始めよう。そこに座ると良い」


 ジオルド殿下の話を遮って、陛下が着席を促されます。殿下の席は、同じテーブルであっても、国王夫妻とは離れた位置に用意されておりました。


「…私の席はここなのですか?」

「見てのとおりだ。早く座ると良い」


 不満を隠さない殿下でしたが、話を進める方を優先したのか、しぶしぶ着席なさったのでした。


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