【完結】薔薇の花と君と

ここ

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「アルマド令嬢、この数式が解けますか?」
数学の教師がフィランヌを指した。
フィランヌに苦手科目はない。
黒板に解答を書いていく。
一年生のフィランヌたちが解けるはずのない問題。澱みなく解いていくフィランヌを教師は面白くなさそうに見ている。
生徒たちも最初はにやにやしていたが、今は不穏な空気だ。
はっきり言うと、フィランヌはこの学園で浮いていた。
公爵令嬢であるのに、取り巻きも友達も1人もいない。

フィランヌの家族が心配していた通りだ。
家族はフィランヌが引っ込み思案だけれど、優しい娘であることを知っていた。
けれど、学園ではそう受け取られなかった。引っ込み思案が強く出てしまい、出だしの親睦会で、話しかけてくれた級友にうまく返事ができなかったのだ。
「お高くとまったやな奴」
と、思われてしまった。

そこからは雪だるま式に転がって、すっかり嫌な子と認識されている。
教師の中にもこうして嫌がらせをするものがいるほどだ。
フィランヌが休んだり泣いたりすれば、また、状況は変わっただろう。
我慢強いフィランヌは家族にも打ち明けず、嫌がらせに耐えて、学園に通っていた。

フィランヌはたった一つ学園に希望があった。一つ上に婚約者がいるのだ。
この国の第三王子である。ただ、この婚約は発表されておらず、内定となっている。
だから、フィランヌへの嫌がらせは止まらない。けれど、フィランヌは、第三王子に恋をしていた。
お昼に彼と会えるから、学園はつらくなかった。

一年が過ぎた。フィランヌへの嫌がらせは止まない。ひどくなることはないが、いつも、教材がなくなったり、学習範囲以上の宿題を1人だけ与えられたり、教師にも生徒にも嫌われていた。
それでもフィランヌは、お昼だけを支えに学園に通い続けた。

ところが、最近、第三王子の態度がおかしい。待ち合わせ場所に来ることが少なくなった。来ても、なんだか上の空なのだ。
「殿下。私は何か失礼をしてしまいましたか?」
「いや、別に。ちょっと忙しいんだ」
そう言われた直後、
「ミリー、お昼のお弁当作ってきたよ」
フィランヌが見たことのない令嬢が、突然現れた。
殿下を愛称で呼んでいることにフィランヌは驚いた。
「すまないな、アルマド嬢。今日は別の約束があるんだ」



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