【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

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王妃の死は、あっという間に広まった。
国民はみな嘆いた。貴族の半分は、嘆いたが、半分は笑った。
邪魔者は死んだ。残ったのはハーレムしか興味のないアホな国王だ。
最高で、笑いが止まらない。
嘆いた者たちは、真っ青になっていた。
これからの王国の行く末が危ぶまれた。

お葬式は大々的に行われた。ただの王妃ではなかったから、規模は大きくなった。
祭壇には、土葬前にお別れを告げるため、王妃の遺体が美しい柩に入れられている。
笑いを噛み殺している者と涙を耐えている者が王妃に別れを告げにやって来た。

サリアン騎士団長は、緊張していた。タイミングがすべてだ。
「フィー様との未来のために」
早すぎても遅すぎても、ふたりの未来はやって来ない。サリアンはまだ夢を見ているようだった。
ずっと慕っていたが、叶う恋ではないとあきらめていた。
それが、もうすぐ叶うのだ。身分を捨てることなど、どうでもいい。
セラフィーヌの提案通り、冒険者になるのも楽しみだ。

お別れの時間も、儀式も終わった。
ついにセラフィーヌは土葬される。
サリアンは準備万端で、待機していた。
厳かな儀式の一環で、土葬も終わった。
意外だったのは、国王陛下が泣いていたことだった。セラフィーヌに報告したら、何と言うだろう。
サリアンは、そっと土を掘り出した。

セラフィーヌの柩はすぐに見つかった。肉体労働に強いサリアンには簡単なことだったが、やはり、ホッとした。
柩から出して、柩を元のように埋めた。
セラフィーヌを抱き上げて、解毒剤を飲ませた。
「うっ」
セラフィーヌはすぐに反応した。
速効性の毒と解毒剤なのだ。
「フィー」
サリアンはセラフィーヌを抱き抱えて、移動を始めた。

今日中になるべく遠くに行きたい。
馬車もひそかに用意している。
御者はいない。サリアンがやる。
なるべく人目につきたくない。
平民の街に着けば、王妃の顔も騎士団長の顔も知らないだろうが、王都ではわからない。

「フィー、大丈夫か?」
「うん。早く移動して、自由になりたい」
「もうすぐだ」
追手がいないか確認しながら、ふたりは逃げた。
無事に目指していた街に着いたのは夕方だった。
「あー、サリ。最高の気分だわ」
「もっともっと最高な人生になるぞ」
セラフィーヌの笑顔は輝いた。
セラフィーヌの新しい人生は
始まったばかりだ。

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