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部屋の扉を開けると、そこは黒い空間だった。暗いだけではなく、空気が重い。
淀んでいる。
「カルミンツ様、ここに連れて来ましたのが、侍女のアリセンティアです。専属侍女として今日からお仕えします」
カルミンツ様と呼ばれた人は、部屋の真ん中に立っていた。
暗闇の中でもかろうじて存在はわかった。
「侍女などいらぬ。それに、ここいては命が危ない」
「大丈夫です。ここにいます侍女は、魔力がありません。影響は受けないでしょう。カルミンツ様、どうか専属侍女を受け入れてください」
「なぜそんなに侍女をつけようとする?」
カルミンツ様と呼ばれる人は声からすると若い男性のようだ。
「カルミンツ様のような尊き方が、自分で何もかもなさるなんて、あまりにもお労しい。どうぞアリセンティアにお世話をさせてください」
カルミンツはため息をついた。
「気に入らなければ、追い出す。それでもよいなら」
こうして、アリセンティアはカルミンツ様の専属侍女になった。
あの暗闇は魔法酔いしているため、無意識に使ってしまう魔力のせいで、カルミンツ様はどうにか自分で自分の世話をしているが、本当はかなりつらいはずで、ずっと寝ていた方がいいという説明を受けて、アリセンティアは離れに行くことになった。寝泊まりも離れになるそうだ。
カルミンツ様がどんな身分の方なのかは説明してもらえなかった。
尋ねても執事がはぐらかす。
こうなるともう執事から話を引き出すのは無理だ。
アリセンティアは、ともかくカルミンツ様が少しでも楽になるようお世話しようと決めて、覚悟して、離れの扉を開いた。
アリセンティアの運命の扉だった。
淀んでいる。
「カルミンツ様、ここに連れて来ましたのが、侍女のアリセンティアです。専属侍女として今日からお仕えします」
カルミンツ様と呼ばれた人は、部屋の真ん中に立っていた。
暗闇の中でもかろうじて存在はわかった。
「侍女などいらぬ。それに、ここいては命が危ない」
「大丈夫です。ここにいます侍女は、魔力がありません。影響は受けないでしょう。カルミンツ様、どうか専属侍女を受け入れてください」
「なぜそんなに侍女をつけようとする?」
カルミンツ様と呼ばれる人は声からすると若い男性のようだ。
「カルミンツ様のような尊き方が、自分で何もかもなさるなんて、あまりにもお労しい。どうぞアリセンティアにお世話をさせてください」
カルミンツはため息をついた。
「気に入らなければ、追い出す。それでもよいなら」
こうして、アリセンティアはカルミンツ様の専属侍女になった。
あの暗闇は魔法酔いしているため、無意識に使ってしまう魔力のせいで、カルミンツ様はどうにか自分で自分の世話をしているが、本当はかなりつらいはずで、ずっと寝ていた方がいいという説明を受けて、アリセンティアは離れに行くことになった。寝泊まりも離れになるそうだ。
カルミンツ様がどんな身分の方なのかは説明してもらえなかった。
尋ねても執事がはぐらかす。
こうなるともう執事から話を引き出すのは無理だ。
アリセンティアは、ともかくカルミンツ様が少しでも楽になるようお世話しようと決めて、覚悟して、離れの扉を開いた。
アリセンティアの運命の扉だった。
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