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バザーの後

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「シンス様。今日はありがとうございました。
私は、まだ少し残って行きたいので、私の馬車を使ってください。
折り返し迎えに来ていただけたら良いですから。」

「いや。。俺も最後までいる。一緒に帰ろう。急ぐ必要はないよ。俺のことは気にしないでいいから。」

シリアルは、片付けを率先してやっていた。
シンスは、院長室に入り、そこから、シリアルの様子を見ていた。

今日のドレスは、街風のドレス。
人一倍働いているし、
子供達と一緒に過ごしているシリアルは、楽しそう。
それなのにカデンに、あんなこと言われたら、倒れるよな。
二度とあんな思いをさせない。とシンスは誓った。

院長が、お茶を持ってきてくれた。

「王太子殿下。今日はありがとうございました。殿下のおかげで、バザーが成功しました。」頭を下げる。

「私は何もしていないよ。ただ挨拶をしただけ。王太子妃のおかげだよ。シリアルはいつもあんな感じでここで過ごしているのか?」

「そうですね。今日は、一段と楽しそうです。」

「そうか。」

「シリアル様には、本当に良くしていただいています。
私たちの負担にもならいない程度に、自分たちでやるべきことを導いてくれます。
教育面にも力を入れてくださります。
最低限のマナーを教えてくださり、読み書きも教えてくださります。
シリアル様は、子供達の未来を考えてくれます。」

「王太子としても、みんなが幸せになれるように、努力しよう。」

「あの。シリアル様には、お姉さまが1人みえるのですが、両親はその姉の方を溺愛しています。それは、街の噂です

私も、シリアル様が、幼い頃、家族の後ろを1人歩いている姿を見たことがあります。家族の関係は詳しくは知りませんが、孤児院に思いが強いのは、もしかしたらと思いまして、、、、。
少し気になりましたもので、、、」

と話を聞いた。

その時、シリアルが入ってきた。

「王太子殿下。お待たせしました。
院長。全て片付けました。また、近いうちにお邪魔して、収支報告書を作りましょう。」
いつもよりテンションが高かった。

「シリアル様のおかげで、成功しました。ありがとうございました。子供達も喜んでいました。」

「私は何もしてませんわ。子供達が頑張りました。
これをきっかけにみんなが自信を持ってくれるといいですわ。
定期的にイベントをしましょう。」

「シリアル。お疲れ様。疲れただろ?」

「いえ。今日は楽しくて。
あれ?院長?ここは以前壊れていましたよね?どうされたのですか?」

「あの、、その件でお話があるのです。」

「どうされましたか?」

「先日、カデン様が、見えた時に、
「何ここ?壊れてるわ。あぶないから、直ぐに直しなさい。シリアル様は、直してあげないわけ?私が直してあげるわ。」
と言われて、すぐに工事が入りました。」


「え?」 

「王太子殿下。修繕費はどちらから?」

「いや。報告書にはなかったぞ。」

「業者はどちらか?わかりますか?」

「カデン様のご実家のバックラー伯爵の親戚の方みたいです。」

「そうなのね。」

「修繕費は、カデン様負担したのかもしれませんね。」
シリアルは、あまり気にしなかった。
でも、シンスは違った。難しい顔をしていた。

「シリアル。そのことは調べるから。
今日は疲れたね。帰ろうか。」

「はい。」

馬車の中に入った。
カーテンが、閉まって、
もう夜だから、ランプの光を暗くして、帰ることにした。

「シリアル。隣に来て。」

「でも、、、」

「大丈夫だよ。カーテン引いてあるから、、」

「はい。」隣に座った。

「今日はお疲れ様。楽しかったようだね。笑顔だったよ。」

「はい。子供達が頑張ってくれました。」

「シリアル。」抱きしめた。

「王太子殿下?」

「違う。」

「シンス様。」

「そう。2人の時は、そー呼んで。」
キスされた。

「シリアルは、天使みたいだよ。みんなに好かれてる。」

「私はそんなことないですよ。」

「今は俺を見て、、、」

「はい。」

2人は抱き合って、王宮に帰った。


「シンス様。もうすぐ、、」

「そうだな。」
とシリアルは、俺から離れようとした。

それがとても寂しく感じたから、離さなかったら、
「王太子殿下。」
声のトーンが変わった。

「ああ。わかってるよ。俺も切り替えるよ。」
と少し拗ねていた。

そんな姿も可愛かったから、ほっぺにキスをした。

「ありがとう。シリアル。」
微笑んだ。

その笑顔に、シリアルもドキッとした。


王宮につくと、カデン様が、走ってきた。
「おかえりなさい。遅いおかえりでしたのね。シンス。」

「カデン。ただいま。」 

「今から私の話を聞いてください。」

「緊急に、職務をしたいから、またにしてくれるかな?」

「わかりました。」

「王太子殿下。今日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。お疲れ様でした。」

「そうよ。帰ってくるの遅かったわよ。シンスの帰りを待っていたんだから。」

「申し訳ありません。」

「シリアル、疲れただろ。ゆっくり休んで、お疲れ様。」

シンスは、執務室に行った。
シリアルは、自室へ。カデンは、シリアルの後をつき、一言、文句が言いたかった。

「なんで一緒に帰ってくるの?シンスは、挨拶だけって言ってたのに、、
あなたが、早く返すべきなではないの?
あなたは別に帰ってこなくていいのに。」

「申し訳ございません。」

そこへ、、カイがやってきた。

「シリアル様。申し訳ありません。あれ?なぜカデン様がここに?シリアル様に用事があるのですか?」

「いえ。もうすんだわ。」

「ならよろしいですね。シリアル様、この書類にサインをしていただきたいので、執務室に来ていただけると助かりますが、、、」

「はい。大丈夫よ。行きます。では、カデン様、ので、これで失礼します。」

カイと執務室に向かった。
そこで、カイにお茶を入れてもらった。
「美味しい。このお茶変わっているわ。」

「緑茶という飲み物らしいです。最近シンス様は、いろんなお茶を試しているみたいです。」

「シンス様が?」

「はい。シリアル様が、お茶に興味があるみたいと言ってましたが、、、」

「シンス様が、、、」
顔が赤くなった。

「シンス様に、ありがとうとお伝えください。」

シリアルは、先ほどの嫌な気持ちがなくなり、温かい気持ちになった。





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