5 / 6
第五話
しおりを挟む
ファリナの魔法研究はどんどん進化した。アビゼルもまた、いつになく真面目に取り組んだ結果、2人の研究はとんでもない高みに昇っていた。
それはある意味危険なことだった。
2人の研究成果を盗もうとするもの、
幼いファリナを誘拐しようとするもの、
ひそかに2人を殺害しようとするもの。
どの世界でも出る杭は打たれやすい。
侯爵家の後見がなければ、2人はきっと今ごろ天国にいたかもしれない。
ミーは、一言だけ。
「人間って物騒なんだな」
ファリナは、その通りです、と口にはしなかった。
2人の研究は先進的だが、決して危険なものではない。生活を便利にする魔法が多い。
それでも、困ったり邪魔に思われたりするらしい。
「まぁいいさ。そのうちわかる」
アビゼルの言葉にファリナは頷いた。
ファリナはここにいることが居心地よかった。アビゼルの隣にいるのは自分でありたい。でも、それは儚い夢だ。
アビゼルはファリナが力をコントロールできるようになるまでの師匠でしかない。
アビゼルの隣にはきっと華やかな令嬢が似合う。
ファリナはそのことをなるべく考えないようにしていた。
ファリナは魔法のコントロールがかなり上手くなっていた。アビゼルにそれを隠したかったが、無理だ。師匠なのだから。
だから、せめて研究のパートナーとして役に立って、そばに置いてもらえたら、と必死なのだった。
研究は楽しい。だが、いつか、もうお前はいらない、とアビゼルに言われる日がこわくてしかたがない。
でも、きっともうすぐそんな日が来る。
ファリナには誰もいない。何も残らない。今までずっとそうだった。
ファリナの願いは叶わないようにできているのだ。
そう思ってあきらめるしかない。
「ファリナはバカだな」
ミーが急に言い出した。
「俺がいて、何が足りない?」
そうだ、今までとはちがう。
ファリナの顔色がよくなる。
「ミーはずっといてくれる?」
「当たり前だろ」
ファリナは泣いた。目が溶けてしまいそうなほど。
ひとりじゃない。
自分には、大切なミーがいる。
ファリナの心は明るくなった。
それはある意味危険なことだった。
2人の研究成果を盗もうとするもの、
幼いファリナを誘拐しようとするもの、
ひそかに2人を殺害しようとするもの。
どの世界でも出る杭は打たれやすい。
侯爵家の後見がなければ、2人はきっと今ごろ天国にいたかもしれない。
ミーは、一言だけ。
「人間って物騒なんだな」
ファリナは、その通りです、と口にはしなかった。
2人の研究は先進的だが、決して危険なものではない。生活を便利にする魔法が多い。
それでも、困ったり邪魔に思われたりするらしい。
「まぁいいさ。そのうちわかる」
アビゼルの言葉にファリナは頷いた。
ファリナはここにいることが居心地よかった。アビゼルの隣にいるのは自分でありたい。でも、それは儚い夢だ。
アビゼルはファリナが力をコントロールできるようになるまでの師匠でしかない。
アビゼルの隣にはきっと華やかな令嬢が似合う。
ファリナはそのことをなるべく考えないようにしていた。
ファリナは魔法のコントロールがかなり上手くなっていた。アビゼルにそれを隠したかったが、無理だ。師匠なのだから。
だから、せめて研究のパートナーとして役に立って、そばに置いてもらえたら、と必死なのだった。
研究は楽しい。だが、いつか、もうお前はいらない、とアビゼルに言われる日がこわくてしかたがない。
でも、きっともうすぐそんな日が来る。
ファリナには誰もいない。何も残らない。今までずっとそうだった。
ファリナの願いは叶わないようにできているのだ。
そう思ってあきらめるしかない。
「ファリナはバカだな」
ミーが急に言い出した。
「俺がいて、何が足りない?」
そうだ、今までとはちがう。
ファリナの顔色がよくなる。
「ミーはずっといてくれる?」
「当たり前だろ」
ファリナは泣いた。目が溶けてしまいそうなほど。
ひとりじゃない。
自分には、大切なミーがいる。
ファリナの心は明るくなった。
10
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
【完結】冷たい手の熱
ここ
ファンタジー
雪乃は今日も何も食べる物をもらえなかった。水道の水をたくさん飲んで、なんとか耐えていた。でも、動くのがつらくなり、意識も朦朧としてきた。
雪乃の家族は母だけだった。
母の帰りを祈るような気持ちで待っていた。3歳の雪乃の世界は母と狭いアパートがすべてだった。
だが、やっと帰ってきた母は、すぐに出て行ってしまう。機嫌の悪い母を
雪乃は怒らせてしまう。
*R15は念のため。虐待はつらくて読めない方は要注意。
【完結】令嬢は愛されたかった・冬
ここ
ファンタジー
伯爵令嬢ファリナは、実母の出自から、
家族に疎んじられていた。
誰からも愛されたことのない人生。
けれど、ファリナは魔法使いの適正があった。
使い魔とともに、魔法使いに弟子入りする。そこで待っていたのはこれまでとはまったく別世界で。
【完結】平民聖女の愛と夢
ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
【完結】薔薇の花と君と
ここ
恋愛
公爵令嬢フィランヌは、誤解されやすい女の子。甘やかし放題の家族には何もさせてもらえない。この世のものとは思えぬ美貌とあり余る魔力。
なのに引っ込み思案で大人しい。
家族以外からは誤解されて、ワガママ令嬢だと思われている。
そんな彼女の学園生活が始まる。
(完結)記憶喪失令嬢は幸せを掴む
あかる
恋愛
ここはどこ?そして私は…
川に流されていた所を助けられ、何もかもを忘れていた私は、幸運にも助けて頂けました。新たな名前、そして仕事。私はここにいてもいいのでしょうか?
ご都合主義で、ゆるゆる設定です。完結してます。忘れなかったら、毎日投稿します。
ご指摘があり、罪と罰の一部を改正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる