2 / 10
1
しおりを挟む
「アルマド令嬢、この数式が解けますか?」
数学の教師がフィランヌを指した。
フィランヌに苦手科目はない。
黒板に解答を書いていく。
一年生のフィランヌたちが解けるはずのない問題。澱みなく解いていくフィランヌを教師は面白くなさそうに見ている。
生徒たちも最初はにやにやしていたが、今は不穏な空気だ。
はっきり言うと、フィランヌはこの学園で浮いていた。
公爵令嬢であるのに、取り巻きも友達も1人もいない。
フィランヌの家族が心配していた通りだ。
家族はフィランヌが引っ込み思案だけれど、優しい娘であることを知っていた。
けれど、学園ではそう受け取られなかった。引っ込み思案が強く出てしまい、出だしの親睦会で、話しかけてくれた級友にうまく返事ができなかったのだ。
「お高くとまったやな奴」
と、思われてしまった。
そこからは雪だるま式に転がって、すっかり嫌な子と認識されている。
教師の中にもこうして嫌がらせをするものがいるほどだ。
フィランヌが休んだり泣いたりすれば、また、状況は変わっただろう。
我慢強いフィランヌは家族にも打ち明けず、嫌がらせに耐えて、学園に通っていた。
フィランヌはたった一つ学園に希望があった。一つ上に婚約者がいるのだ。
この国の第三王子である。ただ、この婚約は発表されておらず、内定となっている。
だから、フィランヌへの嫌がらせは止まらない。けれど、フィランヌは、第三王子に恋をしていた。
お昼に彼と会えるから、学園はつらくなかった。
一年が過ぎた。フィランヌへの嫌がらせは止まない。ひどくなることはないが、いつも、教材がなくなったり、学習範囲以上の宿題を1人だけ与えられたり、教師にも生徒にも嫌われていた。
それでもフィランヌは、お昼だけを支えに学園に通い続けた。
ところが、最近、第三王子の態度がおかしい。待ち合わせ場所に来ることが少なくなった。来ても、なんだか上の空なのだ。
「殿下。私は何か失礼をしてしまいましたか?」
「いや、別に。ちょっと忙しいんだ」
そう言われた直後、
「ミリー、お昼のお弁当作ってきたよ」
フィランヌが見たことのない令嬢が、突然現れた。
殿下を愛称で呼んでいることにフィランヌは驚いた。
「すまないな、アルマド嬢。今日は別の約束があるんだ」
数学の教師がフィランヌを指した。
フィランヌに苦手科目はない。
黒板に解答を書いていく。
一年生のフィランヌたちが解けるはずのない問題。澱みなく解いていくフィランヌを教師は面白くなさそうに見ている。
生徒たちも最初はにやにやしていたが、今は不穏な空気だ。
はっきり言うと、フィランヌはこの学園で浮いていた。
公爵令嬢であるのに、取り巻きも友達も1人もいない。
フィランヌの家族が心配していた通りだ。
家族はフィランヌが引っ込み思案だけれど、優しい娘であることを知っていた。
けれど、学園ではそう受け取られなかった。引っ込み思案が強く出てしまい、出だしの親睦会で、話しかけてくれた級友にうまく返事ができなかったのだ。
「お高くとまったやな奴」
と、思われてしまった。
そこからは雪だるま式に転がって、すっかり嫌な子と認識されている。
教師の中にもこうして嫌がらせをするものがいるほどだ。
フィランヌが休んだり泣いたりすれば、また、状況は変わっただろう。
我慢強いフィランヌは家族にも打ち明けず、嫌がらせに耐えて、学園に通っていた。
フィランヌはたった一つ学園に希望があった。一つ上に婚約者がいるのだ。
この国の第三王子である。ただ、この婚約は発表されておらず、内定となっている。
だから、フィランヌへの嫌がらせは止まらない。けれど、フィランヌは、第三王子に恋をしていた。
お昼に彼と会えるから、学園はつらくなかった。
一年が過ぎた。フィランヌへの嫌がらせは止まない。ひどくなることはないが、いつも、教材がなくなったり、学習範囲以上の宿題を1人だけ与えられたり、教師にも生徒にも嫌われていた。
それでもフィランヌは、お昼だけを支えに学園に通い続けた。
ところが、最近、第三王子の態度がおかしい。待ち合わせ場所に来ることが少なくなった。来ても、なんだか上の空なのだ。
「殿下。私は何か失礼をしてしまいましたか?」
「いや、別に。ちょっと忙しいんだ」
そう言われた直後、
「ミリー、お昼のお弁当作ってきたよ」
フィランヌが見たことのない令嬢が、突然現れた。
殿下を愛称で呼んでいることにフィランヌは驚いた。
「すまないな、アルマド嬢。今日は別の約束があるんだ」
17
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
運命の相手が変態すぎてどうすればいいですか?
日之影ソラ
恋愛
この国で生まれた貴族の娘は、十八歳になると運命の相手を見つける儀式を受ける。大聖堂に集まり、透明な水晶に映し出される人物こそ、その人が生涯を共にする相手。
一度見てしまえば運命には抗えない。強制的に一緒にいることを義務付けられる。
「せめて普通の人でありますように……」
レイネシアも十八歳になり儀式を受けることになった。そして浮かび上がった人物を見て、周囲の人々はクスクスと笑う。
「あなたの相手は、アレクト殿下です」
「え……」
なんと運命の相手に選ばれたのは王子様だった。
でも、ただの王子様じゃない。
人間に一切興味がなく、動物しか愛せない変わり者――世間を騒がす『変態王子』。
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!
貴方誰ですか?〜婚約者が10年ぶりに帰ってきました〜
なーさ
恋愛
侯爵令嬢のアーニャ。だが彼女ももう23歳。結婚適齢期も過ぎた彼女だが婚約者がいた。その名も伯爵令息のナトリ。彼が16歳、アーニャが13歳のあの日。戦争に行ってから10年。戦争に行ったまま帰ってこない。毎月送ると言っていた手紙も旅立ってから送られてくることはないし相手の家からも、もう忘れていいと言われている。もう潮時だろうと婚約破棄し、各家族円満の婚約解消。そして王宮で働き出したアーニャ。一年後ナトリは英雄となり帰ってくる。しかしアーニャはナトリのことを忘れてしまっている…!
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる