【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

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サリアン騎士団長とは武術大会の打ち合わせでよく顔を合わすようになった。
2人で打ち合わせすることもあった。
好都合だ。
セラフィーヌの作戦に乗ってくれるかどうか。
毒物と解毒剤は入手した。どちらもまだ知られてない珍しいものだ。
これで、いつでも実行可能だ。
あとは、協力者。
その人が将来の伴侶となる。

ある日の夕方、サリアン騎士団長との打ち合わせが長引いていた。
ここしかチャンスはない。
セラフィーヌは思い切って言った。
「サリアン騎士団長、お願いがあります」
セラフィーヌは計画を話した。

サリアン騎士団長は、目をパチパチした。
「本気ですか?」
「ええ。もう嫌なの。好きな人に大事にされて甘やかされたいの」
「それが私だと?」
あぁ、間違えたのかもしれない。
いや、騎士団長の耳は真っ赤だ。
まだ答えはわからない。
「あなたじゃないかと思ったの」
セラフィーヌは段々自信がなくなり、声も小さくなった。
「あっ」
気づいたら、サリアン騎士団長に抱きしめられていた。
「セラフィーヌ王妃様。ずっとずっとお慕い申し上げていました」

セラフィーヌは今度はうれしくて泣きたくなった。優しい温もりに涙が止まらない。
「ふたりきりのときは、フィーと呼んで。」
「では、私のことは、サリと。」
しばらくセラフィーヌは泣き続けた。
まだ何もうまくいってないのに。
でも、仕方なかった。
セラフィーヌの孤独は深かった。どこにも帰るところがない。
必要とされているのは、陛下の代わり。それも半分は敵なのだ。
心休まるときは、ひとときもない。
それが一生続くのだ。そんな人生を変えようとしている。うまくいくかはわからない。

だが、やらなければ、一生孤独に生きるのだ。誰にも愛されず、誰も愛さない。
そんな人生は嫌なのだ。賭けるしかない。
セラフィーヌは、サリアンとじゅうぶんに打ち合わせた後、毒を飲んだ。
苦しかった。
気が遠くなる。
王妃の異変に、侍女たちが気づき、医師が呼ばれた。
「毒を飲まれたようです。新しい毒だ。
解毒剤がない。これはもう間に合いません。」
「そんな」
仮死状態になったセラフィーヌは、医師に診断された。
「王妃様はお亡くなりになりました」

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