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会わせたらいいと考えているのは、公爵、夫人付き侍女。やめた方がいいと言ったのは、執事と侍女長と侍従。
夫人付き侍女は、一刻の余地もないと主張した。
「奥様は、もう私が誰かすらわからなくなり、1日に一食食べるか食べないか。
このままなら、衰弱していずれは…」
「ティアリアはティリアナのところへ行ってしまいたいのかもしれない」
公爵の言葉に、会わせるのを反対していた3人も、夫人がこのまま儚くなるくらいなら、試した方がいいと言い出した。

「エディナ、ちょっといらっしゃい」
侍女長に呼ばれたエディナは、いよいよだと思った。
公爵と夫人の懐に入って機密を盗み出すのだ。
「エディナ、申し訳ないけれど、あなたは獣人である以外、亡くなったお嬢様にそっくりなの。奥様は心を病んでいて、助けが必要なのよ。あなたにしばらくお嬢様のフリをしてほしい。耳としっぽは出しておいて」
エディナは、うんうんと頷いてみせた。
「では、奥様のところに行きますよ」

公爵夫人の部屋は、日当たりがいいはずなのに、どこかどんよりしていた。
ベッドの上に横たわっている夫人は泣いていた。
「あぁ、私の可愛い娘。もうこの世にいないただひとり」
侍女長は、エディナを夫人付き侍女サミナに渡した。
サミナの方が夫人の信頼も厚く、適任だった。
「奥様。可愛いお見舞いの方がいらっしゃっいましたよ」
サミナの方をぼんやりと見ていた夫人は、ベッドから、立ち上がった。
泣きながら、ゆっくりゆっくり歩いてくる。
「ティリアナ!」

エディナは、夫人に抱きしめられ、号泣され、照れくさかった。
自分に母がいたら、こんなにも大切に思ってくれただろうか?
しばらくそのままでいたが、
本来の目的を思い出した。
「お母様。ご飯を食べないから、元気がないと聞きました。私と一緒に食べましょう?」
「えぇ、えぇ、もちろんだわ」
その日、夫人は食欲を見せ、三食きっちり食事をしたが、何をしていても、エディナの手を離さなかった。

次の日から、公爵夫人は、服も以前のようにオシャレになり、娘の支度も手伝い、シャキシャキと動き始めた。
とはいえ、病み上がりであるから、
当分は部屋の中でやれることをやるだけだ。
夫人は絵本をいくつか持ってこさせると、エディナに読み聞かせた。
その間、エディナは夫人の膝に乗せられていた。
「リアは、どのお話が気に入ったかしら?」
夫人と娘は名前がよく似ていたから、略称は夫人が、ティア、娘がリアだった。
「最後はみんなで幸せになるお話が好きです、お母様」
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