【完結】いつだって貴方の幸せを祈っております

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第七話

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「ミーナ、今日はうちの庭も見ないか?」
ミーナはすっかりノエルの家、特に図書室に詳しくなったが、まだ庭に出たことはなかった。
「ミーナ、きれいなお花が見たいですぅ」 
ノエルはいそいそと準備する。涼しい外に出るから、ミーナ用の上着を準備する。本来なら侍女の仕事なのに、ノエル自らミーナの肩にかけた。ノエルは正常な判断ができなくなっている。ミーナはそろそろかな、と頃合いを図っていた。
「わー!きれいですぅ。サーマ師が見たら泣いちゃいますぅ」
ノエルがミーナを連れて来た花壇は、古語の詩によく出てくる花々が美しく咲く庭だった。ノエルが指示して作った花壇なのだろう。知らない人が見たら、普通の花壇にしか見えないが、ミーナにはその美しさが格別に身に沁みた。
「だろう?サーマ師は特に花を詠む方だからな」

しばらくふたりで静かに庭を見ていた。ふと、ミーナが決意に満ちた目で告げる。
「ノエル、ミーナはもうノエルとお話できないですぅ」
ミーナは珍しく真剣な声だった。
「なぜだ?」
ノエルも真剣な顔になった。
「ミーナは所詮男爵の娘ですぅ。ノエルにふさわしくありませんのぉ」
ミーナは、あえて友人としてふさわしいとは言わなかった。この先はノエル次第だ。
「ミーナ、今日俺は君に求婚するつもりで、ここに連れて来た。君しかいないんだ」
うまく罠にかかってる、とつぶやきそうになる自分を律して、ミーナは目に涙を浮かべた。
「ノエル、それは無理ですぅ」
「無理じゃない。どうしたらいいか相談しよう。だから、ミーナの返事を聞きたい」

「ミーナもノエルと結婚したいですぅ」
「ありがとう」
ノエルは泣きそうな顔をした。ミーナは胸が痛んだ。ノエルは真っ直ぐな人だ。ミーナのゲームに巻き込むのはかわいそうな気がした。けれど、これしか手がないのだ。そう思って、ミーナは気を取り直した。
「まずは、姉上に報告しよう。相談もできると思う」
そうだ、シファリア・ガラナだ。彼女がミーナの思うように動いてくれれば、チャンスは来る。
焦るな、とミーナは自分に言い聞かせていた。

「あらあら、ノエルったら、仕方のない子ねぇ。ミーナを先に安心させてから、プロポーズすべきだったわ」
「ということは」
「もちろん手はある。ノエルだって、だから私に相談したんでしょう?」
こうして、ミーナはノエルたちの父の弟、リッヒェル・サーマル侯爵の養女になり、無事ノエルと婚約した。
「ミーナの家族に挨拶したい」
男爵家にノエルとミーナが訪れると、家族はみな浮かない顔を隠しながら、ほがらかに振る舞っていた。まだ9歳の弟だけがニコニコしていた。
表立っての反対はなく、ふたりは無事に婚約した。
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