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4.婚約破棄と求婚
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信じられませんわ。婚約者候補から、本当の婚約者との王命が下りましたの。王命では逆らえませんわ。公爵家といえども、王家より立場は低いのです。
「アリー、こんなことになってすまない」
「お父様のせいではありませんわ」
家族みんなが暗い顔をしています。恋愛結婚した両親の影響で、貴族とはいえ、好ましい相手に嫁がせたいと小さな頃から聞いて育ちました。アリアナ子爵令嬢が、愛妾か側妃かどちらになるかわかりませんが、愛情は独り占めされるに決まっています。その上、私と王太子の相性はあまりよろしくありませんの。ただただ将来の王妃としての責務を果たすだけの存在になるのでしょう。
「アリドレア・サイド、貴様は公爵令嬢であることを利用して、自分より弱い者を虐げている。そのような女とは結婚できない。」
王太子は夜会の途中、突然叫び出しました。王命での婚約が、王太子も気に入らなかったのですわ。まぁ、わかっていたことですけれど。夜会の真っ最中に叫び出すなんてまったく配慮がありませんわ。私にも参加者にも。その上、王太子の傍らには、アリアナ様がいますのよ。必要以上にべったりくっついています。
「婚約破棄はたしかに承りました。ですが、弱い者を虐めて何が楽しいんですの?私がそんな馬鹿なことをすると誰が言っていますの?」
王太子はお怒りです。すごい目で睨んできます。アリアナ様は私を見て震えながら、
「アリドレア様はいつも私に冷たいのです」
と言いますの。アリアナ様とはほとんど話したことがありませんのに。
婚約破棄はうれしいですわ。もう結婚は難しいかもしれませんが、優しい家族と暮らせるなら、何の問題もありません。くうちゃんもいますし。ただ、お兄様たちの結婚の邪魔にはなりたくありませんわ。王都から領地へ引っ込んで静かに暮らすのもいいかもしれませんわ。
「アリドレア、フリーになった君に、申し込みたい」
考え込んでいた私の前にそっと跪くのはオスニア第二皇子。周囲を黄色い悲鳴で満たします。
「私の妃になってほしい」
オスニア皇子は、女性を見る目も壊滅的ですわ。私はもう政略の駒にさえなれませんのに。
「なぜですの?」
「もちろん、君が好きだから」
やっぱり、ユーモアのセンスも壊滅的ですわ。高貴な御身にかかわらず、いろんな物を失っていらっしゃる。
「アリー、こんなことになってすまない」
「お父様のせいではありませんわ」
家族みんなが暗い顔をしています。恋愛結婚した両親の影響で、貴族とはいえ、好ましい相手に嫁がせたいと小さな頃から聞いて育ちました。アリアナ子爵令嬢が、愛妾か側妃かどちらになるかわかりませんが、愛情は独り占めされるに決まっています。その上、私と王太子の相性はあまりよろしくありませんの。ただただ将来の王妃としての責務を果たすだけの存在になるのでしょう。
「アリドレア・サイド、貴様は公爵令嬢であることを利用して、自分より弱い者を虐げている。そのような女とは結婚できない。」
王太子は夜会の途中、突然叫び出しました。王命での婚約が、王太子も気に入らなかったのですわ。まぁ、わかっていたことですけれど。夜会の真っ最中に叫び出すなんてまったく配慮がありませんわ。私にも参加者にも。その上、王太子の傍らには、アリアナ様がいますのよ。必要以上にべったりくっついています。
「婚約破棄はたしかに承りました。ですが、弱い者を虐めて何が楽しいんですの?私がそんな馬鹿なことをすると誰が言っていますの?」
王太子はお怒りです。すごい目で睨んできます。アリアナ様は私を見て震えながら、
「アリドレア様はいつも私に冷たいのです」
と言いますの。アリアナ様とはほとんど話したことがありませんのに。
婚約破棄はうれしいですわ。もう結婚は難しいかもしれませんが、優しい家族と暮らせるなら、何の問題もありません。くうちゃんもいますし。ただ、お兄様たちの結婚の邪魔にはなりたくありませんわ。王都から領地へ引っ込んで静かに暮らすのもいいかもしれませんわ。
「アリドレア、フリーになった君に、申し込みたい」
考え込んでいた私の前にそっと跪くのはオスニア第二皇子。周囲を黄色い悲鳴で満たします。
「私の妃になってほしい」
オスニア皇子は、女性を見る目も壊滅的ですわ。私はもう政略の駒にさえなれませんのに。
「なぜですの?」
「もちろん、君が好きだから」
やっぱり、ユーモアのセンスも壊滅的ですわ。高貴な御身にかかわらず、いろんな物を失っていらっしゃる。
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