【完結】いつだって貴方の幸せを祈っております

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第一話

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*この物語の主人公は、人によってはイラつくしゃべり方をします。
なんでも大丈夫な方はそのまま読んでいただけたら、うれしいです。
イラつくと思ったらすぐ閉じてください。


「ごめんなさい、ヒールを引っかけてしまってぇ」
ピンク髪に翡翠の瞳。小柄で、ノエルに寄りかかっていても体重を感じさせない。
「いや、大丈夫だ。怪我はないか?」
周囲は大騒ぎだ。ノエルには浮ついた噂が一つもなくて、ノエルに寄りかかっているミーナにはいろんな噂があるから。
「助かりました。ありがとうございますぅ」
ミーナは笑顔で、ノエルを見上げる。
上目遣いに効果があるはずだ。ミーナはこの戦法で負けたことがない。
「気にしなくていい」
ノエルは素っ気なかった。すぐにその場を離れようとする。ミーナは意外に思ったが、気にしなかった。
「足が痛くて立てないのですぅ」
嘘だ。本当はこのままマラソン大会に出場できるほど体力も気力もある。

「仕方がないな」
ノエルのつぶやきはミーナにしか聞こえていなかった。ふわりと体が浮く。ノエルにお姫様抱っこされたのだ。今日は偵察程度の接触と思っていたので、予想外のラッキーだ。それを見ていた生徒たちが、悲鳴を上げた。
「うるさい」
ノエルはそれほど大きな声を出していないが、周囲は静まった。
「さすがですぅ。ノエル様はガラナ公爵家の方ですもの」
「家は関係ないと思うが?」
ノエルは女嫌いで有名で、ミーナみたいに寄ってくるのは、自信過剰か恥知らずのどちらかだ。ミーナは自信過剰だなと、ノエルは見立てた。

保健室まで、その姿で現れたふたりを優しい先生が迎えて、ミーナの足首を診た。
「あらあらまあまあ、大変だわ。捻挫してる。これはしばらく痛くて大変ね。痛み止めの薬草と杖を貸し出すわよ。よく今まで平気な顔をしていたわね」
「身体強化の魔法をかけていたのですぅ」
ミーナの返事に一番驚いたのは、ノエルだ。ミーナは魔法を使えないと思っていたのだ。
「それにしても、不思議な組み合わせね。公爵と男爵で、クラスだってちがうでしょう?」
「足首をひねったところにノエル様がちょうどいらして、助けてくださいましたぁ」
ミーナは無邪気に笑ってみせた。ノエルを観察しながら。ノエルは用は済んだから、戻ろうとしか考えていないように見えた。やはり、敵は手強い。今まで落としてきた男たちとはちがう。




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