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第五話

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ファリナの魔法研究はどんどん進化した。アビゼルもまた、いつになく真面目に取り組んだ結果、2人の研究はとんでもない高みに昇っていた。
それはある意味危険なことだった。
2人の研究成果を盗もうとするもの、
幼いファリナを誘拐しようとするもの、
ひそかに2人を殺害しようとするもの。
どの世界でも出る杭は打たれやすい。

侯爵家の後見がなければ、2人はきっと今ごろ天国にいたかもしれない。
ミーは、一言だけ。
「人間って物騒なんだな」
ファリナは、その通りです、と口にはしなかった。
2人の研究は先進的だが、決して危険なものではない。生活を便利にする魔法が多い。
それでも、困ったり邪魔に思われたりするらしい。
「まぁいいさ。そのうちわかる」
アビゼルの言葉にファリナは頷いた。

ファリナはここにいることが居心地よかった。アビゼルの隣にいるのは自分でありたい。でも、それは儚い夢だ。
アビゼルはファリナが力をコントロールできるようになるまでの師匠でしかない。
アビゼルの隣にはきっと華やかな令嬢が似合う。
ファリナはそのことをなるべく考えないようにしていた。

ファリナは魔法のコントロールがかなり上手くなっていた。アビゼルにそれを隠したかったが、無理だ。師匠なのだから。
だから、せめて研究のパートナーとして役に立って、そばに置いてもらえたら、と必死なのだった。
研究は楽しい。だが、いつか、もうお前はいらない、とアビゼルに言われる日がこわくてしかたがない。

でも、きっともうすぐそんな日が来る。
ファリナには誰もいない。何も残らない。今までずっとそうだった。
ファリナの願いは叶わないようにできているのだ。
そう思ってあきらめるしかない。
「ファリナはバカだな」
ミーが急に言い出した。
「俺がいて、何が足りない?」
そうだ、今までとはちがう。
ファリナの顔色がよくなる。
「ミーはずっといてくれる?」
「当たり前だろ」
ファリナは泣いた。目が溶けてしまいそうなほど。
ひとりじゃない。
自分には、大切なミーがいる。
ファリナの心は明るくなった。

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