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「ユキノ!」
手のひらサイズの小さなウサギが小さな体からは想像できない叫び声を上げた。
そして、ユキノの頭の上に飛んできた。
ユキノは驚いたが、ウサギの体重をまったく感じなかった。
「ユキノ!会いたかった」
恋人に伝えるような切実な声。幼いユキノでもその声音には心動いて、涙が止まらない。
「サティ!わ、わたしも会いたかった」
自然に頭に浮かんだ名前を呼ぶ。
幻獣は主人と認めたものから一生離れない。
主人とともに産まれ、主人とともに死ぬ。
そういう存在だった。その姿を見られるのは、主人の家族と同じく幻獣とともに生きる者だけ。
時には恋人よりも恋人のようで、または血を分けた家族のようで。
幻獣に性別はない。だが、たいていは主人と同じ性別に見える。
話し方や考え方が主人よりになるからかもしれない。
ユキノはサティを頭から手のひらに移した。
「サティ、何か知ってる?私はユキノだけど、雪乃なの?」
サティは少し考えていた。
「ユキノ、ユキノはユキノよ。もうつらいことは忘れていいの」
ユキノが雪乃だったときにつらかったことは、もう決して起こらない。
ユキノはそんな気がして、それ以上考えるのをやめた。3歳のユキノには難しすぎた。
家族は目を見開いていた。幻獣を初めて見た4兄弟は特にびっくりしている。
アユルだけは涼しい顔をしているが、
「僕の可愛いユキノには幻獣くらいいて当然」
と思っているからだ。
他の兄弟は最初の驚きから、好奇心が勝り、幻獣を近くで見ようとユキノのそばに集まった。
「かわいい」
コルンが無邪気な声を上げると、
ウサギみたいな幻獣は、よりかわいく、
小首を傾げてみせた。
幻獣は主人に似る。
夫妻はユキノの将来が心配になってきた。
まさかとは思うが、ユキノはいわゆる小悪魔系美女に育つのではないか。
頭が痛くなるシルファド夫妻だった。
手のひらサイズの小さなウサギが小さな体からは想像できない叫び声を上げた。
そして、ユキノの頭の上に飛んできた。
ユキノは驚いたが、ウサギの体重をまったく感じなかった。
「ユキノ!会いたかった」
恋人に伝えるような切実な声。幼いユキノでもその声音には心動いて、涙が止まらない。
「サティ!わ、わたしも会いたかった」
自然に頭に浮かんだ名前を呼ぶ。
幻獣は主人と認めたものから一生離れない。
主人とともに産まれ、主人とともに死ぬ。
そういう存在だった。その姿を見られるのは、主人の家族と同じく幻獣とともに生きる者だけ。
時には恋人よりも恋人のようで、または血を分けた家族のようで。
幻獣に性別はない。だが、たいていは主人と同じ性別に見える。
話し方や考え方が主人よりになるからかもしれない。
ユキノはサティを頭から手のひらに移した。
「サティ、何か知ってる?私はユキノだけど、雪乃なの?」
サティは少し考えていた。
「ユキノ、ユキノはユキノよ。もうつらいことは忘れていいの」
ユキノが雪乃だったときにつらかったことは、もう決して起こらない。
ユキノはそんな気がして、それ以上考えるのをやめた。3歳のユキノには難しすぎた。
家族は目を見開いていた。幻獣を初めて見た4兄弟は特にびっくりしている。
アユルだけは涼しい顔をしているが、
「僕の可愛いユキノには幻獣くらいいて当然」
と思っているからだ。
他の兄弟は最初の驚きから、好奇心が勝り、幻獣を近くで見ようとユキノのそばに集まった。
「かわいい」
コルンが無邪気な声を上げると、
ウサギみたいな幻獣は、よりかわいく、
小首を傾げてみせた。
幻獣は主人に似る。
夫妻はユキノの将来が心配になってきた。
まさかとは思うが、ユキノはいわゆる小悪魔系美女に育つのではないか。
頭が痛くなるシルファド夫妻だった。
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