【完結】いつだって貴方の幸せを祈っております

ここ

文字の大きさ
上 下
3 / 10

第三話

しおりを挟む
言葉の意味ぴったりのが見つけられず、ちょっとずれてるかもしれません。
まあなんちゃってな話として、雰囲気でお願いします。


「ノエル様。昨日はありがとうございましたぁ。ミーナとっても助かったから、お礼がしたいのですぅ」
ノエルは無機質な目を向けてくる。ミーナを見ているのかわからない。ミーナは気にせず、続ける。
「ミーナ、刺繍が得意なんですぅ」
ノエルのイニシャルと公爵家の紋様を刺繍した上品なハンカチを差し出す。
「気にしなくていい。誰でも同じことだ」
ミーナはニコニコした笑顔を崩さないまま、この男に心はあるのかしら?と疑問に思った。
「では、用がそれだけなら、俺は先に行く」
ミーナの手元に残った刺繍入りハンカチ。
「ハンナに謝らなくっちゃぁ」
刺繍が苦手なミーナはハンナに作ってもらったのだ。申し訳ないことをした。

ノエル攻略の鍵は、ノエルが好きな剣の世界に入り込むしかないか、とミーナは思った。後々、面倒な気がするから、やりたくない戦法なのだが。刺繍が苦手なミーナは地理と歴史と経済が得意だ。それを剣の世界で活かすには、軍略の話になるだろう。
「まあ、それも得意なんですけどぉ」
得意だから、ノエルは興味を持つだろう。
とりあえず無関心よりマシか、とミーナは方針を変えることにした。男子生徒が集まって熱く語るカフェに放課後乗り込むことにした。まずは、学園の授業優先だ。

「だからさあ、ここには補給部隊が必要なんだよ。それに気づかないから、負けたんだ」
なかなかノエルが見当たらないが、暑苦しく語る貴族令息たちがたくさんいる。ミーナはたいして興味がないが、ノエルには興味がある。しばらく様子を見ていると、たまに睨むような視線が飛んでくる。知らんぷりしていると、ノエルが扉を開けた。
「ノエル!こっちだ」
ノエルと仲の良い学友侯爵家のトリトが声をかける。軽く手を上げたノエルは、ミーナに気づいて片眉を動かした。ほとんど表情を変えないノエルにしては、珍しい。
「なんでここにいる」
「ミーナ、軍略をお勉強したいのですぅ」
「無駄だ」
ノエルは、友達の方へ移動する。ミーナはノエルの後ろを歩き、ついて行く。
「無駄ですかぁ、ミーナ、ハレシノ川の戦いは事前に察知できた雨季の情報をうまく使えず無駄にしたせいで負けたと思いますぅ」
「なんだって?」
ノエルが振り返った。
「ハレシノ川は、氾濫と静謐を繰り返す川ですぅ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

死に戻り王妃はふたりの婚約者に愛される。

豆狸
恋愛
形だけの王妃だった私が死に戻ったのは魔術学院の一学年だったころ。 なんのために戻ったの? あの未来はどうやったら変わっていくの? どうして王太子殿下の婚約者だった私が、大公殿下の婚約者に変わったの? なろう様でも公開中です。 ・1/21タイトル変更しました。旧『死に戻り王妃とふたりの婚約者』

婚約破棄の裏側で

豆狸
恋愛
こうして、いつまでも心配と称して執着していてはいけないとわかっています。 だけど私の心には今でも、襲い来る蜂から私を守ってくれた幼い騎士の姿が輝いているのです。

この誓いを違えぬと

豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」 ──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。 ※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。 なろう様でも公開中です。

夜会の夜の赤い夢

豆狸
恋愛
……どうして? どうしてフリオ様はそこまで私を疎んでいるの? バスキス伯爵家の財産以外、私にはなにひとつ価値がないというの? 涙を堪えて立ち去ろうとした私の体は、だれかにぶつかって止まった。そこには、燃える炎のような赤い髪の──

その瞳は囚われて

豆狸
恋愛
やめて。 あの子を見ないで、私を見て! そう叫びたいけれど、言えなかった。気づかなかった振りをすれば、ローレン様はこのまま私と結婚してくださるのだもの。

この幻が消えるまで

豆狸
恋愛
「君は自分が周りにどう見られているのかわかっているのかい? 幻に悋気を妬く頭のおかしい公爵令嬢だよ?」 なろう様でも公開中です。

彼女はだれからも愛される。

豆狸
恋愛
ランキュヌという少女は、だれからも愛される人間だった。 明るくて元気で、だれに対しても優しく思いやり深い。

初恋の相手と結ばれて幸せですか?

豆狸
恋愛
その日、学園に現れた転校生は私の婚約者の幼馴染で──初恋の相手でした。

処理中です...