【完結】偏愛ラビリンス

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第三話

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セリンダは鏡を見ながら、くるくる回っていた。
「ねぇ、見て。変じゃない?」 
セリンダは15歳になった。もうすぐデビュタントを迎える。作ってもらった白いドレスで、くるくる回るセリンダは、小さい頃の無邪気さを残したまま、愛らしさを深め、容姿はどちらかというと綺麗系の、つまりは物凄い美少女だった。
「お嬢様、素晴らしいです。いつも以上にお美しいです」
侍女たちは手放しで褒めてくれる。立場上貶せないのもあるだろうが、みんな瞳がキラキラしている。嘘をついているようには見えない。セリンダはうれしくなって、またくるくる回る。13歳から学園に花嫁修行として通い始め、15歳で卒業。デビュタントを迎えて、大人になる。そして、結婚。しかし、セリンダには婚約者がいない。他の学友はみんな結婚予定があるのに。
「私って何をやってもイマイチだし、男性にもモテないのね」
侍女たちは慌て始める。そうではない。
セリンダは自己評価が低すぎる。はっきり言って、女神もかくやという容姿だけでも、求婚者は星の数ほどいる。ただ、みんなリスト公爵家に脅されて引き下がっている。そのあたりの事情をセリンダは聞かされていなかった。知っているのは伯爵夫婦と執事、侍女長とセリンダ専属侍女だけだ。

だから、婚約者がいないのだ。本来なら家格とほんわかした性格だけでも、婚約者はすぐ決まっただろう。それにとんでもなく美しい容姿。釣り合いの取れる相手は山ほどいる。それを家格の釣り合いから言うと若干合わない公爵家から、光栄にも嫡男の相手として水面下で話がまとまっているのだ。この結婚を邪魔できるとしたら、王族だけだろう。それすら、アルトの父が王弟であることを考えると、可能性は薄い。セリンダが知らないだけで、婚約者はいるようなものだ。問題は、アルトにある。

「なんでだろう。セリが大好きなのに」
14歳になったアルトは学園の中庭で頭を抱えていた。どうしてだかわからない。セリンダを前にすると、意地悪な言い方しかできない。
「好きだ」
と言うはずなのに、まるで嫌っているような態度をとってしまう。
「セリに嫌われちゃう」
アルトは普段とまったくちがう情けない顔をしていた。今朝、父に言われたのだ。
「そろそろ待てない。セリンダは15歳。お前が決心できないなら、求婚者たちを妨害するのをやめる」
そんなことになったら、セリンダは他の誰かと結婚するだろう。




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