【完結】いい子にしてたら、絶対幸せになれますか?

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「聖歌姫なんだってね」
エディ殿下は完全に面白がっている。
ナティは言い返した。
「殿下も歌ってますのに、なんで私だけ?姫なんて柄じゃありません」
エディはさらに楽しそうに、
「だって、ナティ、最近とても楽しそうだもん」
「だもん」じゃありません、と叱りつけたかったが、ナティは全権を持つ家庭教師ではなかった。
あくまで語学担当だ。

「いいじゃん、聖歌姫。どんどん歌って注目浴びて、本当に姫になればいい」
その言葉がどういう意味かわからなくて、ナティはきょとんとしていた。
「ナティは鈍いね。3つも年上のくせに」
そういう殿下がまだ5歳なのに生意気なんです、とは言えないナティは、やっぱり殿下の言葉の意味がわからなかった。
実際、もっと大きくなってから、ナティはこの話絡みで大変なのだが、今はまだ幼い2人にはそこまで深い意味はなかった。エディ殿下は、ただひたすら面白がっていた。

「今日は天気が悪いから、やめとく?」
「最近時々貸してくれる教会で歌います。エディ様が交渉してくださるでしょ?」
こういうとこだよな、とエディは思った。時々大胆なんだよなぁ。
「いいよ。じゃあ行こう」
2人が教会で歌い出すと、どんどん人が集まってくる。
入りきれず、扉の外から覗くものもいる。
エディは今や5つの言語を理解し、話せる。1年もかからなかった。
ナティと同じく耳がよいし、記憶力も凄まじい。

どんな歌も2人で歌える。
教会にはオルガンがあるから、オルガンを使って重厚な歌も歌う。
聞いている相手も様々だ。最初はピクニックに来ていた人が中心だったが、そこから話は広がっていろんな地域から来た人が母国の懐かしい歌を聴きに来る。
初めて来た人はたいてい泣き出すため、
涙を拭くためのハンカチ販売屋がひっそり混ざっていたりする。
平民から貴族まで、いろんな階級の人々を魅了した。
聖歌姫の歌声は特別だ。

ナティは聖歌姫のことは頭から外すことにした。気にしない。親に捨てられ売られた自分がそんな大層な者であるはずがない。
けれど、自分を認めてくれているからこその呼称はうれしくもあった。
毎日練習し、エディ殿下とともに、
いろいろな人の助けになればいい。
今はナティはそれだけを願っていた。
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