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五章 決断と覚悟
日記
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「柚葉!!!!!」
ガタンッ!!
「こら、水原くん!そうも堂々と寝てましたアピールされても困るんだけどな」
笑いながら俺を注意するのは担任の"望月先生"である。
それは夢だった。俺の前から柚葉が遠くへ行ってしまう、そんな悲しい夢だった。
もう離さないと決めた俺が、また何かの拍子で離れてしまう。俺はそれが嫌で呼び止めようとして柚葉の名前を叫んだ。
望月に怒られながらも、それが夢だと分かって俺は安堵の息を漏らした。
それから授業に集中出来ず、終わるまで携帯を弄っていた。
ブブッ!ブブッ!
しばらくして俺の携帯からバイブ音が鳴り出した。
通知を確認し、"新着メッセージ"を開く。
それは"柚葉"からのメッセージだった。
"放課後私の家に来て下さい"
どこか他人行儀な口調も、違和感こそあったが同時に仕方が無いのだと胸の奥に落とし込む。
"分かりました。では、夕方十七時に伺います"
昔はよく柚葉の家に遊びに行っていた筈なのに、久しぶりな事もあり何故か手汗をかく程、酷く緊張してきた。
講義が終わり、春樹と百桃と別れ急いで電車に乗り込む。
「柚葉、夢みたいに離れたりしないよな...不安になっても仕方ない。もう、離さないって決めたんだから!」
家の最寄りの駅に着き、扉が開き空を見上げ拳を掲げる。
時刻は十四時三十分と約束の時間より少し早かったが、鞄を持ったまま柚葉の家に向かった。
家の前に着き、深呼吸をして呼吸を整えチャイムを鳴らす。
ピンポーン♪
「はーい、今行きます」
インターホン越しから柚葉の声が聞こえる。
ガチャ!
ドアが開き、ひょっこり顔を出して手招きする。
「それじゃ、入るね」
「うん、どうぞ」
互いに意識しているのか、どこか普段通りとは違った、謎の緊張感がそこにはあった。
過去と言うなの檻に閉じ込められた俺達は、少しずつ扉を開き始めていた。
「えっと、水原くんは私の家に来た事があるんだよね?じゃあ、先に部屋で待ってて。飲みもの持っていくね」
少しのぎこちなさはあったが、昔みたいに接しようとする柚葉の健気さに、俺は胸を打たれた。
柚葉の気遣いに対して、俺は少し立ち止まった。
俺に何か出来ることは無いだろうかと、複数の選択肢が頭の中でグルグルと回った。
手伝いに行くべきか、行けば邪魔にならないだろうか、そして考えた挙句、出た結論がコレである。
「分かった。それじゃ、先行ってるね」
男として、ましてや好きな女性を前にして、俺は何も出来ずに居た。俺はそんな自分が情けなく思い、後になって後悔した。そしてまた、同時に焦らなくても良いのではないだろうかと、そう思うようにもなった。なぜなら、これから柚葉とゆっくり距離を縮められれば良い話だからである。
部屋に入り、昔遊びに来た時と比べ全体的に大人の女性みたいな、カジュアルな雰囲気に変わっていた。
左奥の角にベットがあり、中央に小さな長方形の木のテーブルが置いてあった。
俺はベッドとテーブルの間に置いてあった座布団の上に腰を下ろす。
「ん?なんだこれは?」
ふと視界に入ったのは、一冊のノートだった。
枕の下に半分くらいが外にはみ出すようにして"それ"は置かれてあった。
見ては駄目な物だと頭では分かっていたが、何を思ったのか勢いでノートに手を出してしまった。
トットットッ
一階から柚葉が上がってくる足音が聞こえた。
俺は咄嗟にノートを自分の鞄の中に放り込んだ。
ガチャ
両手が塞がってるであろう柚葉を考え、中からドアを開ける。
「ありがとう水原くん。」
「おう」
そういえば、何年ぶりだろうか。
柚葉と二人きりでゆっくりと話せたのは。
ガタンッ!!
「こら、水原くん!そうも堂々と寝てましたアピールされても困るんだけどな」
笑いながら俺を注意するのは担任の"望月先生"である。
それは夢だった。俺の前から柚葉が遠くへ行ってしまう、そんな悲しい夢だった。
もう離さないと決めた俺が、また何かの拍子で離れてしまう。俺はそれが嫌で呼び止めようとして柚葉の名前を叫んだ。
望月に怒られながらも、それが夢だと分かって俺は安堵の息を漏らした。
それから授業に集中出来ず、終わるまで携帯を弄っていた。
ブブッ!ブブッ!
しばらくして俺の携帯からバイブ音が鳴り出した。
通知を確認し、"新着メッセージ"を開く。
それは"柚葉"からのメッセージだった。
"放課後私の家に来て下さい"
どこか他人行儀な口調も、違和感こそあったが同時に仕方が無いのだと胸の奥に落とし込む。
"分かりました。では、夕方十七時に伺います"
昔はよく柚葉の家に遊びに行っていた筈なのに、久しぶりな事もあり何故か手汗をかく程、酷く緊張してきた。
講義が終わり、春樹と百桃と別れ急いで電車に乗り込む。
「柚葉、夢みたいに離れたりしないよな...不安になっても仕方ない。もう、離さないって決めたんだから!」
家の最寄りの駅に着き、扉が開き空を見上げ拳を掲げる。
時刻は十四時三十分と約束の時間より少し早かったが、鞄を持ったまま柚葉の家に向かった。
家の前に着き、深呼吸をして呼吸を整えチャイムを鳴らす。
ピンポーン♪
「はーい、今行きます」
インターホン越しから柚葉の声が聞こえる。
ガチャ!
ドアが開き、ひょっこり顔を出して手招きする。
「それじゃ、入るね」
「うん、どうぞ」
互いに意識しているのか、どこか普段通りとは違った、謎の緊張感がそこにはあった。
過去と言うなの檻に閉じ込められた俺達は、少しずつ扉を開き始めていた。
「えっと、水原くんは私の家に来た事があるんだよね?じゃあ、先に部屋で待ってて。飲みもの持っていくね」
少しのぎこちなさはあったが、昔みたいに接しようとする柚葉の健気さに、俺は胸を打たれた。
柚葉の気遣いに対して、俺は少し立ち止まった。
俺に何か出来ることは無いだろうかと、複数の選択肢が頭の中でグルグルと回った。
手伝いに行くべきか、行けば邪魔にならないだろうか、そして考えた挙句、出た結論がコレである。
「分かった。それじゃ、先行ってるね」
男として、ましてや好きな女性を前にして、俺は何も出来ずに居た。俺はそんな自分が情けなく思い、後になって後悔した。そしてまた、同時に焦らなくても良いのではないだろうかと、そう思うようにもなった。なぜなら、これから柚葉とゆっくり距離を縮められれば良い話だからである。
部屋に入り、昔遊びに来た時と比べ全体的に大人の女性みたいな、カジュアルな雰囲気に変わっていた。
左奥の角にベットがあり、中央に小さな長方形の木のテーブルが置いてあった。
俺はベッドとテーブルの間に置いてあった座布団の上に腰を下ろす。
「ん?なんだこれは?」
ふと視界に入ったのは、一冊のノートだった。
枕の下に半分くらいが外にはみ出すようにして"それ"は置かれてあった。
見ては駄目な物だと頭では分かっていたが、何を思ったのか勢いでノートに手を出してしまった。
トットットッ
一階から柚葉が上がってくる足音が聞こえた。
俺は咄嗟にノートを自分の鞄の中に放り込んだ。
ガチャ
両手が塞がってるであろう柚葉を考え、中からドアを開ける。
「ありがとう水原くん。」
「おう」
そういえば、何年ぶりだろうか。
柚葉と二人きりでゆっくりと話せたのは。
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