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第一話
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シュゼット・マリナーは、猫の獣人としてこの世に生を受けた。
父はビリー・マリナー伯爵。シュゼットを文字通り猫可愛がりしている。
「旦那様。そんなに甘やかしては、シュゼット様のためになりませんよ」
乳母のイルドは常々、マリナー伯爵をたしなめる。
「いくら、愛するミーナ様の忘形見とはいえ」
伯爵は、妻であるミーナを愛していた。政略結婚の多い貴族には珍しいことだった。
だが、ミーナはシュゼットを産んで力尽きて亡くなった。
そのときの伯爵のことを思い出すと、イルドは悲しくなる。
伯爵はあまりのショックに娘のシュゼットでさえ目に入らなくなっていた。
シュゼットが無事に育ったのも、イルドがいたからだ。
シュゼットはミーナと同じ猫獣人だった。
小さな頃はほとんど子猫として過ごした。
イルドは令嬢の乳母というより、小さな子猫の命の番人のようだった。
1日に何度もミルクを飲ませ、あたたかい寝床を作り、
なんとか小さな命を守った。
2ヶ月過ぎて、やっとマリナー伯爵は、娘に名前をつける前向きな気持ちになった。
シュゼットとつけたのはマリナー伯爵だった。
そしてそれからは、文字通りの猫可愛がりだった。
「シュゼット様はもう自分で猫になったり人間になったり自由にできるのですし」
「それでも、心配なのが親なんだ。ましてやあの子には獣人として導くことができる母がいない。私が獣人だったらよかったのだが」
シュゼットは今夜、13歳になったお祝いに王宮での夜会に参加する。
白いドレスを試着したとき、とてもうれしそうにしていた。
「イルド、このドレスどうかしら?」
くるくると回りながら、シュゼットはうれしそうだ。
普段はドレスより動きやすい服を好むシュゼットでさえ、とてもうれしそうなのが、イルドもうれしかった。
「よくお似合いですよ。国王陛下にちゃんとご挨拶してくださいね」
「ええ。大丈夫よ!」
金髪に緑の瞳はキラキラ輝き、王子様たちにも注目されるかもしれない、とイルドは少し心配になった。伯爵のことを笑えない。
父はビリー・マリナー伯爵。シュゼットを文字通り猫可愛がりしている。
「旦那様。そんなに甘やかしては、シュゼット様のためになりませんよ」
乳母のイルドは常々、マリナー伯爵をたしなめる。
「いくら、愛するミーナ様の忘形見とはいえ」
伯爵は、妻であるミーナを愛していた。政略結婚の多い貴族には珍しいことだった。
だが、ミーナはシュゼットを産んで力尽きて亡くなった。
そのときの伯爵のことを思い出すと、イルドは悲しくなる。
伯爵はあまりのショックに娘のシュゼットでさえ目に入らなくなっていた。
シュゼットが無事に育ったのも、イルドがいたからだ。
シュゼットはミーナと同じ猫獣人だった。
小さな頃はほとんど子猫として過ごした。
イルドは令嬢の乳母というより、小さな子猫の命の番人のようだった。
1日に何度もミルクを飲ませ、あたたかい寝床を作り、
なんとか小さな命を守った。
2ヶ月過ぎて、やっとマリナー伯爵は、娘に名前をつける前向きな気持ちになった。
シュゼットとつけたのはマリナー伯爵だった。
そしてそれからは、文字通りの猫可愛がりだった。
「シュゼット様はもう自分で猫になったり人間になったり自由にできるのですし」
「それでも、心配なのが親なんだ。ましてやあの子には獣人として導くことができる母がいない。私が獣人だったらよかったのだが」
シュゼットは今夜、13歳になったお祝いに王宮での夜会に参加する。
白いドレスを試着したとき、とてもうれしそうにしていた。
「イルド、このドレスどうかしら?」
くるくると回りながら、シュゼットはうれしそうだ。
普段はドレスより動きやすい服を好むシュゼットでさえ、とてもうれしそうなのが、イルドもうれしかった。
「よくお似合いですよ。国王陛下にちゃんとご挨拶してくださいね」
「ええ。大丈夫よ!」
金髪に緑の瞳はキラキラ輝き、王子様たちにも注目されるかもしれない、とイルドは少し心配になった。伯爵のことを笑えない。
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