【完結】平民聖女の愛と夢

ここ

文字の大きさ
上 下
4 / 10

第四話

しおりを挟む
ソフィは生まれて初めて村から外に出た。
徒歩だから、野宿をしながら、王都を目指した。どれくらい時間がかかるかわからない。お金もあまりないから、乗合馬車にも乗れなかった。

気長に歩いて行こう、そう決めた。
マークのことを時々思い出す。悲しかった。でも、自分はやれることはすべてやったと誰に向かっても言えた。
村から追い出されたのも悲しかったが、
もう暮らせないのはわかっていた。

王都で、どこかの店の雑用係や店員見習いになれたらいいな、と思っている。
住み込みで働けたらさらにいい。
そんなことを考えながら、地道に歩いていると、王都の次に大きな街に着いた。
門番は身分証を確認すると、ソフィを通した。
「しかし、君はあまりにボロボロで、臭う。この街に入ってからでいいから、何とかしなさい」

門番に言われる前から、ソフィだって気になっていた。でも今は、生きるのが精一杯で洋服や風呂に使うお金なんてないのだ。
「ご忠告をありがとうございます。でも、お金がないのです」
ふむ、門番は考えてくれているようだ。
ずいぶんお節介なんだなと思った。

「それなら、ここへ行って仕事をして、お金をもらいなさい」
門番は地図を差し出して、示した。
ギルドと書かれていた。
ソフィは、聞いたことはあったけれど、あまり詳しくない。
でも、大人しく頷きながら、
「ありがとうございます。行ってみます」

ギルドには受け付けがあり、行列していた。ソフィは恐る恐る、列の1番後ろに並んだ。
1時間くらいかかって、やっと受け付けにたどり着いた。
「得意な魔法はある?魔力量は?
それとも弓や剣が使えるのかしら?」
受け付けのお姉さんはハキハキと話す。
「あら、新しい人なのね」
じゃあ、まずは計測ね。それが何のことかわからないまま、ソフィは白い球を握らされた。
 
すると、球は金色に光った。あまりの光の強さに1番後ろに並んだ冒険者さえ目をつむった。
「信じられない。光魔法、魔力量は無限」
「あなた、聖女なの?」
「ちがいます。ただの村人です」
そんなわけないわ、とギルドのお姉さんが呟いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女と氷の貴公子

ここ
ファンタジー
侍女と氷の貴公子の続編。 子爵令嬢でありながら、侍女になったアリセンティアを魔法使いカルミンツが、聖女と言い出した。 そんなことあるわけないと反発したアリセンティアだが、教会に連れて行かれて、本物の聖女だとわかる。 アリセンティアはカルミンツと ともに活躍を始めるが…

妹が聖女になってから連絡が取れません

毒島醜女
ファンタジー
自作、『団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました』と同じ世界観です。 ※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた―― ※注意 暴力(性的なものを含む)、暴言。 毎日0時に更新

【完結】彼女の名前は誰も知らない

ここ
ファンタジー
諜報活動をしている猫の獣人、No.115。推定年齢は8歳。任務についた公爵邸で、侍女見習いに化ける。公爵邸は失った娘によく似た侍女見習いに驚く。No.115はそれも利用して、命がけの任務遂行を目指す。 だが、失くした娘に似たNo.115に、公爵一家は優しくて…

【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです

山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。 今は、その考えも消えつつある。 けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。 今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。 ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。

ヒロイン聖女はプロポーズしてきた王太子を蹴り飛ばす

蘧饗礪
ファンタジー
 悪役令嬢を断罪し、運命の恋の相手に膝をついて愛を告げる麗しい王太子。 お約束の展開ですか? いえいえ、現実は甘くないのです。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

聖女らしくないと言われ続けたので、国を出ようと思います

菜花
ファンタジー
 ある日、スラムに近い孤児院で育ったメリッサは自分が聖女だと知らされる。喜んで王宮に行ったものの、平民出身の聖女は珍しく、また聖女の力が顕現するのも異常に遅れ、メリッサは偽者だという疑惑が蔓延する。しばらくして聖女の力が顕現して周囲も認めてくれたが……。メリッサの心にはわだかまりが残ることになった。カクヨムにも投稿中。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

処理中です...