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「あー、そんなこともあったわね」
金髪碧眼のどこから見ても美しい、まるで妖精のような美人が、真っ白なウェディングドレスを身に纏い、微笑んだ。
ただのウェディングドレスではない、レースも真珠も惜しみなく使われていて、着ている美人をさらに美しく見せた。
彼女はこれから、結婚式を挙げる。最愛の人と。

「ソアラーヌ様。時間です」
迎えがやって来てソアラーヌはミリエルトの待つ大聖堂に移動する。
ソアラーヌは大人になるほど美しくなるタイプだったらしく、ミリエルトの嫉妬からくる暴走にはかなり悩まされた。
「まあ、きっと今後もそうね」
極上の笑顔を見た周囲の人々は時が止まったらいいと思った。
これほど美しいものは知らない。
噂には聞いていたが、殿下が独り占めして、あまり外に出したがらないため、殿下の美姫については、噂ばかりが先行していた。

しかし、迎えに来た侍女も神官も護衛騎士も息を呑んだ。
美しすぎる。
男女を超えて全員が殿下の気持ちを理解した。
(たしかに、こんなに美しい人がいたら、危険がいっぱいだ)
誘拐、誘惑、一目惚れ。
ミリエルト殿下の美しさも尋常ではないが、ソアラーヌのイメージは幼い頃のままだった。だから、驚いたのだ。
(こんなに美しく成長されるとは)

もうすぐ大聖堂のミリエルトの隣に立つ。
生涯を共に生きる為に。
ミリエルトはソアラーヌのことになると大変だ。結婚式の準備も。
「ソアには、この色じゃない、こっちだ」
普通は花嫁と花嫁の母が決めそうな諸々をミリエルトが決めた。
ソアラーヌはずっと笑いをこらえていた。
「ミリトは本当に私が好きね」
「当然だ。君は昔から迂闊だからね。最近は人数が増えてるし」
「えっ?」
「あ、なんでもない」
なんとなく不自然なミリエルトをソアラーヌは追求しなかった。

「ソア」
結婚式、パレード、ご挨拶、イベントごとが終わり、2人はふたりの寝室で正座で向かい合った。
「ミリト」
ミリエルトの瞳が輝く。ずっと焦がれていた大事な人と結ばれる。
ソアラーヌは一生をミリエルトと生きると決めた。
ふたりは少しぎこちなく微笑みあった。
ずっと一緒にいたから、線引きが難しい。
けれど、ミリエルトは線を超えて、ソアラーヌを強く抱きしめた。
ずっとずっと一緒にいると心の中で誓いながら。



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