【完結】冷たい手の熱

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2歳にしては賢すぎるユキノを両親は心配していた。
「この間、ちょっとピアノを弾いていたら、横に座らせていたユキノがキラキラの目で弾いてみたいって言うから雑音覚悟で、弾かせてみたの。見事に私が弾いた通りに弾いたわ。びっくりして言葉が出てこなかった」
ミランダの話を聞いて、アランも話し始めた。「簡単な逃げ方を教えておこうと思ったのに、なぜか必殺技をいくつか伝授してしまった」
貴族の子どもは誘拐などの危険があるため、女の子でも、簡単な訓練をする。
アランはそのつもりで、非力な子どもでも使える技の訓練を始めた。しかし、気づいたら、殺傷能力がある技までユキノはマスターしていた。

「やっぱり幻獣が一緒だから、少しちがうのかな?」
アランの呟きに、ミランダは少しため息をついた。
「アラン。幻獣のことはわからないことの方が多いわ。めったに祝福を受ける子はいないのだから。それを基準に考えるのはやめましょう?
ユキノをよく見て理解して導いていきたいわ」
「ミランダ。君のように優しく聡明な美人と結婚できて、僕は幸せだよ」
「まあ、アランったら」
ふたりの話し合いは脱線していったが、ユキノの望むことはすべてやらせてみようと決めた。

ユキノはアユルが帰って来るまで、1人で日向ぼっこをしていることもある。
母様がお昼寝よ、と呼ぶまでの時間、
あたたかな中庭の東屋で寛ぐのだ。
そうしていると、最近なんとなく変な感じがする。ユキノの頭の中に、他の部分がある。うまく言えない。言えないけれど、自分の中に自分では動かせない何がある。
それを外に出す方法をユキノは知っているはずだ。でも、思い出せない。
どうしたらいいのか。
家族に相談したらいいのだが、それもなぜか躊躇われた。

ユキノとユキノじゃない部分とあと他にも何かありそうだった。
けれどまだ2歳のユキノには思い出すことができないのだ。神様のアラームは正確で決して壊れない。
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