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フリージアがいなくなり、泣き続けるナティだったが、お母さんは一頻り泣き終わると、いつもの顔になった。
「ナティ、出て行きな。フリージアがいない今、お前は厄介者でしかない」
ナティは泣きながら、頷いた。
ここにいてもナティは役に立たない。
きっと醜いナティに客はつかない。
ここがどういうところか、幼いなりに理解したが、フリージアがいない今、娼館にはいても仕方がない。
かと言って行く場所はない。
どうしようと迷っていると、前に語学の練習をしたお客様が、やって来た。
「帝国に行って、大陸語の家庭教師をやらないか?まだ幼すぎだが、教える相手は5歳なんだ。遊び友達も兼ねて、その屋敷に滞在してほしいそうだ」
ナティにとって願ってもない話だ。
「行きたいです」
「じゃあ、俺も帰るから、明日一緒に行こう」
お母さんに報告すると、
「甘い話には気をつけな」
とだけ、言われた。
翌日晴天の中、ナティの帝国への旅が始まった。
「ナティ、そう言えば、醜いと聞いていたが、普通だと思うぞ。美少女ではないが、驚くほどの不細工ではない」
「本当ですか?」
本当だ、と頭を撫でられて、
「まぁ、悪いようにはしないから、安心してな」
ナティは撫でられた頭を自分でも撫でた。
人生で2回、頭を撫でられた。
うれしい。
ナティはすっかりご機嫌で、馬車に乗り込んだ。
「え?」
帝国にようやく着いて、住み込みで働く邸に行くのだろうと思っていたら、お城に連れて来られた。
「あれ?言い忘れたか?大陸語の生徒は第四皇子だ」
ナティはびっくりしすぎて、目を見開いて、声が出せなくなった。
「こら、固まるな。すぐに皇帝に挨拶に行くんだから」
目の前の男は何者なのだろう?
やっと、ナティは疑い始めた。
といっても、もう城の中にいて、逃げることはできそうにない。
ついて行くしかない。
ナティは自分のこれからの人生を変える運命と出会うことにまだ気づいていなかった。
「ナティ、出て行きな。フリージアがいない今、お前は厄介者でしかない」
ナティは泣きながら、頷いた。
ここにいてもナティは役に立たない。
きっと醜いナティに客はつかない。
ここがどういうところか、幼いなりに理解したが、フリージアがいない今、娼館にはいても仕方がない。
かと言って行く場所はない。
どうしようと迷っていると、前に語学の練習をしたお客様が、やって来た。
「帝国に行って、大陸語の家庭教師をやらないか?まだ幼すぎだが、教える相手は5歳なんだ。遊び友達も兼ねて、その屋敷に滞在してほしいそうだ」
ナティにとって願ってもない話だ。
「行きたいです」
「じゃあ、俺も帰るから、明日一緒に行こう」
お母さんに報告すると、
「甘い話には気をつけな」
とだけ、言われた。
翌日晴天の中、ナティの帝国への旅が始まった。
「ナティ、そう言えば、醜いと聞いていたが、普通だと思うぞ。美少女ではないが、驚くほどの不細工ではない」
「本当ですか?」
本当だ、と頭を撫でられて、
「まぁ、悪いようにはしないから、安心してな」
ナティは撫でられた頭を自分でも撫でた。
人生で2回、頭を撫でられた。
うれしい。
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「え?」
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「こら、固まるな。すぐに皇帝に挨拶に行くんだから」
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やっと、ナティは疑い始めた。
といっても、もう城の中にいて、逃げることはできそうにない。
ついて行くしかない。
ナティは自分のこれからの人生を変える運命と出会うことにまだ気づいていなかった。
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