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1、結婚式
しおりを挟む私の名はクニスキン王国の王太子ダルダ。今日は国にとっても喜ばしい日となり、私にとっても最上の日である。
何せ、我が愛しきモナとの結婚式だからな。王家の仕来りの為にモナの花嫁姿は式の直前しか見る事が叶わないが、きっと想像以上に可憐だろう。期待に心を弾ませ、王家の花婿専用の待機室で早く時間が来ればいいと待ち望む。
「ダルダ殿下、式の会場では――」
私の側近である男が何やら色々と説明してくるが、その説明を話すのが一体何度目だと思っている。基本的に結婚式では妻となるモナと歩いて国王である父と大神官の前で誓いを立てればいいだけなのだから、それ以上の事は私が覚えずとも良いではないか。こんな目出度き日でも小うるさいヤツはクビにしたいところだが、今の側近達は私の両親の推薦があり後ろ盾もある為、王太子と言えども私の一存では簡単にはクビに出来ない。
全く以前の側近達ならば、もっと気が利いたのにな。共に学園生活を過ごした仲でもあったのに、あの日以降彼らは各家の領地に連れて行かれてしまって、音沙汰がなかった。気付けば側近達の家から届いた辞退願いが両親に認められており、今の側近達が私の周囲に居るようになったのだ。…まぁ、あいつ等はモナを巡る恋のライバルでもあったから、仕方がないかもしれないが。失恋ゆえの行動ならば、私もそっとしておくぐらいの気遣いは出来るのだぞ。
そう、あの運命の日に、モナは私を愛する人として認め選んだのだ。私の元婚約者であるメルシアとの婚約破棄を宣告し、モナとの結婚を表明した、記念すべき王立学園卒業パーティーの日にな。
学園の卒業パーティーは本来ならば、卒業生と最上級生が参加し卒業を祝われるモノだった。しかし我が国のただ一人の王子であり、王太子である私が卒業する為か、親の参加も認められた上で、開催場所も学園の大講堂ではなく王宮で行われる事になったのだ。とは言え、正式な社交パーティーでなく、あくまでも卒業を祝う場である事は変わりない。主役は親ではなく私達、卒業生。メルシアとの結婚式は卒業してから二か月後ともう時間が無い事もあり、そんな都合の良い私の為の場を使わない手はなかった。
私は美しく着飾ったモナと共に入場し、皆の前で元婚約者との婚約破棄を宣言する。続いてモナとの結婚を表明すれば私の役目は終わり。フロアの中央に向かい、楽団に曲を流すよう指示し、曲に合わせてモナとダンスをして、卒業パーティーを大いに楽しんだ。
パーティーの後は両親に呼び出され叱責されたが、私は真実の愛を知ったのだ。モナとの出会いは運命であり、愛する人と結ばれるのに何が問題だというのだろう。我が国は一夫一妻制なので、結婚するならモナ以外あり得なかった。そんな私の説得が功を奏したのか、メルシアとの婚約は破棄となり、モナとの結婚が認められた。
やはり愛は偉大で、素晴らしいモノなのだ。
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